その㊺~好きだ、大好きだ~
最近、歌やダンスに加えて、演技のレッスンも始まった。
正直に言うと、ちょっと不安だった。
キャラランドの中にある収録スタジオ。
今日はそこで、演技用のセリフ台本を使った収録がある。
演技台本を初めてもらった日から、ぼくはずっと考えていた。
――どう演じればいいんだろう。
――「正解」って、あるのかな。
一人で考えていても答えは出なくて、
昨日、思い切って、以前に演技経験がある雪雄さんに相談してみた。
昨日のレッスン終わり。
「雪雄さん、少し……演技のことで聞いてもいいですか?」
雪雄さんは、少し驚いた顔をしてから、柔らかく笑った。
「ぼくは演技をやっていたといっても、子役と、その後は悪役ばかりですよ」
そう前置きしてから、ゆっくり言葉を選ぶように続けた。
「だから、アドバイスを言える立場じゃないかもしれませんが……ぼくは、演技を“誰のためにするのか”を、いつも考えていました」
ぼくは、自然と背筋を伸ばして聞いていた。
「当然、観ている人のために演じます。でも、そのために自分が犠牲になってしまったら、いい演技はできないと思うんです」
「観ている人のため、そして自分のためにも、演技をしなくちゃいけない」
一度、言葉を止めて、雪雄さんは少し視線を落とした。
「今思うと……劇団で悪役をやっていた頃のぼくは、自分とちゃんと向き合えていなかった。だから、演技がうまくいかなかったのかもしれません」
でも、と前を向いて言った。
「今は、感じるんです。自分のために、そしてこれからLa♪Ra・RISE!(ララライズ)を応援してくれるファンのために活動できているって」
胸の奥が、じんわり熱くなった。
「あと……演技については、辰煌くんの演技を参考にしたほうがいいですよ」
「彼は、自分のために演じているのに、観ている人を惹きつける才能を持っていますから」
そう言って、雪雄さんは胸元のポケットから眼鏡を取り出し、ぼくの台本に目を通した。
――告白のシーン。
「自分の演技を観てくれる人のため、そして翔太くん自身のために演じてください」
その眼鏡姿を見て、ふと思い出した。
キャラランドGNSEKIオーディションのとき、よく見ていた雪雄さんの眼鏡姿。
La♪Ra・RISE!になってからは、初めて見た気がする。
そして今日、収録ブースに立つ。
マイクの前。
台本に書かれた、たった一言。
「……好きだ」
どう言えば、自然に聞こえるんだろう。
小さくつぶやいてみる。
声が小さすぎた気がして、もう一度。
「君と出会えて、本当に良かった。……好きなんだ」
胸の奥から、感情を吐き出すように。
練習のはずなのに、顔が熱くなる。
次は、「大好きだ」。
深呼吸して、目を閉じる。
――誰のために。
――そして、自分のために。
「――大好きだ!!」
音割れしていないか、不安になって、思わず笑ってしまった。
でも、その直後、ふと思った。
……これじゃ、本当に告白みたいだ。
……でも、「伝える」って、こういうことなのかもしれない。
スタジオを出る頃、
ぼくがやるべきことが、少しだけ見えてきた気がした。
歌も、ダンスも、演技も。
全部、自分のため、
そして――観てくれる誰かのために。
また一歩、前に進んだ気がした。
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




