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金の怒り

コテツのクソ野郎、ツバサ君は帰らせて俺に殆ど生徒会の仕事を押し付けやがって、いつかぶっ殺す、……………出来たらな。


俺は遅れて部活に顔を出したけど、既に走りこみでグラウンドには用意をしてるクリコのみ、せかせかと動き回ってる。

クリコは俺に気付くと走って寄って来た、いつもの倍以上もテンションが高い、まぁ当然と言ったら当然だな。

サッカー部は見事にインターハイ出場を決めた、それで無駄にテンションが高いんだ。


「遅いですよ!部長が遅刻してどうするんですか!?」

「生徒会だ、文句を言うならコテツに言え」

「まぁ今回は大目に見ます、五百蔵先輩のお陰でインターハイに出れたんですし」


俺のお陰?まぁ一応得点だけはトップだからそうなるのかな?MVPはカイに取られたけど、フォワードの威厳だけは守れた。


「コレ見て下さいよ、何か私嬉しくて授業中とかずっと見てました」


クリコが手渡したのはサッカーの雑誌、そこのインターハイ特集で注目校に俺らの高校、光ヶ丘の名前が乗ってる。


《…………、誰も予想しなかったこの結果、光ヶ丘高校が無失点で東京都大会を優勝。

注目の選手はフォワードの五百蔵君と司令塔の四色君、この二人のワンツーは最早高校クラスではない。


スピード・ドリブル・シュート、3拍子揃った完璧なフォワードの五百蔵君。

相手の裏をかく作戦ととっさの判断力、そして五百蔵君の力を最大限に引き出すスルーパス、高校から始めたとは思えない天才、四色君。

この二人が人を惹き付けるのはプレーだけではない、スポーツマンとは思えないような甘いマスク、今年のインターハイはこの二人無しでは語れない…………》


凄い持ち上げられようだな、でもカイが育ててる秘密兵器はちっとも触れてない、これだけの情報じゃあ氷山の一角だな、もしかしたら優勝とかも…………。


「またファンが増えちゃいますね」

「俺らは高校生だぞ、女の子の耳に入る程有名にはならないだろ」

「女の子をナメちゃいけませんよ、インターハイが楽しみですね」


高校サッカーを見る女の子なんて聞いた事ないぞ、甲子園とかならまだしも所詮サッカーだ。

クリコは穴が空きそうなくらい食い入るように俺らの記事を見てる、クリコはこうやって裏で頑張ってるんだ、俺らが活躍すればクリコはこうやって喜んでくれる、マネージャーやってた事を誇りに思えるくらい最高の思い出にしてやる。


「私やかん取って来ますね」

「俺も行こうか?」

「別にいいですよ、五百蔵先輩はストレッチでもしててください」


俺は最高のマネージャーを拾ったな、カイがチビを弟のように可愛がってるように、俺もクリコを妹のように思ってる。

ヒノは女として大切に思ってる、クリコは年下の女として大切、恋とは違うこの不思議な感情、コレは弟の白金に抱くはずの感情だったんだ。



走りこみは長い時は30分以上になる、多分今日はインターハイも決まったし長めに走ってるんだろうな、まぁカイの体力に着いて行ける奴はいないと思うけど、俺でもカイの無尽蔵の体力には勝てないし。

それにしてもクリコ遅いな、別にやかんを取りに行くだけなら5分もいらないだろ、それなのにかれこれ10分以上。

気になる、多分荷物を引っくり返して慌ててるだけだと思うけど、一応見に行くか。


部室の周りは既に誰もいない、グラウンドや体育館からの部活の声が聞こえるくらい、サッカー部の部室は扉が閉まってる。

俺は近付きドアノブに手をかけようとした時、中からクリコと思われる声が。


「今はダメですよ、誰か来ちゃいます」

「大丈夫だ、皆部活で誰も来ない」

「五百蔵先輩が来ちゃいます」

「そうだな、あの混血にバレたく無かったら黙っていつも通りにしてろ」


それからクリコの声は聞こえなくなった、多分もう一人は2年の谷口だな、俺は気になってドアノブを捻って扉を開けようとした、でも中から鍵がかかってて開かない?


「誰だ!?着替えてるから外にいろ」


見え透いた嘘を、俺は一歩下がり軽く体をほぐした、蹴りだけはコテツより強いと自負してる。

俺は腰をしっかり据えて思いっきり部室の扉を蹴った、扉は鍵が壊れて豪快に開き壊れる。

中には乱れた服のクリコとクリコの胸をシャツの下から触る谷口、そしてクリコの我慢した嫌そうな顔。


「どういう事だ?」

「い、五百蔵さん、タイミング悪いッスね、まぁバレちゃったから言いますけど、俺ら付き合ってるんですよ」


谷口はクリコのシャツから手を抜き肩を掴み引き寄せた、クリコは俺の顔を直視しようとしない。

谷口の言ってる事は明らかな嘘だ、クリコがチビを好きなのは俺がよく知ってる、だからこんなゲスを好きになる訳がない。

俺は近寄って谷口の胸ぐらを掴んだ。


「な、何スか?マネージャーとこういう関係になったのは謝ります、でもそんな恐い顔しなくても良いじゃないですか」

「テメェの事をクリコが好きならな」

「なぁリコ、俺と付き合ってるんだよな?」


谷口は必死にクリコに嘘を強要する、でもクリコは俺が嘘と気付いてるのを理解してる、だからYESとは言えない、そんな事を知らない谷口は強い口調でクリコに怒鳴る。


「おい!あの写真ばら蒔かれても良いのかよ!?」

「写真?」

「あ、いや、その………」


俺はそのまま谷口を部室の外に投げ飛ばした、谷口は明らかに恐怖の目で俺を見てる。


「何とか言えよ!写真ばら蒔かれても良いのか!?」

「どんな写真だか分からないけど、ばら蒔いてみろ、マジでぶっ殺すぞ」

「い、嫌だなぁ五百蔵さん、俺はそんな脅しには屈しませんよ」

「谷口、俺の親は何してるか知ってる?代議士、俺の親父は代議士やってるから世間で自分の名前に傷が付くのを嫌うんだ、今までも俺が何かしたら全部揉み消してきた、殺しなんて尚更だ」


俺が強く睨むと谷口に余裕が消えた、俺は倒れた谷口に跨り、胸ぐらを掴んで顔を近付けると今にも泣きそうな顔で俺を見る。


「写真は何処にある?」

「こ、この携帯の中にあります!」


俺は谷口から携帯を奪い取るとその場で折って投げ捨てた、谷口は携帯が名残惜しいというよりは、早く解放してほしいといった感じだ。


「他には?」

「こ、コレだけです!」


俺は一発顔面を殴った、一発で鼻が折れたらしく曲がってる。


「もう一回聞く、他には?」

「だからもうコレだけです!」


俺はもう一発殴った、顔が徐々に腫れてきたのが分かる。


「最後だ、他のは何処にある!?」

「ほ、本当に無いんでふぅっ!」


俺は言い終わる前に殴ってた、今回は一発じゃなくて何発も、顔は所々切れて俺の手に血が着く。

俺は頭に血が昇り過ぎて訳が分からなくなった時、クリコの声が聞こえた、何て言ったか分からないけどその声で正気に戻された。


「五百蔵先輩、………死んじゃいますよ」


クリコは服の乱れを直して泣いてた、俺が立ち上がると谷口は顔を大きく腫らして気絶してる。


「クソが」


俺が軽く脇腹を蹴ってもちっとも起きる気配がない、俺はホースを手に取り水を出した、水を谷口の顔にかけるとむせながらも起きた。


「本当に無いのか?」

「えっ?あ、はい」

「そっか」


俺は脇腹を蹴った、嫌な鈍い音が鳴ったけど死にはしないだろ。


「消えろ、一生俺の前に顔をだすな」

「ひぃぃぃ!」


谷口はフラフラになりながら走って何処かに行った、それ以来谷口が学校を辞めたのは言うまでもない。


俺はクリコの方を振り返るとクリコはうつ向きながら泣いてた。


「クリコ、今日は帰れ、何があったかは聞かないから」

「で、でも、私のせいで」

「気にするな」

「ゴメンなさい、………ゴメンなさい!」


俺は見るに見かねてクリコの頭に軽く手を置いた、撫でてやると更に大きな声を上げて泣き始めた。

俺はクリコが泣き止むまでそっと見守り続けた、クリコが何をしようとしてたかは俺も馬鹿じゃないから分かる、扉の前で聞いた話ぶりから初めてじゃない事も、気付けなかった俺と何も相談してくれなかったクリコに悲しみと怒りが込み上げてきた。


「すみません、もう大丈夫です」

「そっか、じゃあ帰るぞ」

「はい?」

「だから帰るぞ、クリコ一人で帰すのは不安だからな」


俺はクリコを無理矢理外に出して着替えた、男子の夏場の着替えなんて1分もいらない、第一俺はYシャツなんて着ないでTシャツだし。

外に出ると呆気にとられたクリコが立ってる、俺は背中を押すように女子更衣室に向かわせようとしたその時………。


「何やってんの?コガネ」

「あぁカイか、俺とクリコは帰るから」

「冗談はよせ」

「マジだから」

「何で?」

「ゴメン、今は話せない」

「そっか、それなりの事情があるんならしょうがないな、でも…………」


カイは穏やかな表情から一気に険しい表情になって俺を殴った、よろけた俺の胸ぐらを掴み上げる、ヤバい、この顔はかなりマジギレモードだ。


「テメェ今がどういう時期だか分かってんのか!?」

「だからゴメン」

「謝るなら理由を言え!」

「それは言えない」

「あぁ!?こんな時期に部長とマネージャーがサボりです、こんなの波風起てないように始末出来ると思ってんのか!?部内の勢いをテメェが止めてどうする!」


カイは胸ぐらを掴んだままもう一発俺を殴った、容赦ねぇな、口の中鉄の味でいっぱいだ。


「コレでふざけた理由だったらぶっ殺すぞ」

「悪いな」


カイは俺を突き飛ばすように離してグラウンドに行った、正直マジで怖かったな、カイがキレたのは何回か見た事あるけど、俺にキレたのは初めてだ。


「すみません、私のせいで」

「悪いと思うんなら早く着替えて帰るぞ、折角俺が殴られてやったんだから無駄にするな」


クリコは涙を拭いて走って行った、クリコを守るためにカイに殴られてやんの、本当に俺って馬鹿だな。

それに殴られたのが2発だけで良かった、カイは一回理性が吹っ飛ぶと誰かが止めるまで暴走するからな、しかも暴走するとコテツでも手をやくくらい危険だし。




彼女のヒノならまだしも、クリコをあそこまでしてかばったとなると、本格的に俺って馬鹿だな、でもクリコに辛い思いをしてほしくない。

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