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金の決心

起きたらカイがいなかった、置き手紙にはチビの所に行ってるからと書いてある、カイも少しは考えろよ、チビは男であって男じゃないんだから、チビのカイを見る目は明らかに恋してる、それにクリコも気付いてるのに、カイは本当にそれで良いのかよ?


俺は考えてたらまた眠くなってベッドに横になった、明日も練習だからそこまで気負いする事は無いんだけど、眠くなるもの眠くなるんだよ、人間8時間寝なきゃ死ぬからな。


部屋が静まりかえり、時計の針のカチコチという音しか聞こえない、俺がうとうとしはじめた時、新たな音が俺の眠りを妨げた、この音を世間では『着うた』と呼ぶ、俺には嫌がらせにしか聞こえないけど。


「もしもし」

『おはようございます!』

「おやすみ」

『ちょちょちょ、ちょっと待ってください!』


電話の主はクリコ、俺が起こされても怒れない数少ない人物、俺を起こせるのはヒノとクリコだけ、他の奴が起こそうものなら即制裁。


「寝たいんだけど」

『一緒に寝ませんか?』


明るくサラッと爆弾発言、俺の顔は沸騰寸前で熱い、あの馬鹿は何で平気でそういう事を言えるんだよ。


『冗談ですよ、ちょっと心細いんで今から話せますか?』

「もう10時半を過ぎてるぞ」

『良いじゃないですか、待ってますから』


切れた、強制的に行かざるおえないじゃん、何で俺の周りには強引な女ばっかりなんだよ、ツバサ君とチカちゃんは俺を僮のように使うし、クリコは俺を兄というか執事のように扱うし、まともなのはヒノ…………、ヒノはもっと酷いな。


「俺って女に弱いな」


ボソッと出た愚痴で更に惨めになりながら俺はケータイと財布を持って部屋を出た、鍵はカイが持ってるから何とかなるだろ。


クリコの一人部屋をノックするとドタバタと大きな音を発てて近寄る一つの足音、勢いよく扉が開くと腕が伸びてきて、思いっきり引っ張られて中に入れられた。

扉が締まると目の前にはいつものジャージ姿とは違う女の子らしいクリコがいる。


「見られてないですよね!?」

「多分な」

「多分じゃダメですよ!こんな夜遅くに部長とマネージャーが密会なんて、怪しい空気もんもんじゃないですか!」


呼んだのはクリコの方だろ、それにサッカー部の連中は案外こういう裏話みたいの好きだし、そこまで問題は無いと思うんだけどな。


「で、何の用?」

「ほ、ほら、あれじゃないですか、やっぱり今度の相手チームの分析を部長とマネージャーがしなきゃダメじゃないですか!」

「それならカイを呼べ」


俺は帰ろうとしたら後ろ手を捕まれた、クリコは俺の手を両腕で必死に引っ張ってる。


「そこはやっぱり五百蔵先輩じゃないと!」

「一人で寂しいだけだろ?」

「………………はい」


クリコはうつ向きながら顔を真っ赤にボソッと言った、やっぱり女の子が一人だけってのも心細いんだろうな。


「まぁ暇だから少しは付き合ってやるよ」

「ありがとうございます!」


どうせ戻ってもカイはいないし、クリコが騒いだせいで眠気もすっかり吹っ飛んだし、眠くなるまでなら良いか。


「でも四色先輩を一人にしちゃ悪いですよね?」

「あぁ、それなら大丈夫、カイは今チビの所にいる…………、ヤバ」


クリコは明らかなショックを受けてる、そりゃそうだよな、チビとカイじゃ流石にシャレになんないよな、カイはカマトトぶって普通に接すると思うんだけど、やっぱりクリコにとっちゃ気になるよな。

俺は恐る恐るクリコを見ると、うつ向いたまま、でもいきないり顔をあげると立ち上がった。


「五百蔵先輩!今からチビちゃんの所に行きますよ!」

「はぁ?」

「ほら、ポカンとしてないで立つ!」


クリコは俺の腕を掴んで立ち上がると走って扉に向かう、その途中鍵を取り忘れたクリコに変わって俺が鍵を持って。


クリコに手を引かれて走りながらチビの部屋の前まで来た、クリコは扉を思いっきり叩き始めた、流石にこれは迷惑だろ。

ドアノブがゆっくり下がると小さくドアが開く、そこから枕を抱いたチビが覗いてきた。

そのチビの姿は女の子そのもの、俺もクリコも呆気に取られてると、チビは少し下を見たまま動かなくなった。


「二人ってそういう関係だったんですか?」


クリコの目線を辿ると、クリコに掴まれた俺の手がある、慌てて同時に手を離すとチビは不思議そうな顔で俺とクリコの顔を交互に見る。


「ち、チビちゃん!これには海よりも深い事情があるんだよ」

「まぁいいや、とりあえず入って下さい」


何かチビに元気が無い、クリコも気付いたらしく扉を開いて枕を抱いてるチビの後ろを着いて行った。

カイが何かしたのか?でもチビは男だし、万が一チビが女だったら今のカイなら何かしそうだけどな、最近チカちゃんが恋しいってぼやいてたし。

でも入った瞬間俺は驚いた、そこにカイはいない、いるのはベッドに座るチビとクリコだけ。


「チビ、カイは?」

「帰りました」

「何だよ、それなら俺は帰るぞ」

「四色先輩はいませんよ」


チビは力無く俺に話す、多分カイは半ば強引に帰ったんだろうな、チビとしては一緒にいてほしかったんだろうけど、賢明な判断になるのか?


「カイは何処に?」

「潤間さんのところです」


チカちゃんか、それならカイもいち早く会いたいだろうしチビは凹むな、クリコは顔から悦が滲出てるし。

でもカイだけずるいって、俺だってヒノに会いたいのを我慢してるのに。


「それにしてもチビちゃん、女の子みたい」

「そ、それは………」

「女だったりして」

「ちちち、違います!僕の服をハルが持って行っちゃったから僕がハルのを着る事になっちゃって………」


でも今のチビは明らかに女だろ、前髪を留めてるから尚更男には見えない、普通に女として生きたほうが良いんじゃないの?


「チビちゃん本当に可愛い、メイクでもしてみる?」

「何言ってるんだよ!?僕は男だよ、そんな化粧なんて出来る訳ないだろ」

「クリコ、メイク道具持ってこい、俺も気になる」

「五百蔵先輩まで!?」

「行ってきま〜す!」

「クリコぉ!」


クリコは走って部屋を出ていった、チビは追おうとしたところを俺が腕を持ってベッドに押さえつけた。


「今逃げてみろ、後でどうなるか分かるよな?」

「い、嫌だなぁ、冗談ですよね?五百蔵先輩」

「生憎俺は冗談とかが嫌いなもんでね」


チビは苦笑いを浮かべたまま固まった、そのまま静かにベッドに座ると、俺と向かい合うような形となった。

正面から見ると更に女、正直男って肩書きが無かったらまともに喋れないかも、さっきクリコと並んでる時なんて女友達にしか見えなかった。


「チビ、お前本当に男か?」

「な、何でですか?どう見ても男じゃないですか」

「見た目だけなら女だろ」

「むぅぅぅ、男なのに………」


ヤベェ、膨れてる姿がめちゃくちゃ可愛い、でもこの顔どこかで見た事あるんだよな、身近な人だとは思うんだけど思い出せない、何だかイライラする。


「何怒ってるんですか?」

「チビ、誰かに似てるって言われた事ない?」

「無いですけど―――」

「お待たせしました!」


メイク道具を持ってきたクリコが勢い良く入ってきた、その瞬間チビの顔が固まる、忘れてた悪夢の再来。

ショックで動けないチビの隣にクリコが座る、チビは泣きそうな顔でクリコを見るけどクリコはお構い無し。


「始めますか!」

「任せた」

「イヤァァァァァ!!」







散々暴れたチビは俺に押さえ付けられて大人しくなった、クリコはそのままチビにメイクをする。

途中からチビは諦めたのか恐怖からか動かなくなった、クリコは怪しい笑顔で絵を描くようにメイクを続ける。


「終わったぁ!」


クリコが背伸びして解放感を味わってる時、俺はチビの顔を覗き込んだ、その顔は普通の女子高生、むしろ普通って言うか可愛い。


「五百蔵先輩どうですか?」

「普通に可愛い」

「チビちゃんも見て見て!」


クリコはチビに手鏡を渡すとチビは鏡を見た、驚きとも落胆とも取れない微妙な表情で自分の顔を見る、その時にやっと俺のモヤモヤが解消された。


「分かった、チビはチカちゃんに似てるんだ」

「潤間さんに?」

「確かにチカ先輩を幼くしたらこんなになりそうですね」


これをカイに見せたらがっつくだろうな、ってか今のカイならこれだけでも十分理性が吹っ飛ぶかも、アイツも全ての欲に対して弱いからな。

楽しそうだから写メしてカイに見せよう。


「わわ!何してるんですか!?」

「カイに見せようと思って」

「見せないで下さいよ、変な人に思われちゃいますって」

「俺的には女の格好してる方がしっくりくるんだけどな」

「そうですね、なんか女の子だったみたい」

「そ、それは双子だからですよ!ほら、男と女の双子だから中性的になるのは必然というか………」


それもそうかもな、でも一卵性で違う性別ってあり得ないよな、まぁ二卵性でも同じDNAなんだし両方中性的になるのは必然か、妹も男っぽいし。


「今度は女の子の服を着せてみましょうよ」

「それ良いかも、街とか歩かせても不自然じゃないだろうし」

「女装して外に出るんですか!?」

「俺から言わせればいつものチビが男装だぞ」


チビは苦笑いを浮かべたその時、俺の携帯がうるさく鳴り響く、今度からは常にマナーモードにしておくか。

電話の主はカイ、アイツチカちゃんとイチャイチャするから今日は戻れないとかあり得ない内用じゃないよな?


「もしもし」

『コガネ、今から話があるから部屋に戻って来てくれないか?』

「カイは今何処にいるの?」

『今チビに鍵を預けてるからチビの部屋に向かってる』

「なら俺もチビの部屋にいるし来いよ」

『いや、二人で話がしたいから部屋の前にいる、すぐに来て』


カイはそのまま電話を切った、何かカイにしては思いつめた感じだったな、それに焦ってるようにも思えた、早く終らせたい、そんな感じに。


「チビ、カイから鍵を預かってるだろ?」

「はい」

「それ頂戴、俺戻るから」

「えぇ、もう戻っちゃうんですか?」

「四色先輩からですよね?」

「あぁ、二人で会いたいって熱烈なラブコールされちゃってさ、早く行かないとアイツすねちゃうから」


俺はチビから鍵を受け取って部屋を出た、その時に携帯を見て気付いたけど、カイからメールが来てた、あれだけ騒いでたからわからなかったのか。

内容は遅れるというもの、理由は一切書いてない、チカちゃんの事なら別に俺は喜んで許すのに、それを使ってヒノに会いに行けるし。






でもアイツが話したい事って何だ?かなり真剣だったし、試合に出れないとか言ったらぶっ殺すけど、カイは骨折しても出るだろうから安心だな。

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