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金と悩み

試合は終わってみると6−0で俺らの圧勝、カイがいない方が得点が取れたと騒いでるけど、相手は一人少ない上にキーパーがクソなら当たり前だろ。


「お前ら、ゴールデンウィークだし打ち上げ行くぞ、すぐ近くにあるから先に行ってろ」


喜びと共に部員はさっさと片付けて走って行った、俺はクリコとチビを連れて医務室に、カイの見舞い兼勝利の報告。

カイは頭に氷枕を敷いて横になってる、脳は大丈夫だから心配する事はないらしい、頑丈な奴。


「カイ、6−0で圧勝、コイツのお陰でな」


チビの頭を掴んで前に出した、チビは顔を真っ赤にして股の所で手を擦り合わしながら照れてる。


「良くできました」


カイは上半身を起こしてチビの頭を撫でた。


「それで部員全員の願いでカイの代わりにチビがレギュラーに」

「行ってろ、俺がキーパーを排除したから勝てたんだよ」

「はい!四色先輩のお陰で勝てました」

「あらら、どうするんですか、五百蔵先輩、いなくなっても勝ちに導く四色先輩のカリスマ性、完璧に四色先輩がヒーローですよ」


それは俺が一番分かってるよ、カイには勝てないって事も十分な。

それにチビ、コイツ本当に化けやがった、カイはやっぱりスゲェよ、全てにおいての天才ってカイの事だな。


「クリコ、飲み物買ってきて、喉が渇いちゃった」

「何で私なんですかぁ?」

「マネージャーだろ、俺がクリコにも奢ってやるから行くぞ」

「ジュース奢ってくれるんですか!?」

「いらないか?」


俺はそのまま部屋を出るとクリコは喜びながら着いてきた、カイが何をしたいか分かったから俺も出てきたけど、クリコは気付いてるのかね。


「悪いな、無理矢理連れて来て」

「な、何がですか!?」

「好きなんだろ?」

「馬鹿言わないで下さいよ!四色先輩は彼女がいるんですよ、彼女がいる人は好きになれないですって!」


クリコは俺の肩を叩きながらキャイキャイ騒いでる、俺もそこまで鈍くない、クリコがカイの事を殆ど見てないのなんて分かってる、カイを見てるように見えて…………。


「カイじゃない、チビだ」

「私がチビちゃんを!?ありえませんよ」

「そう、それなら何で試合中チビの事ばっかり見てたんだ?」


クリコはしまったって感じの顔をしてる、まぁこの事を教えてくれたのはカイなんだけどね。


「それはあれですよ、チビちゃん頼りないからマネージャーとしてチームの心配を」

「じゃあ何でチビが倒された時目を被ってたんだ?それにチビが得点入れた時、泣きそうになってただろ?」


クリコは顔を真っ赤にしてうつ向いてる、ちょっとイジリ過ぎたか?でもクリコは心が強いから大丈夫だと思うけど、一応女だもんな。


「チビちゃんには言わないで下さいよ」

「言えねぇよ」

「私本当は五百蔵先輩みたいなクールで頼れる年上の方がタイプなんです、でもチビちゃんは貧弱だし小さいし頼れないけど、必死に頑張ってる姿はカッコイイんです、誰よりも頑張って、帰る時も遠回りして走って帰るんですよ、最初はマネージャーとして付き合ってたけど、だんだん自転車で追う後ろ姿が大きく見えて、男の子ってどんなに貧弱でも頑張ってるとカッコイイんですよね、でもチビちゃんは……………」


やっぱりクリコも気付いてたのか、チビがおかしいって事に、こればかりはカイにも聞けないけど、チビは多分カイの事を少なからず好意を持ってる。

元々女っぽいところがあるからもしかしてとは思ったけど、チビがカイを見る顔とクリコがチビを見る顔、それが嫌でもシンクロする。


「チビちゃんにとって四色先輩はお兄さんみたいなモノだと思うんです、そう思いたいんです、でも思えば思うほど否定出来なくなる、五百蔵先輩はどう思いますか?」

「多分頼れる兄貴みたいなもんだろ、カイも弟だと思ってるからな」


ゴメンクリコ、カイがそう言ってる事は本当だけどチビがそう思ってるかは分からない、カイがクリコをパシらせたのはそれが理由だと思う、俺もクリコが可哀想だしカイの意図が分かったからクリコを連れ出したけど、正直それが正しいとは思えない。


「私四色先輩に負けるは嫌です、チビちゃんが男の人に取られるなんて、それならいっそブスな女の子に取られた方が諦めがつくのに」


クリコは泣き出した、でも目の前で泣いてる女の子を泣き止ませる術を俺は知らない、ただ黙って頭を撫でる事しか出来ないこんな俺が情無い、カイなら慰める事が出来るんだろうけど、俺にはそんな頭も優しさも見当たらないんだ。


「私、何でチビちゃんに恋しちゃったんだろ、男の人はいっぱいいるのに何でチビちゃんなの?何で好きなだけなのにこんなに苦しいの?」


俺はベンチにクリコを座らしてジュースを買った、一本はポケットへ、一本は開けてクリコに、一本は俺に。


「ありがとうございます」

「愚痴なら聞いてやる、でも泣く場所は作れないからな」


クリコは静かに手の甲に涙を落とした、俺は壁に背を預けながらクリコの側にいてやる事しか出来ない、つくづく情けねぇ。


「好きならチビを振り向かせる努力くらいしてみろ、アイツも男だ、まだガキだから自分の気持ちを間違えてるだけかもしれない、お前が気付かせてやれ」

「五百蔵先輩に恋すれば楽だったのに」

「馬鹿、女として見れないクリコにすら泣く場所を作れない俺に恋しても傷付くだけだ」

「春日先輩みたいな綺麗な人が彼女にいればスカッと諦められるって事です」


チビ、お前はこんな良い女の子に好かれてるのに間違いで逃すなんて、つくづく馬鹿な奴、カイも今頃その事で何か話てるんだろうな。


「私頑張ります!チビちゃんも男の子なら振り向いてくれるはず!」

「おう、俺はマネージャーに恋されるのは反対だけど、これは部長公認だ」

「応援してくれるんですか!?」

「楽しそうだから応援するよ」


クリコは俺の手を掴んでブンブンと振り回してきた、腕が外れそうだけど何となく喜びが伝わるから我慢するか。

それに、クリコって妹みたいで恋とは違う可愛さがあるんだよな、女なのに普通に話せるし、昔から一緒にいたみたいな感覚、でもヒノリといる時のドキドキはない、だからと言って友達と割り切れるほど浅い関係じゃない。


「可愛いな」


俺は無意識のうちに頭に手を置いて呟いてた、話しの一貫性も無いし何でこんな事。


「あ、ゴメン、迷惑だよな」

「いや、嬉しいです、五百蔵先輩って本当に優しいですね」

「そうでも無いだろ」

「そうでも有りますよ、何か五百蔵先輩といるとポカポカしてほんわかするですよ」


意味が分かんねぇ、何が言いたいのか理解出来ないし。


「五百蔵先輩がお兄さんだったら良いのになぁ」

「俺もクリコみたいな妹が欲しいよ、生意気な弟しかいないからな」

「弟さんがいるんですか!?」


ヤベェ、さすがに口が滑り過ぎた、この事はヒノリくらいしか知らないのに、それともクリコだから滑ったのか?


「弟さんてどんななんですか?」

「生意気で俺の事を馬鹿にしてて、最近は会って無いからどうなったか知らないけど」

「何で会ってないんですか!?」


俺は何故だか分からないけどクリコに俺の家の事情を話してた、この事は俺らの仲間内くらいしか知らない、それをクリコに話てる、不思議な俺。


「辛いんですね」

「別に、逆に楽しいよ、自由で騒げるし、ヒノリが泊まってくれるし」

「そういう関係なんですか!?」

「キスもしたこと無いから、本当に泊まるだけ、大事過ぎて何も出来ないんだよ、情無いだろ。」

「そんな事ないですよ、愛が無いならヤらないほうが良いですし」


どことなくクリコが沈んだな、それにクリコの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかった、まぁ女の子がそういう事を考えないってのも俺の幻想にしか過ぎないんだけど。




俺がその時、クリコの小さなサインに気付いていれば良かった、クリコのはまっている泥沼を見ようとしてなかった。

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