4 隠し事
「ノシロ~!」
いつものように手を振り、駆け寄ってくる彼女。
「ねぇねぇ、今日は猫耳見せてくれるっ?」
「ダメだ!」
「~、ケチーっ!」
ウエキはノシロの隣に座ると、小さく伸びをした。
「…男性2人が、斬殺だって。ニュース見た?」
ウエキが空を見上げながら言った。
「ここでニュースが見られると思ってるのか」
「あはは、確かにそうだね!」
ウエキが手のひらを口の横に持ってきて、小さく言う。
「2人とも、猫の一族の殲滅を執行した人なんだって。
…ノシロがやったの?」
「…………」
「殺したんだ?」
「…だとしたら俺を軽蔑するか?」
ノシロは正面を見据えたまま低いトーンで言った。
「ううん。
人を殺しちゃうのは良くないけど、私がもしノシロと同じ境遇になったら、ノシロと同じことをするだろうから。」
「…そうか」
「…………」
「…………」
「良い天気だねぇ」
「だな」
ノシロも空を眺める。
建物の関係で日光は2人に当たらないが、空には雲1つ無かった。
「…あの日も、たしかこんな天気だった」
と、小さく呟くウエキ。
「…あの日?」
「…えっ!? あっ、えっ、別に!!
きっ気にしないでっ、ただの独り言だから!!!」
ウエキは無駄に腕を動かす。
「…………ほんとか?」
「えっ?」
「ホントにただの独り言か?」
「なっ、ななな、何言ってんの! 当たり前でしょーっ!」
「…何か俺に隠してるだろう」
「キャアアアアアアアアアアー!
なっ何よ!! わっ、私を疑ってんの!?」
「(なんだよ…今の悲鳴)
疑ってるっていうか、どう考えても挙動不審だろ、お前」
「そっ そ~お~?」
ウエキは吹けもしないのに、唇を尖らせて空気を出す。
「……?」
ノシロは腕を組むと、首をかしげた。




