赤と肝試し
お風呂に入ってさっぱりしたのにこれから肝試しだって、またお風呂に入らなきゃいけなくなるだろ、コテツも何考えてるんだよ。
女のアタシから見てもヒノリの浴衣姿は色っぽい、さっきから男の視線が痛いくらいに分かるけどヒノリは慣れたらしいよ。
肝試しはコテツの前にある男ボックスと女ボックスからコテツが引くらしい、一回一回引いてゴールしたらまた引いて、お化け役は先生や立候補した生徒、私暗いのも怖いのも嫌いなんだよな、カイとペアだったら怖くても嬉しいんだけど、そんな奇跡あり得ないよな。
10組くらい終わったけど悲鳴が聞こえてそれだけで怖くなる、こんな暗いのに懐中電灯一つで神社まで歩くんだぞ、拷問以外の何者でも無いよな。
「じゃあ次、女子は……………潤間千夏はん!」
アタシ!?うわぁ怖いなぁ、男の子はカイでありますように。
「烏丸!俺を引け!」
「頼む俺を引いてくれ!」
「俺を引かなきゃ呪うぞ!」
みんな嫌なんだけど、しかも手を繋ぐなんて拷問だよ、って本人に聞かれたらショックだろうな。
「幸福な男子は………………、五百蔵黄金はんや!」
コガネ!?嬉しいような悲しいような、コガネならでも安心だな、親友だしカイの次に頼れるし。
「なぁコテツ、やっぱり手を繋ぐのか?」
「当たり前やろ」
コガネは顔を真っ赤にしながら私の手を掴んだ、私は恐る恐るカイを見るとカイは笑顔で手を振ってる、その笑顔は何?
しかも手を繋いだ瞬間女子の悲鳴と男子の罵声が入り乱れる、コガネも顔を真っ赤にして辛いんだから許してあげなよ。
「ちゃんとエスコートするんやで」
「うるせぇ、もう行くぞ」
「頑張ってやぁ」
アタシとコガネは暗い山の中に入った、コガネは顔を真っ赤にしながらアタシの手を掴んでる、意外に可愛い。
やっぱりカイ以外の人だとドキドキするな、いくらコガネでも男の子だもん、ヒノリに何か悪い気もするけど許してくれるよね。
「キャー!」
でも怖い!違う意味で心臓が破裂しそう。
「ほら行くぞ、長引かせるとカイに怒られる」
「でも怖い」
「大丈夫だ、相手は人間だし俺がいるだろ」
あっ、今ちょっとカッコイイって思っちゃった、これはヒノリもコガネのペアがアタシで良かっただろうな、普通の女の子なら惚れるの間違いなしだよ。
「キャー!」
「またかよ?」
「だってだって」
泣きそう、もう怖い、カイ助けてよ、何でアタシがこんなに怖い思いしなきゃいけないの?
コテツのせいだ、全部コテツのせいだ、絶対に呪ってやる、崖から落ちて死んじゃえ。
「チカちゃん、何か怖いぞ」
コガネに懐中電灯当てられてるのも気付かなかった、アタシ物凄く怖い事考えてたから怖い顔になってたんだ、気を付けよう。
「ってか泣く程怖いか?」
「泣いてないよ」
「ホラ」
コガネはアタシの目を親指でなぞった、もしかしてコガネもドキドキワクワク肝試しの魔物に!?このムードでヒノリの事何て忘れて目の前の欲に、ヤバい、襲われる!
「コガネダメだよ!アタシにはカイがいるしコガネにはヒノリがいる!いくらムードが良いからって!」
「何勘違いしてんだ?」
「だからコガネの気持ちには――――」
アタシは後に下がりながらコガネの気持ちを拒否してると足を滑らせ、後に道が無い、えっ、嘘?このままじゃアタシ……………。
「危ないチカちゃん!!」
アタシはコガネに手を掴まれて間一髪のところで山から落ちずに済んだ、でもアタシコガネの腕のに抱かれてる。
「あっ!ゴメン!」
「アタシが悪いんだ、ありがとう」
「いや、でも…………」
「大丈夫、誰にも言わないから」
「悪い」
コガネったら顔を真っ赤にしちゃって、事故なんだから気にしなくても良いのに、いや、でもヒノリに言ったら怖そう。
「ヒノリとどっちが良かった?」
「馬鹿な事聞くな」
「もしかして抱き締めた事も無いの!?」
「違う」
「ならどうなの?ヒノリおっぱい大きいから当たるでしょ?」
「だとしたらどうなんだよ」
「やっぱりコガネも男だな」
「うるせぇ!チカちゃんがふったんだろ!」
何となく怖さもふっきれた、コガネの反応も一つ一つ可愛いし、クールにすればするほど可愛くなるんだな、これ発見、でもいざというときに頼れる、アタシは常に頼りたいんだけどな。
「キャー!」
「あぁもう!うるせぇな」
「もうヤダ!怖い!」
「なら歩け、そこで座ってたらずっと怖いまんまだぞ」
「でも、腰が抜けて動けない」
「チッ、しょうがねぇな」
コガネはアタシをおぶってくれた、おぶる時に秘密だからなと一言言って。
カイは許してくれるよね、だって本当に歩けないんだもん、それに相手はコガネ、カイが信頼してる親友だから大丈夫でしょ。
「キャー!」
「耳元で叫ぶな!ココから落とすぞ」
「カイに殺されるよ」
「クソ、チカちゃんの彼氏さえいなければ今頃山の中に置き去りにしてるのに」
「何でそんな事するの?アタシの心、知ってるんでしょ?あの時ベッドでのあの甘い言葉、あれは一夜限りの嘘?」
「なっ!?」
アタシの甘い言葉、思い知ったか、コガネは顔を真っ赤にしてうろたえてる、凄く可愛い、いつもはクールな目が真ん丸になってるし。
「ヒノリには言わないよ、だって貴方との関係、壊したく――キャー!」
「やっぱりうるせぇ!」
クソォ、あと一押しだったのに、やっぱり怖いのには勝てないよ、もう少しで茹でコガネの出来上がりだったのに。
「ホラ、ゴールが見えて来たぞ」
「良かったぁ、コガネ、ありがとう」
「お、おう」
「何照れてるの?」
「何にも照れてねぇよ!」
やっぱり可愛い、他人の前ではこんなにツンツンしてるけどヒノリの前ではデレデレ、もしかして男版ツンデレ!?
アタシ達はなんとかゴール出来た、コガネの意外な一面、いっぱい見れたな。
めでたく読者数が1000に達しました、それだけではなく、前作の『〜金銀+』は7000です、ありがとうございます。
ていうことで明日は調子に乗って一気に2話投稿しちゃいます、楽しみにしててください。