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白い記憶

俺達はおじさんの船で暗い海の上を移動してるんだぁ、これから向う先は俺の住んでた所なんだってぇ、話を聞く限りだと良い島らしいよぉ、俺には全然記憶に無いんだけどねぇ。


カイ君とチカちゃんは眠ってるぅ、本当に二人って仲が良いよねぇ、何か不思議と二人の仲良い姿見てると俺が嬉しくなってくるんだぁ、何か不思議な感じなんだよねぇ。


「シロ、何か思い出したか?」

「全然、でも楽しみだよぉ」

「記憶が戻る恐怖とかは無いのか?」

「何でぇ?楽しみだよぉ、別に俺の記憶が戻っても俺は俺だよぉ、記憶が無くなっても俺だったようにねぇ」


前々から引っかかってたモノも解消出来そうだしぃ、この左手薬指の指輪、毎日コレを着けてないと大事な事を忘れちゃいそうなんだよねぇ、記憶は無いんだけど忘れちゃいけないような気がするぅ、変な話だよなぁ。


「おじさん、俺ちょっと眠るよぉ」

「おう、今の内に寝ておけ」


俺は端に座って目を瞑った、もしかしたらコレでおじさんと別れるかもしれないんだけどぉ、戻るかもしれない記憶への期待で悲しみが薄らいでるぅ、まぁ記憶が戻ってもおじさんは俺のおじさんだけどねぇ。













おじさんに起こされた時には空が赤みがかってた、カイ君もチカちゃんも起きてるぅ、そして島の港に着岸されてた。


「シロ、行ってこい」

「何かあったら電話するからぁ」

「あぁ、お二人さん、シロの事を頼みます」


おじさんが他人に頭を下げてるぅ、俺が初めて見る光景、血が繋がってないのにここまでしてくれるなんてぇ、記憶が戻っても大事にしなきゃ。

俺達は島に上陸した、その瞬間何故か心拍数が上がる。


「おじさん、ありがとうねぇ」

「じゃあな」


おじさんの船はゆっくりと旋回して朝焼けで赤い海に出ていった。

俺は向き直って島を見る、海も山も全てが綺麗な島、俺はこんな綺麗な島で育ったんだぁ。


「何か思い出した?」

「まだまだ思い出さないよぉ、でも何か落ち着くぅ」

「当たり前だよ、アタシもユキもココで育ったんだから」


俺はカイ君やチカちゃんを追い越して歩き始めた、記憶が無いのに凄く懐かしい、やっぱりココが俺の故郷なんだなぁ、何処にいるよりも落ち着くぅ。


「ユキ、とりあえず俺らのおとぉとおかぁの所に行くから」

「俺の両親ってどんな人なのぉ?」

「おとぉは物凄い豪快でおかぁは静かだけど強い人だよ」


何だか楽しみだなぁ、でも話を聞く限りだと俺には似てないんだよねぇ、まぁ性格なんてそんな似るもんじゃないしぃ。



カイ君が連れて来てくれた俺の家はサーフボードがいっぱい並んでる、何かいやに納得出来る。

カイ君に連れていかれてチカちゃんと一緒に中に入った、何かが思い出せそうなんだけどまだ思い出せない、でもコレって兆しありって事だよねぇ?


「待ってて、おとぉとおかぁ呼んで来るから」


楽しみだなぁ、俺がどんな家で育ったか、俺がどんな環境で育ったか、全部が未知との遭遇なんだよなぁ。

何だか家が少しずつ騒がしくなってきた、階段を降りてくるけたたましい足音、そしてブレーキ音が似合いそうな感じに居間の前で金髪オールバックの人が止まった。


「ユキィィィ!」


その俺のお父さんと思われる人はいきなり飛び蹴り、俺は理解出来ずに避ける事すらできなかった。


「何してるんだよ!?おとぉ」

「ショックを与えれば治るかと思った!」


確かに豪快だ、ていうか無茶苦茶、普通記憶喪失してる奴に飛び蹴りするかぁ?一応脳に異常があるんだよぉ。


「…………ユキ」


多分お母さんと思われる女の人、おばさんと違って怒ったら怖そう、でも何だかこの人達に囲まれてると安心するなぁ。


「ユキ生きてたんだ、悲しんで損したわ」


待ってよお母さん、悲しんで損したって何ですかぁ?普通生きてて良かったとか感動の再開じゃないのぉ?何で息子が生きててショック受けてるのぉ?


「そうだテメェ!勝手に死にやがって!儂達の悲しみを返せ!」

「何だか無茶があるよぉ、俺は記憶喪失なんだよぉ」

「別に生きてるんだから良いじゃない、それよりも私の悲しみの3日間を返して」

「無理だよぉ、それに息子が死んだのに3日しか悲しんでないのぉ!?」

「悲しんで帰って来るなら悲しむわよ、でも死人は死人」


確かにあり得ないくらい強い人だなぁ、仮にも息子が死んだのに立ち直りの速さ、それにその死んだハズの息子が生きてたってのにこの冷静さ、本当に俺ってココの家の子なのかなぁ?


「それよりユキ!あの子の所には行ったのか!?」

「あの子ぉ?」

「まだ行ってねぇのか!?何やってるんだよカイ!」


今度はカイ君が殴られた、うずくまって頭を押さえてるぅ、かなり痛そうな音したし大丈夫かなぁ?


「このバカ息子共が!優先順位が違うだろ!」


俺もカイ君もチカちゃんも唖然、だって普通誰よりも先に親でしょ、カイ君もそう思ってるらしいし。


「別に儂らは後回しで良い!早くあの子の所に行ってこい!」

「朝早いし迷惑だよ」

「本当にうちの男はバカばっかり、朝御飯作るから食べてから行きなさい」


何だかかの家にいたら飽きなそうで良いなぁ、でも前まではこの家に住んでたんだよねぇ、何で思い出せないんだろぉ、こんなに楽しい家なのにぃ。

それにあの子って誰ぇ?お父さんよりもお母さんよりも大事な人ってぇ、もしかしてこの指輪のぉ?







朝御飯美味しかったぁ、何か美味しい朝御飯食べた後の海は清々しいなぁ。

俺達は海にいる、ココにいれば‘あの子’が来るらしい、でもこんな所に出没する人って誰ぇ?もしかして人魚とかかなぁ?だったらちょっと楽しいかもぉ。


俺達は待つこと20分くらい、カイ君は携帯で何かを話てるぅ、それでチカちゃんに耳打ちしてどこかに走って行った。


「カイ君は何処に行ったのぉ?」

「ちょ、ちょっとな」


明らかな同様だけどまあ良いかぁ、みんな俺が記憶を戻すタメに頑張ってるんだしぃ。

やっぱりサプライズの方が記憶って戻り易いのかなぁ?まぁインパクトが強いに越した事は無いよね。

海を見てると何だか落ち着くぅ、それに本能というかなんというかぁ、とりあえずサーフィンしたいなぁ、あれだけボードがあったんだから俺のもあるよなぁ。


「ユキ!」


後ろの方からカイ君の声が聞こえた、振り返ってみるとカイ君ともう一人、隣には水着にボディーボードを持ったベリーショートの綺麗な女の人。


「えっ、嘘?」


何か分からないけど頭に色んな情報が叩き込まれたような錯覚、そしてあり得ないくらいの疲労感、軽い頭痛、気付いたら俺は砂浜に膝を付いてた。


「…………ま…………み?」


頭に流れ込んだ情報は綺麗な記憶として蘇った、その瞬間いても立ってもいられずに走り出してた。

髪型は変わったけどその分かる、今の俺なら目の前の女の人が誰だか分かる。


「マミ!」


俺はマミを抱き締めた、命よりも大事な人、だから俺はあの時マミを命がけで守ったんだ、生きてて良かった。


「ユキ、思い出したのか?」

「うん、カイの事も、チカの事も、当然マミの事も」

「でもユキ、マミ姉は………」


追ってきたチカの顔が曇る、何でぇ?俺が今抱き締めてるのはマミだし髪型以外何も変わってない。


「マミ姉は―――」

「…………くん」


カイとチカは驚いてる、何がぁ?それよりももっとマミの声が聞きたい。


「ただいまぁ、になるのかな?」

「……………ばか」

バチン!


俺はマミに思いっきり頬を叩かれた、でもその後に俺の胸で泣き始める、俺ぇ、マミが泣くところ見たの初めてかもぉ、多分それだけ辛い思いしてたんだなぁ、俺は記憶が無かったから大丈夫だったけどぉ、マミは俺が想像もつかないような悲しみを背負ってたんだぁ。


「つらかった、かなしかった」

「…………ごめん」

「ユキ!お前スゲェよ!」


何故かカイはマミが泣いてるのに興奮してる、こんな不謹慎な奴だっけぇ?しかも何が凄いのか俺には全然理解出来ないしぃ。


「ユキ、マミ姉はユキがいなくなってから喋れなくなってたんだよ!」

「はい?」

「ユキが記憶を無くしたようにマミ姉は言葉を無くしてたんだよ、でもユキのお陰で言葉が戻った、誰が何をしてもダメだったのに」


マミが喋れなかった?やっぱり俺のせいなんだよな、そんなの素直に喜べないよぉ、苦しめるだけ苦しめて良いとこ取りなんて出来ない。


「マミ、本当にごめんな」

「ばか、……ばか」


さっきから喋り方がぎこちなかったのはそのせいなのかぁ、でも良かったぁ、俺は全部取り戻せたんだぁ。


「じゃあユキ、俺らは退散するから、後はご自由に」

「マミ姉に変な事するなよ!」


カイとチカは笑いながら帰って行った、ありがとう二人共、大きな借り作っちゃったなぁ、まぁ何事にも代えがたいモノが戻って来たんだから良いかぁ。


「髪の毛、切ったんだぁ」

「ゆきくんがすきだったから」

「短くても可愛いよぉ」

「ありがとう」


俺達は砂浜に座った、本当に全部戻ったんだ、こうやって隣にマミがいるだけで幸せになれる。


「かみながいね」

「マミじゃなきゃ短くしないからねぇ」


そうだよぉ、俺マミ以外に髪の毛切られるのが嫌だったんだぁ、特に短くされるのはマミじゃないよ嫌なんだよなぁ。


「あとできってあげる」

「頼むよぉ、髪短くしたかったんだよねぇ」

「ちゃんと修行したんだよ」


何で俺はこんな幸せを忘れてたんだろぉ、もうこの幸せを忘れる事も手放す事もしたくない、それにこれ以上マミを傷付ける事もしたくない。






もう絶対に離れないからぁ、ずっと一緒にいたい、他の事はどうなっても良いからマミだけは忘れないよぉ、こんなに好きなんだもん。

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