その㊼~BENアイドルオーディション~
BENアイドルオーディションの発表から、二週間が経った。
キャラランドに足を運ぶギルド567のメンバーたちの空気が、どこか少しだけ変わったことに、ぼくは気づいていた。
明るく挨拶はするけれど、いつもより言葉が少ない。
笑顔の奥に、考え事を隠しているような、そんな感じだ。
ギルド567のメンバーは、キャラランドGENSEKIオーディションのあとも、ずっとアイドルを目指し続けている。
キャラランドとは違うオーディションだとしても、BENアイドルオーディションは、彼らにとって間違いなく“大きなチャンス”だった。
昨年、BENの八手社長が、わざわざキャラランドに来社したことを、ぼくも覚えている。
そのとき、ギルド567メンバーの応募受け入れについて、前向きな話が出ていたことも。
だからこそ、なおさらだ。
誰も、積極的にBENアイドルオーディションの話題を口にしない。
でも、きっとそれぞれが、いろいろな思いを抱えている。
――挑戦したい気持ち。
――今の場所を離れる不安。
――またゼロから始める怖さ。
椿さんが言っていた言葉が、ふと頭に浮かぶ。
「キャラランドとして、積極的に参加をすすめるわけじゃない。でも、チャンスとして、真剣に考えてほしい」
否定もしない。
無理に背中を押すこともしない。
選ぶのは、本人たち自身。
それが、余計に難しいんだと思う。
レッスン前のスタジオ。
ギルド567のメンバーが、黙々と準備をしている背中を見ながら、ぼくは何度か、声をかけようとして、やめた。
気になる。
正直、すごく気になる。
でも、ぼくがどうこう言える立場じゃない。
それぞれが、それぞれの道を考えている。
ぼくにできることは、一つしかない。
――デビューに向けて、今のレッスンに、全力で向き合うこと。
歌も、ダンスも、演技も。
迷わず、逃げずに、正面から。
誰かの選択を気にして、自分の足が止まってしまったら、それこそ意味がない。
レッスンが始まる直前、鏡に映った自分を見る。
少しだけ、顔つきが変わった気がした。
それぞれが、別々の場所で、別々の決断をしようとしている。
でも、今この瞬間、同じスタジオで、同じ夢を見ていたことは、きっと消えない。
BENアイドルオーディションが始動した。
それは、誰かの未来が、動き出したということでもある。
ぼくは、ぼくの道を行く。
静かだけど、確かな覚悟を胸に。
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




