その⑭~カメリアとぼく~
キャラランドのスタジオ裏。
ぼくがダンス練習の合間に、廊下で水を飲んでいたときだった。
「……あの、こんにちはっ!」
突然、背中から声をかけられて、びっくりして振り返ると、そこにいたのは――キャラランド所属のマスコットキャラクターのカメリアだった。
キャラランドの新米マスコットキャラクター。
ちょっと緊張したように手を振っていた。
「ぼく、佐藤翔太です。キャラランドの練習生で……えっと、アイドルユニットに参加する予定です。」
「ぼくはカメリア……まだ、マスコットキャラクターとして何もできてないけど、とにかく、がんばってます!」
なんだか、似てるなって思った。
ぼくも、まだ何も成し遂げてない・・・。
カメリアも、まだスタートラインに立ったばかり。
「レッスン、大変ですか?」
「うん。でも、楽しいよ。歌うのが好きだから。……カメリアは?」
「ぼくも、みんなに笑ってもらえるのが好き。だから、もっと動けるようになりたい」
その日から、ぼくらは少しずつ話すようになった。
練習の合間に、廊下で。
帰り道のエレベーターで。
たまに、キャラランド近くのカフェで。
「翔太くんって、いつも一生懸命だよね。見てると、ぼくもがんばらなきゃって思う」
「カメリアも、すごいよ。大きな甲羅を背負って、あんなに動けるなんて」
お互いに、まだ“実績”なんてない。
でも、だからこそ、わかることがある。
不安とか、焦りとか、でもそれでも前に進みたいって気持ちとか。
「ぼくら、似てるかもね」
「うん。……だから、負けないようにがんばろうね」
ぼくは、カメリアと話すことで、自分の気持ちを整理できるようになった。
誰かと比べるんじゃなくて、昨日の自分に勝ちたい。
そう思えるようになった。
カメリアとの交流は、秘密・・・まだ誰にも話してない。
でも、ぼくにとっては、すごく大事な時間だ。
LoHiのステージに立つその日まで、ぼくは、そしてぼくらは、走り続ける。
それぞれの“はじまり”を、胸に抱えて。




