その⑫~颯太の決意~
「翔太、ちょっとだけ話せる?」
レッスンが終わって、スタジオの外の廊下で水を飲んでいたぼくに、颯太が声をかけてきた。
いつもより少しだけ真剣な顔。でも、どこか吹っ切れたような、そんな表情だった。
「うん、どうしたの?」
颯太はペットボトルを片手に、少しだけ視線を落としてから、ぼくの目を見て言った。
「さっき、椿社長と雨野さんに話してきたんだ。俺、キャラランドに高校卒業したら入社して、翔太たちのマネージャーをやってみたいって」
「……ぼくたちのマネージャー!?」
思わず聞き返してしまった。
でも、すぐに思い出した。
初めて会ったときに、颯太が「ぼくのプロデューサーになってぼくを大スターにする」って言ってたこと。
「あっ。マネージャーは、名プロデューサーになるための第一歩。
まずは俺はキャラランドで、もっとたくさん、もっと深く芸能の現場に関わっていきたい。マネージャーは、その一歩になると思ってる」
「……そっか」
ぼくは、うなずいた。
颯太は、最初からアイドルを目指していたわけじゃない。
オーディションにも出ていなかったし、練習生でもない。
でも、キャラランドでアルバイトしながら、ずっとぼくやオーディションメンバーのそばにいて、誰よりも冷静に、でも熱くこの世界を見ていた。
「俺が、マネージャーになったら、LoHiですぐに優勝して、あっと言う間にお前らをスターにしてみせる!まだキャラランドに入社してマネージャーになれるわからないけど・・・」
「……うん。颯太らしいね」
ぼくは笑った。
颯太の言葉は、いつもまっすぐで、ちょっとだけ生意気で、でもちゃんと芯がある。
「楽しみにしてる。颯太がマネージャーになったら、絶対頼りにするから」
ふたりで笑い合ったその瞬間、ぼくたちの関係が少しだけ変わった気がした。
でも、きっと変わらないのは、同じ夢を見ているってこと。
颯太は、芸能界で大成するという夢に向かって、自分で道を選んだ。
ぼくは、その想いに応えるためにも、ステージの上で輝きたい。
LoHiのステージに立つその日まで、ぼくは、そしてぼくらは、走り続ける。




