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青の誕生日

ガキが落っこちたせいで電車が遅れた、最悪だ、一応家には電話入れといたけど絶対にアオミがキレてる。

チカは目を泣き腫らしてるし、でも最高の誕生日だったな、なんだかんだ言ってチカと一緒に過ごすのは初めてだし、あんなに美味い店をチカが見付けてくれたし、もうこれ以上望めない程最高、何か忘れてるような気がするけど、まぁ良いか。






家の最寄り駅に着いた時には8時を回ってた、これで帰ったらナニされるか分からない、7時には帰るって家を出る時に言っちゃったし。


「カイ、何急いでるんだ?」

「何か分からないけど、俺の本能が帰れと叫んでる」


チカは呆れて俺に着いてくる。

マンションに着き、エレベーターに乗り込む、いつものように14階を押した後に10階を押そうとした、でも何故かチカが俺の腕を掴んで制止する。


「ちょっとツバサに用事があるから」

「それなら先に言えよ」


エレベーターは順調に上がり14階に着く、慣れた廊下を曲がり自分の家の前に行き、カードキーを滑らしてロックを外した。

扉を開けると何故か家は真っ暗、中に入り扉を閉めると走る足音と共に何か重い物がぶつかる。

電気を付けて確かめると、俺の腹にアオミとツバサが泣きながら抱きついてる、何で?


「カイ゛〜〜〜!」

「お兄ぢゃん〜〜〜!」

「二人してどうしたんだよ?」

「大丈夫カイ?怪我は無い?」

「お兄ちゃんが死んじゃったらどうするの?」


多分俺が線路に飛び下りた事で泣いてるんだ、怪我も何もしてないって言ってるのに。


「アオミさん、ツバサ、それよりも…………」

「そうだお姉ちゃん、僕達は泣くために暗くしてたんじゃないよ!」

「そうよ!ツバサ、準備!」


アオミとツバサは涙を拭いてリビングに走って行った、すぐに戻って来るとクラッカーを思いっきり鳴らす。


「「誕生日おめでとう!」」


それか、でも本当なら真っ暗な中驚かせる予定だったんじゃないの?泣いて計画丸潰れじゃん、馬鹿な姉妹。


「チカはツバサに用事があったんじゃないの?」

「チカは私が呼んだの」

「アタシなんかが本当に良いんですか?」

「良いんだよ、チカチカは僕の時期お姉ちゃんだもん」

「私の妹ね」


ツバサとアオミはチカの手を引っ張って中に入って行った、今日の主役は俺じゃないの?まぁそういう姉妹だからしょうがないか。


リビングには料理がテーブルに所狭しと並んでる、わざわざ俺の誕生日にこんな事してくれるなんて、俺って最高に幸せ者だな。


「チカチカ、早く座って」

「カイ、そこで何つっ立てるの?」


前言撤回、コイツら俺の事なんてちっとも気にしてねぇ。

俺は渋々椅子に座ると3人の満面の笑みが写る、祝ってもらってるだけでも感謝だな。


「じゃあここは私達の未来の姉妹のチカから」

「あ、アタシが!?」

「そうだよ、今日はチカチカにとっても大切な日なんだから」

「じゃあ、カイ、お誕生日おめでとう」

「「おめでとう!」」


手元にあったジュースで乾杯する、俺の良き理解者のアオミ、俺を誰よりも励ましてくれるツバサ、俺の世界で一番大切な存在のチカ、その3人が近くにいるだけで良いのに、中学生までの俺に教えてやりたいよ、不幸の後には最高に幸せになれるって。




食べ終わってケーキをつまんでる時、3人が全員席を立った、俺は座らせられたまま、多分あれだな、俺の中で引っかかってたのがやっと分かった。


「カイ、コレ」


後ろを向くとチカがいる、キーホルダーが入る程度の小さな袋を俺の手の上に置いて椅子に座った。


「開けて良い?」

「良いよ」


中はリング、今俺が一番欲しかった物、何で俺がリング欲しがってるの知ってるんだろ?誰にも言った事無かったのに?


「俺チカにリング欲しいって言ったっけ?」

「言ってないよ、アタシが何となくこれが良いと思ったから、気に入らなかった?」

「最高だよ、最高過ぎるくらい」


これは奇跡じゃなくて運命だよな、チカが俺にくれるから俺は買わずにいた。


たまにチカは可愛いけど普通って言う奴がいる、ヒノリもツバサも特徴的だからチカは可愛いけど普通だって。

でもそこら辺にいる野郎にチカの良さが分かってたまるか、そりゃ外見的特徴はボーイッシュくらいだよ、中身はちょっと話したくらいじゃ無個性に思えるかもしれない、でも本当は誰よりも思いやりがあって誰よりも周りが見えてる、そんなのにも気付けねぇくせにチカの事を語るんじゃねぇ。


「カイ〜、まだ終わりじゃないわよ」

「僕とお姉ちゃんからのプレゼント」


いつの間にか椅子に座ってたツバサとアオミから紙袋を渡された、中身はTシャツ、ツバサとアオミもちゃんと用意しててくれたんだ、本人は忘れてるのに他人が覚えてるのも変な感じだよな。


「カイ、あとはコレ」


アオミは俺の前に一枚の薄い紙を叩き付けた、それを見て俺もチカも目を真ん丸にした、高校生には理解し難いその紙切れ、役所にこれ一枚出すだけで人生が簡単に変わる魔法の紙切れ。


「「婚姻届?」」

「そう!カイもチカも法律的には問題ないでしょ」


いや、普通におかしいだろ、だってまだ俺達高校生だぞ、アオミがこんな冗談をするとは思えないし、何か既に色々記入してあるし。


「あとは二人が記入するだけ」

「良いなぁお兄ちゃん」

「ちょっと待て、俺とチカはまだ高校生だし、まだそんな事考えも及ばない」

「別に結婚するだけはタダよ」


資料請求するんじゃないんだから、これ一枚出すだけで何人の人生が変わると思ってんだよ?いくらチカを守り通す自信があってもコレだけは無理だろ。

チカはあたふたして何がなんだか理解できないっぽいし、俺はアオミがこんな行動した事が理解出来ないし。


「とりあえず今は無理だ」

「何で?別に戸籍が変わるだけだから良いでしょ?」

「じゃあ逆に聞くけど何でそんなに俺とチカを結婚させたいんだよ?何も変わらないんだろ?」


アオミは苦虫を噛み潰したような顔をしてうつ向いた、ツバサもチカもアオミの顔を見る。

アオミならむしろ行くなとか言いそうなんだけど、なんでそこまでして。


「ほ、ほら、カイだってチカと結婚したいでしょ?」


明らかに挙動不信だ、まさかとは思ったけど本当に裏があったんだ。


「それにほら、やっぱりカイも私やツバサから離れたい頃かなぁ、って思って、私達しつこいからさぁ………」


まさか、俺の推測は一番あり得ないけど、今までの話ぶりや動揺、その他諸々から推測しても俺のは間違ってない。


「アオミ、もしかして離れたいのってアオミの方じゃないの?」


アオミの無理に作った笑顔から徐々に元気が無くなる、そして壊れた人形のように吐き出す程度の笑い声繰り返す。


「ハヤさん?」

「お兄ちゃん、流石にそれは…………」

「そうだよカイ、何でハヤ君がいるとカイはいらないんだよ?」

「やっぱりカイは凄いのね」


勘が鋭すぎるのも考えモノだな、こんな事考えずにこんな紙切れなんて破れば済む事なのに。


「お姉ちゃん、何でお兄ちゃんが嫌いになっちゃったの?」

「嫌いじゃないよ、好きだから邪魔なの」

「ハヤさんの事を好きになったのか?」

「…………多分、でもハヤさんの事を想えば想うほどカイを忘れられなくなるの、だからカイがチカのモノになっちゃえば諦めもつくかなぁ、って」


アオミも気付いてるはず、姉弟の関係を男女の関係と間違えてる事くらい、俺も何でアオミが男を嫌ってるのか分からない、本人は浅はかな生き物とか言ってるけど、それだけじゃないのは明らかだ、だからその時にいたまともな男が俺だけだった、ただそれだけだけどアオミにとっては大きな事だったんだと思う。


「多分カイに依存しててる上にちっぽけなプライドが他の男に頼るのを拒むの、それはカイが私の弟だから、近くにカイがいすぎるから頼っちゃうんだと思う」

「別に俺がいなくなってもプライドが無くても今のアオミには無理だね、今のアオミは色々理由をつけて傷付くのを怖がってる。

傷付けば良いじゃん、今のアオミは俺だけじゃなくてツバサもマミ姉もいるんだし」

「一応時期妹のアタシも」


多分ハヤさんはアオミを傷付ける事はまず無いと思う、ユキに似てるのも確かだけど、何より今のハヤさんはアオミ中心に回ってる、多分ハヤさんなら今の地位や名誉を捨ててでもアオミを選ぶと思う。


「アオミがハヤさんを好きになるかどうかは俺でもハヤさんでもどうにも出来ない、アオミがハヤさんを信じれるかどうかなんだよ、まぁ気にしてるだけで大きな進歩だと思うけどね」


アオミは多少元気を取り戻した、弟として他人に姉の事を任せるのは悔しいけど、コレばかりはハヤさんにしか任せられない。

世の中の女に言わせたら贅沢の何モノでも無いんだろうな、今やアイドル並に人気のある蘭葉夜の愛に迷ってるんだから、最近やった抱かれたい男ランキングではトップ10に入る勢い、美容師が副業に思えるくらいの人気ぶり。

そのハヤさんの告白を尽く蹴ってるんだから、幸せにならなきゃアオミは日本中の女を敵に回す事になるぞ。






まぁ、世界中を敵に回したとしてもアオミはチカやツバサと一緒に俺が守るよ、自惚れじゃないけどアオミが恋出来ない理由の半分は俺なんだから、最後まで俺も付き合うよ。

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