碧のデート
連休明けの学校ほど忌々しいモノは無いよね、せっかくお兄ちゃんとお姉ちゃんと楽しい休みの日を過してたのに、コテツは道場の事があるらしくて会えなかったし。
今はコウさんの英語、何か言葉は悪いしワンマンな授業だけど解りやすいんだよね、でも授業中話すと容赦なくチョークが飛んで来るんだよ、時代錯誤もいいとこだよね、それにチョークは百発百中だし、恐るべし万能兄、まぁ僕のお兄ちゃんの方が100倍カッコイイけど。
授業無謀にも『何で勉強しなきゃいけないんですか?』という質問をする生徒、それは学生の永遠の悩みだよ、しかも先生に聞いても『将来必要だからだ』としか返って来ないし。
でもコウさんは何故か笑った、何?何なのその笑みは?
「やっぱりガキだな」
本音が出ちゃってるよ。
「こん中で大学行きたい奴は何人いる?」
クラスの殆どが手を上げた。
「じゃあ次はお前らの価値観で良い、何しに学校に来てる?」
部活やら遊びやら色々出てる、僕はコテツと一秒でも長くいたいから、でも勉強という言葉は出てこない。
「お前らは大学も高校も遊びに行くような所だと思う、勉強はおまけだ。
じゃあお前らが小学生の頃から勉強しないで好きな事ばっかりやってたらどうなる?当然高校にも大学にも行けない、ここにいる奴らにも会えない、大学でサークルやったりコンパ行ったりも出来ない。
別に俺はお前らに勉強やってもらわなくても良い、やりたくないなら学校辞めろ、でも勉強しなくなったら遊べなくなるぞ、遊びたきゃ勉強しろ」
凄い、コウさん凄いよ、確かにそうだよね、勉強しで高校入れたからコテツに会えたんだし、皆にも会えた、勉強って素晴らしい!やっぱり嫌いだけどね。
今日はコテツが部活も道場も休みらしい、って事で僕は部活をサボってコテツとデート、コテツのためなら時間なんていくらでもあげるよ。
「ホンマにええんか?」
「良いんだよ!コテツとデートしたかったんだもん」
コテツは僕の頭に手を置いてゴメンなと言ってくれた、そんな謝る事じゃないよ、コテツは忙しいんだもん、僕が我が侭言ったら疲れちゃうよ、だから僕といる時くらいは僕が癒してあげなきゃ。
「今日コウさん凄かったよね」
「そうやなぁ、何かああ言われると勉強せなあかんって気持ちになる」
「コウさんって口は悪いけど一つ一つの言葉に重みがあるよね」
「かっこええなぁ、まぁカイはんには理由も無く当たるけど」
確かに、コウさんも妹をお兄ちゃんに取られて悲しいんだよ、でも僕が思うにチカチカを幸せに出来るのはお兄ちゃんだけだね。
「わいもあないかっこええ事言えたらモテるのになぁ」
「ダメだよ!コテツには僕がいるじゃん!」
「その困った顔もええ、やっぱツバサが一番や!」
コテツは街中にも関わらず僕を抱き締めた、僕もそんなのお構い無しにコテツの背中に腕を回す、コテツの胸は大きくてあったかい、ずっとこのままでいたいけどそれはダメだよね。
「あぁツバサの温もりや、ホンマにゴメンな、わいかて嫌やからツバサと会わない訳やないんやで、ホンマは全部かなぐり捨ててツバサと毎日こないな感じでいたいんや、でもわいには投げ出せない責任ちゅうもんがある、分かってくれるか?」
「分かってるよ、コテツ頑張ってるもん、僕は応援してるよ」
「やっぱりツバサは最高の彼女や!」
「コテツ!」
再びハグ、もう抱き合うだけじゃやだよ、今すぐキスしたい、でもさすがの僕でも皆の前でキスは出来ないな。
僕達はファーストフード店に入った、高校生だらけでみんな大きな声で大騒ぎしてる。
僕は一人で座って待ってる、コテツが買ってきてくれるんだって、周りは学生ばっかりだから余計に孤独感を感じる、でも席取られちゃうもん!僕は座ってなきゃいけないんだ。
「ねぇ君、これから暇?」
もしかしてナンパ?僕もやっぱりナンパされるんだ、………って何喜んでるんだろ。
相手は3人、一人は染めてから時間が経って根元が黒くなった金髪、もう一人はボーズに剃り込み、もう一人は髪の毛をワックスでツンツンに立てて唇にピアス、どれもコガネんに近い要素があるけど全然綺麗じゃない、コガネがするとピアスも剃り込みも綺麗なのに、ダサい3人組。
「俺達とカラオケ行こうよ」
「彼氏がいるから」
「うわぁ、声可愛いね、声優みたい、お前こういうの好きだろ?」
金髪が口ピアスに言った、別に誉められても行く気ないし。
「なぁ行こうよ、俺達が奢るからさぁ」
「僕に絡まない方が良いよ、彼氏強いから」
「‘僕’だってよ!?コイツ本当にマニア向けじゃねぇの!?」
「俺は好きだよ、そういうの」
口ピアスが僕の隣に座って来た、コイツ香水付けすぎ、口も臭いし、歯はヤニで真っ黒、気持悪い。
「本当に君俺のタイプだよ、カラオケが嫌ならホテル行かない?」
口ピアスが制服の上から僕の胸を鷲掴みにしてきた、本当に気持悪い、こんな時になんだけど男の人に触られるのが始めてじゃなくて良かった。
「辞めてよぉ!」
「叫ぶ声も可愛いんだね」
口ピアスは顔を近付けながら太股を撫で始めた、あとの二人はここでヤるなよとか言って笑ってる、本当に嫌だ。
「お前ら何しとるん?」
コテツ!?コテツだ、でも怖い、糸目のコテツの目が鋭く開いてる、でも口ピアスはコテツを無視してる、僕を触ってる両手は止まらない。
「手ぇ離せや」
「ユージやっちまえ」
剃り込みが構えた、コテツはそれをみて顔色が若干変わった。
「すまん、ちょっとおかして」
コテツは近くのテーブルにトレーを置いて構えた、コテツが構えたって事は剃り込みも空手をやってるって事?
剃り込みはコテツに殴りかかると、コテツは軽々避けて肋骨の辺りを殴った、その瞬間バキッという嫌な音が聞こえて口ピアスの手が止まる。
「手加減したから肺には刺さっとらん、烏丸道場師範代・烏丸虎鐵や、道場にくればいつでも相手してやる、でも今やる言うんならわいの彼女に触れてるその汚い手、二度と使えんようにするで」
その瞬間僕から手が離れて走って逃げて行った、コテツはトレーを持つと僕の前の机に置いて僕の隣に座った、コテツは頬に手を当てて親指で涙を拭いてくれる、僕はその手が離れないように上から手を当てた。
「ホンマにゴメンな、わいが一人にしたせいで」
「ううん、ありがとう」
「怖かったやろ、あないなクソに触られて」
コテツは僕の肩を掴んで抱き寄せてくれた、頭をポンポン叩きながらゴメンと繰り返す、さっきの気持悪い奴とは大違い、安心感と堪えてた涙が一遍に溢れてきた。
やっぱりコテツなら僕をどこまでも守ってくれる、こんな良い人は死んでも手放せないよ。
僕とコテツはあの後思いっきりデートした、今日お好み焼き屋が休みだからコテツの特製お好み焼きを食べさせてくれるらしい。
「今日は食べ放題やで」
「そんなに何個も食べれないよ」
「ハハハ、そうやな」
コテツは話ながらでもお好み焼きを作ってる、やっばり凄いなぁ、手元は見ないでも作れるなんて、カッコイイ。
「出来たでぇ」
「いただきま〜す」
小さく切って冷ましてから口に入れた、何回か焦って火傷しちゃったからね。
「おいひぃ」
「当たり前やろ、わいのお好み焼きは世界一や」
そうだね、誰が何と言おうがコテツのお好み焼きが世界一だよ、僕は世界一の彼女なんだから、何か嬉しいな。
食べ終ってコテツの部屋でお義父さんが帰って来るまで話す事にした、お義父さんだって、何か思っただけでドキドキしちゃう。
プルルルルル!
僕達しかいない静かな家だから爆音に聞こえる電話の音、コテツは小走りで電話に出た、何か電話口で言い合ってる、多分お義父さんだろうな、またお義父さんって言っちゃった。
コテツが帰って来ると何故か満面の笑み、そんなに喧嘩ってストレス発散出来るの?
「親父帰って来ないんやて」
「そうなんだ、なら僕は帰るよ」
立ち上がろうとしたら無理矢理ベッドに座らせられる、そしてそのままキスされちゃった。
「明日まで親はいないんやで」
「でもお兄ちゃんとかお姉ちゃんにバレちゃうよ」
「ええやないか、自慢したれ、わいに愛されてるって言ってやれ」
「もう、エッチなんだから」
コテツは僕に覆い被さるって再び唇を重ねた、今度は長いだけのキスじゃない、コテツの舌が僕の唇を割って入ってきた、僕はそれを受け入れ応える、体が熱くなるなが分かる、始めてじゃないけど改めて僕が女だって事に気付かされた。
コテツはキスをしたままシャツを捲り上げる、ゴツゴツした手が僕の微妙な膨らみを優しく触ってる、それでも熱くなる僕の体、僕の足にコテツが当たってるのも分かった。
「好きやでツバサ」
「僕もだよ」
僕が起きた時コテツの腕枕で寝てた、そして何も来てない体、それは僕達が愛し合った事を示してた。