その㊹ 「ぼくは佐藤翔太!!!」
今日は、お父さんの帰りが遅かった。
玄関のドアが静かに閉まる音のあと、リビングに入ってきたお父さんは、少しだけ頬が赤い。どうやら、ほろ酔いみたいだ。
「翔太、La♪Ra・RISE!だっけ? 翔太のグループ。最近、何か新しいことしてるのか?」
テレビを見ていたぼくは、リモコンを置いて振り向いた。
「うん。SNSにLa♪Ra・RISE!の動画を配信し始めたよ。どうしたの?」
お父さんはソファに腰を下ろして、ふうっと息をついた。
「この間な、美和も言っていたが……最近、俺にも翔太のことを聞かれることが多くなったんだ」
「そうなんだ……。迷惑かけてごめん。それで、なんて答えているの?」
少しだけ間があって、お父さんは照れたように笑った。
「『La♪Ra・RISE!は、私の息子です』って答えている」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がじんわり温かくなった。
ぼくは、少し安心して、そして少し誇らしくなった。
ほろ酔いのお父さんは、そのまま話し始めた。
「佐藤翔太――」
ぼくは、自然と背筋を伸ばして聞いていた。
「『佐藤』が日本で一番多い苗字なのは知っていると思うけど、『翔太』も、翔太が生まれた年で一番人気のある名前だったんだ」
お父さんは、天井を見上げるように続ける。
「お母さんと、たくさん話し合ってな。響きもいいし、元気に翔ぶように育ってほしいって思って、俺の「哲太」から一文字とって『翔太』と名付けた。
名づけた親としては、今でもすごく気にいっている」
一度、言葉を切ってから、少し声を落とした。
「でもな……心のどこかで、たくさんの『佐藤』、たくさんの『翔太』の中に、埋もれてしまわないかって、心配もしてたんだ」
ぼくは何も言わず、ただ聞いていた。
「名前だけでも、もっと特徴的にしてやったほうがよかったかなって。特に、翔太が人前に出る『アイドル』を目指すって聞いたときは、正直、そう思った」
お父さんは、少しだけ苦笑いをした。
「だからな……俺は、たくさんいる『佐藤翔太』の中で、『La♪Ra・RISE!の佐藤翔太』は、俺の息子だって言いたかったのかもしれない」
胸が、ぎゅっとなった。
そして、さっきよりも、もっと嬉しくなった。
確かに、「佐藤 翔太」は、よくある名前かもしれない。
でも、見方を変えれば、一番馴染みがあって、覚えてもらいやすい名前かもしれない。
ぼくは、心の中でそっと思う。
――「佐藤 翔太」が輝けるように、アイドル活動をしていこう。
――たくさんいる「佐藤 翔太」のためにも。
リビングの明かりは、いつもと同じなのに、
今日は少しだけ、明るく感じた。
*La♪Ra・RISE!キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




