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金と練習試合

せっかく臨海学校から帰って来て速攻練習試合とかあり得ないだろ、俺もカイも他の3年も疲れてるのに大丈夫か?みんな何もしてない上に疲れてるから怪我人が出るぞ。

今日の相手は東京でも有名な進学校、でもサッカーは大した事はない、俺が思うに今年のサッカー部は強い、もしかしたら全国行けるかもしれないくらいに。


試合開始前、グラウンドの中心で円陣を組んだ、真ん中には俺、掛け声とかはカイ。


「正直俺ら3年はしんどいで〜す」


静かな笑いが流れた、カイもやっぱりキツイのか、まぁ強く無いから大丈夫だろ。


「でも頭が良い奴に負けたく無いよな?」

「四色先輩には負けますよ」


また笑い、こうやって俺らは緊張を無くしてる。


「まぁ俺一個人としては都内で負けるのは不本意なんだよね」

「「「おう!」」」

「部長は?」

「力の違いを見せるまで」

「とのこと、絶対勝つ!」

「「「おぉ!」」」


全員がピッチに散って行く、俺はフォワードでうちの高校は2トップ、カイはボランチで後ろから俺をサポートしてくれる。


試合が始まると圧倒的俺らのペース、前半11分でカイのスルーパスから俺が独走じょうたいで一点、俺は足の速さだけは自信がある。

2点目は中盤から俺とカイのワンツーで切り込みカイがシュート。


2点差で前半は終わった、3年はわりとグダグダだけどまぁまぁでしょ。

俺とカイはピッチの上でハイタッチして戻ろうとしてる時、カイを誰かが呼んだ、俺とカイが振り向くと爽やか系の相手のウイングだ、まともなのはコイツだけだったな。


「カイ!カイだよな?」


カイを呼んでる、カイは爽やか君を舐め回すように見てる、知り合いとか?


「…………誰?」


やっぱり、爽やか君もガックリしてる、カイに人の事を覚えさせるのは至難の技だぞ、俺も人の事言えないけど。


「おいおい」

「冗談だって、井上だろ?」

「カイ、誰?」

「幼馴染みの井上、島に住む前の奴で唯一覚えてるのがこの井上」


そりゃ幼馴染みなら覚えてるだろ、俺とカイは挨拶だけで戻ろうとした時、そしたら井上は俺の肩を着かんで来る、とりあえずカイを帰らして俺は残った。


「何?」

「怖っ、じゃなくて、五百蔵君だっけ?カイと仲が良さそうだけど友達?」

「まあ親友だな、1年の頃からつるんで来た」

「ふ〜ん、カイってどんな感じなの?」


俺は面倒だけど井上にカイの事を話した、チカちゃんの事、俺らの前での事や学校での事、幼馴染みだからカイの事を知りたいだろうからいつになく話してた。


「そうなんだ」

「変わったんだろ?」

「話したり五百蔵君の話を聞く限り全くの別人、アイツは友達を作ろうとしなかったし笑いもしなかった、なんか誰も受け付けないオーラをもろにだしてたんだよね、幼馴染みの俺でも怖いと思う時あったもん、毎日喧嘩して、殴り込みもしょっちゅう来てた、アイツ負けた事が無いんじゃない」


俺より酷いのかもな、誰もカイの過去を聞こうとしないし興味ないから聞いた事なかったけど、今でもたまに俺でも怖いと思う時があるし、本当にヤバかったんだろうな。


「ミナ、カイと俺の幼馴染みでカイの初恋の相手」


始めて聞いた、アイツの事だからチカちゃんが初恋だと思ってたけど、もしかしてフラれてグレたとか最高にカッコ悪いオチとか?だとしたらカイの事軽く軽蔑するかも。


「ミナは死んだ、交通事故、カイの目の前で車にはねられて即死だったんだ」


幼馴染みが目の前で即死、しかもそれが初恋の相手、カイが人一倍チカちゃんを守ろうとするのはそういう事か、でも俺でもそれは正直キツイな、ってか死ぬかも。


「そこからカイはおかしくなったんだ、笑いもしなければ泣きもしない、話す事すらしようとしなかった、カイは皆に友達のフリをしてた事は俺は分かってた、多分嫌う事すら煩わしかったんじゃない」


喜怒哀楽が無いって事?喧嘩は喜怒哀楽が無いからスポーツ感覚でやってたとか?だとしたら正直俺は関わりたくない。


「だからカイが笑ってるのを見てビックリした、それに潤間って子?その子にも感謝してる、カイは人一倍愛に飢えてたからな、潤間さんにありがとうって伝えて」

「分かった」


井上は自分達の学校に戻って行った、カイも幸せな奴だな、嫌われても心配してくれる奴なんて親でも珍しいぞ。



後半が始まっても俺らの優勢に変わりない、しかしそれを揺るがす、俺が一番恐れてた事態が起きた。

後半8分、俺がカイからのパスを受けてサイドに切り込んだ、カイはすかさずゴール前まで走って行ったのを俺は見逃さなかった、マークしてる奴らを抜いてカイにふわりとしたセンタリングを蹴る、カイはジャンプ力があるから身長は普通でも競り勝てる事を俺は知ってた。

カイがジャンプするのと同時にキーパーが前に出てくる、カイはボールしか見てないからキーパーには気付いてない、そしてキーパーのパンチングはカイの顎を捉えた。

カイはそのまま地面に頭から落ち、倒れて動かなくなった、そこでゲームは一旦止まる。


「四色先輩!」

「四色!」


選手がカイの周りに集まる、俺はいち早くカイの所に行ってカイを見た、一人の後輩がカイに触ろうとしたが、俺はそれを制止した。


「触るな、顎を殴られて頭打ってる」


俺はカイがパンチングの時に気を失ってるのに気付いてた、多分脳が揺れたんだろう、だから受け身が取れないまま落ちたから相当ヤバい。

キーパーは一発で退場、タンカーが運ばれてカイ慎重に乗せられた、ぐったりと力無く倒れるカイ。


「五百蔵先輩、どうするんですか?」


俺はカイの方を見た、カイならこういう時どうするか、丁度目に入ったのがカイに呼び掛けるチビ。

そういう事ね、カイの育てた卵、とくと味わわせてもらうからな。


「五百蔵先輩!俺もう我慢出来ません!アイツらラフ過ぎるんだよ!」

「殴るのか?」

「殴らないと気が済みません!」

「今相手を殴ったら大会には出れなくなる、そんなに殴りたいんなら自分の顔殴って気合い入れろ」


ちょっとドスを効かして言ったらすぐに黙った、そんで後はカイにくっついてる奴だ。


「チビ!何処に行く!?」

「ひっ!し、四色先輩の付き添いで………」

「そんなの他の一年にやらせろ、テメェはカイの代わりだ」

「「「えっ?」」」


チビを始め全員が驚いてる、そりゃそうだろ、まだ入って間もないしナヨナヨしてるし。


「でも僕何か――」

「カイのスパルタ受けてるんだろ?それともカイの練習が信じられないか?」

「四色先輩は信じれます、でも実践経験が無いですし」

「なら今がその時だ」

「高橋、お前は戻って橋本に交代だ」


高橋はもう一人のフォワード、橋本は中盤の選手、カイなら攻撃力を減らして守備に徹するハズだ、それに相手キーパーは1年、打てば入る。


「さて、俺に異論のある奴は?」


全員がざわめく、チビに至っては明らかに緊張してる。


「あるのか無いのかハッキリしろ!」

「「「無いです!」」」

「そ、それならボールを持ったらチビに集めろ、チビはカイに教えられた事だけやってろ、俺がやりやすくしてやるから」


全員がピッチに散っていく、PKから始まりまずは確実に1点、3−0。

相手チームから始まると俺が上がる、相手は中盤でパスを回してるけどなかなか前線まで通らない、そんな事をしてる間にこっちの選手がインターセプトしてチビにパスした。

チビは1対1になると軽々と相手を抜く、全員分かって無いと思うけど、チビは小さいうえに目の前で沈むから一旦見失う、カイはそれだけをひたすら教えてた。

チビは俺を見付けると空いてるスペースにパスを出した、俺は誰よりも早くボールを受け取るとゴール前に切り込む、そして逆サイドまで行った時にヒールパス、チビが受け取るとディフェンスと1対1になり止まった、そして軽く蹴ると相手の股を抜いてそのままゴールの右角に吸い込まれた、ポストを擦りながらネットを揺らす、これが4点目。


「入った?」

「ナイスチビ、行っただろ、カイを信じろって」


その後チビは揉みくちゃになりながらの祝福、思ってた以上だな。

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