その⑥~最強コンビ結成!?~
芸能事務所「キャラランド」の練習生になって数日したある日。
レッスンスタジオに響くのは、ぼくの歌声だけだった。
カラオケアプリを操作しながら、ひたすら歌う。
この環境を使えるのも、椿さん——稗田椿社長のおかげだ。
「ここで思いっきり練習していい」と言われて以来、ぼくは毎日キャラランドに来ている。
正直、まだキャラランドのことはよくわかっていない。
芸能事務所っていうより、マスコットキャラクターの“お家”みたいな場所だし。
だけど、歌を歌わせてもらえるなら、それでいい。
そう思っていた、その時——
「よう、新人くん!」
突然、スタジオの扉が開き、ぼくと同じくらいの歳の知らない男の子が入ってきた。
「……誰?」
黒髪で、ぼくよりちょっと小柄な男の子。
制服姿で、どことなく軽い雰囲気をまとっている。
「俺は伊藤颯太! キャラランドのアルバイト、そして未来の超有能プロデューサー!」
「……はあ?」
なんだ、この子・・・。
「いやー、すごかったよ、きみの歌!」
そう言うと、いきなりぼくの手を握る。
「きみ、名前は?」
「……佐藤翔太」
「翔太くん、俺と組まない?」
「……は?」
言ってる意味がわからない。
「いや、きみの歌、一目で惚れたよ。俺の目に狂いはない。これはもう、2人で天下を取るしかないね!」
颯太——確かにそう名乗った彼は、満面の笑みで胸を張った。
「天下って……」
「俺がプロデューサーになって、きみを大スターにする!」
「……きみ、プロデューサーじゃなくてアルバイトじゃん」
「今はね! でも、俺は将来、芸能界で一旗揚げる男だから!」
颯太は自信満々に言い放つ。
「君さえいれば、俺の未来も明るい! だから——」
「だから?」
「よろしく、相棒!」
颯太が手を差し出してくる。
「……まだデビューもしてないのに、相棒って…」
「いやいや、今のうちに青田買いするの大事でしょ?」
颯太はニッと笑った。
「佐藤翔太くん、いただきます!」
「……勝手にぼくをいただくなよー」
そう返しながらも、思わず苦笑してしまった。
——なんなんだ、この子。
でも、妙に悪い気はしなかった。
佐藤翔太と伊藤颯太。
意外といいコンビになるかもしれない。




