1話 オレは女になった
小説初執筆なのでかなりヘタクソだと思います。
性転換&入れ替わりの物語です。TS的表現がよく出てきますので、苦手な人はご注意下さい。それでも大丈夫という方はどうぞ!
よければ感想&レビューもらえると嬉しいです。
夕日。
5月も中頃だというのに、こんなに寒く感じるのは、今オレが告白しようとしているからだろうか…。
オレの名前は、山瀬 光。
髪は黒髪で、男にしては少し長い方だと思う。顔は中性的だと自覚している。身長は高一にしては少し高い方じゃないだろうか…。
そしてオレの目の前にいる人、つまりオレが今から告白しようとしている人は、相川 雪菜。
相川さんは、俗に言う黒髪ロングストレートで、性格は穏やかで優しい。何より美人だ。
そんな相川さんに、オレは入学してすぐ一目惚れしたのだ。
「相川さん!」
「なに?」
「こんなトコに呼び出してごめん。でもオレ、相川さんに伝えたいことがあって…。」
県立滝高校の校庭の一郭、少し薄暗い所でオレはそう告げた。
「…オレ、相川さんを一目見たときから好きでした。もし良かったら、付き合って下さい!」
言っちゃった…。もう後戻りはできない。
小さな沈黙の後、相川さんは申し訳なさそうにして言った。
「ごめんなさい。」
「…え?!……どうして。」
「こんなこと言ったら悪いかも知れないけど、山瀬くんって少し女々しいって言うか…何か男らしくない気がして…私男らしい人が好きだから…。」
もうそれ以上言わないでほしい。なんか泣きそうになってくる。…オレってホント男らしくないんだな…。
頭の中で次に言う言葉を探していると、相川さんは走って行ってしまった。情けない…。
そして一人になって気づく。
オレ、フられたんだ…。
15年生きてきて初めて人に告白したけど、まさかフられるのがこんなにツラいものだったとは…。今頃になって告白したことを後悔する。もともとオレにとって相川さんは高嶺の花なのだ。
夕方の校庭に一人でいても何もすることがないので、オレはもう帰ることにした。校門を出て、家路を一人トボトボと歩く。もしさっき相川さんが告白をOKしてくれたら、今頃二人で会話でもしながら帰っていたのだろうか。そう思うと、すごく切なくなってくる。
明日から一体どんな顔をして相川さんに会えばいいんだろう…。もし告白したことがバレてクラスの笑い者になっていたらどうしよう…。相川さんが誰かに言いふらす?相川さんに限ってそんなことは…。でも告白の瞬間を誰も見ていなかったとは限らない。
そんなコトを考えながら横断歩道を渡っていると、あることに気づく。
信号が赤だ!オレはぼーっとしすぎて、信号が赤だということも知らずに渡っていたようだ。そして次の瞬間、オレの視界は一気に広くなる。
…浮いてる!?
オレは地面より少し高いところから、車道を見下ろしていた。オレとぶつかったであろうトラックや、その他数台の車が車線からだいぶはみ出しているのが見える。
…そうだ、オレははねられたのだ……。
気づくとそこはもう地面だった。
でも、轢かれた所よりだいぶ場所がズレてる。そんなに飛ばされたのだろうか。
ゆっくりと起き上がってみる。……痛っ…くない!!?なんで!?おもいっきり轢かれて、こんな所まで飛ばされたのに…出血や骨折どころか痛みさえ無いなんて…。まさかオレは死んだんじゃないだろうか…。享年15歳なんてイヤだ!別段将来の夢とかがあるワケじゃないけど、もう少しぐらい生きていたいと思う。
でもそんな考えはすぐに打ち消された。
オレの周りに段々人だかりができてきて、オレを心配する声が聞こえる。霊になってたら見えないもんな。…わかんないけど。でもやっぱり無傷なのは理解できない。オレは怖くなって無我夢中で家まで走った。なんか体のバランスがとりにくいけど、今はそんなこと心配してる暇はない。
家に着いてチャイムを鳴らす。早く親の顔が見たい。親の顔が見たいといっても、別にオレがファザコンやマザコンという意味ではなく、早く落ち着きを取り戻したいからだ。
でもそんなオレの願いは、すぐに崩れ落ちることになる。
ドアを開けたのは母だった。その後ろには、怪訝そうな顔をした姉もいる。
オレの母は、山瀬 明美。深い茶色の髪にゆるいウェーブをかけて肩より少し低いところで下ろしている。優しい性格と41歳と言うには若すぎる顔で、ファッションデザイナーなんかをやっている。ちょっと自慢できる母親だ。
姉の名前は、山瀬 明。母よりいくらか短い黒髪にこれまたウェーブをかけている。少しおかっぱっぽい。大学一年で頭も良いし美人だけど、いつもゴチャゴチャうるさくてちょっかいばかりかけてくる、とても自慢しようとは思えない姉だ。
母が不思議そうな顔をしていたので、オレは聞いてみた。
「どうしたの?」
「どうしたのって…。どちら様ですか?」
「は!?」
オレが驚いたのには二つ理由があった。
一つは母が毎日会って話しもしてるオレを見てどちら様なんて言ったこと。オレは今そんな冗談を言う気分にはなれない。第一オレの母はこんな冗談を言う人だっただろうか。
そしてもう一つはオレの声が女になっているということ。…なんで!?事故で声帯が壊れてしまったのだろうか。他はどうにもなってないのに?事故のショックで声が出なくなってしまったとかなら聞いたことあるけど、声が女になったなんて聞いたこともない…。
「お母さんどうしたの?オレだよ…?」
「オレって?」
「お母さんの息子…。」
母はだいぶ困った顔でオレを見ている。姉なんか猫の死骸でも見てしまったかのような目をしている。
母がドアを閉めそうになったのでオレは慌てて言った。
「山瀬 光だよ!!」
閉まっていくドアの動きが止まる。
「き、きょうの朝ごはんはパンと目玉焼きだし、昨日の夜ごはんはすき焼きだったよね…。家の家具の配置もぜんぶ言えるよ!…オレなんだから…。」
これでオレじゃなかったらただの変態ストーカーだ。
案の定、ドアが再び開かれる。一安心だ。
「本当に光なの?…」
「うん!オレだよ。…なんか声がヘンだけど…。」
「声だけじゃなくて、姿もヘンよ?…」
「え?……うわっ!!?」
見るとオレは女子の制服を着ていた。身体も女になっている。これはもう事故で声帯がどうこう言ってはいられなくなった。母と姉が困るのも無理はない。知らない女がいきなりあなたの息子とか言ってたんだから…。まあ姉の方は気持ち悪がってただけかも知れないけど…。
「…お母さん…。オレ本当に光なんだよ?…」
「…わかったわ…。」
そう言って母はオレを家に入れてくれた。つくづく思う。心が広い人だと。違う母親だったらこんな風に入れてくれただろうか…?
「お母さん…ありがとう!」
「いいのよ。だって光なんでしょ?何があったかはわからないけど、自分の息子を家に入れるのは当たり前じゃない。」
「…うん!」
なんか親子っていいなと少しあったかい気持ちいると、姉が母に言い出した。
「お母さんホントにいいの!?見た目で光じゃないってわかるじゃん!なんで入れたの?」
「う〜ん。なんでかなぁ…。雰囲気?」
そんなもんで入れたのか!?オレの母は優しいけど、どこか抜けてる気がする。まあ今回は嬉しいけど、これじゃあ他人も入れてしまいそうで心配だ。
案の定姉がギャアギャア騒いでる…。
そんなコトをよそに、オレは一目散に洗面所に向かった。早く自分の姿を確かめたい!
どこも怪我はしていないか。
…女なのか。
洗面所の鏡に身体を映す。足の先までは入らないけど、上半身はきっちり入る。そこで見たオレの姿は……。
「…女……だ…。」
そこに映ったのは、えらく美人な女子高生だった。