はっけん!
ある日、はながお昼のさんぽをしていると、道のはしっこで友だちが下を向いて歩いているのを見つけました。
「ねえそら、どうして下を向いてるの? 前を見て歩いた方がいいよ。ぶつかっちゃう」
「あ、たしかにそうだね。ごめん、気をつけるよ」
そらは言いました。
でも しばらく たったある日、そらはまた下を向いていました。
「ねえ、どうして下を向いてるの? せっかくなら上を向いた方がいいよ。その方が気持ちが晴れるから」
「たしかに、空はきれいだもんね」
そらはすぅっと息をすいこんで わらいました。
「おいしいにおいがする」
「そうでしょ? 広いせかいを見ると、とってもわくわくするよ」
はなは、そらに教えると手をとって歩きました。もちろん、たまに前を向いてぶつからないように気をつけながら。
でもある日そらは、またまた同じ場所で下を向いていたのです。
「ねえねえ、どうしていつもそこで下を向いてるの? 何かいやなことを思い出すの?」
「ううん、ちがうんだ。見て」
そらは地面を指しました。そこには、とても小さいけれど、きれいな青い花がいくつか さいていました。
「この子たちを見てるの。かわいいでしょ?」
それに、はな はおどろきました。
「よく気づいたね。わたし言われるまで気づかなかったよ」
はな はしゃがむと、そっとその花にさわってみます。それはやさしさを はなっているみたいで、心があたたかくなりました。それに、どこからか力がわいてきたのです。
「ぼくね、この子たちがすきなんだ。だからついつい下を向いちゃって。心配かけてごめんね」
「ううん。あやまらないで。わたしも、きみのお話をもっと早く聞けばよかったなぁ」
そう言ったはなに、そらは やさしくほほえみました。
「じゃあこれからは、すてきなものを見つけたらすぐ教えるよ」
それから二人は、ときどき上を見たり下を見たりしながら、いっしょに さんぽをするようになりました。
「あ、はな見て。あの雲ソフトクリームににてるよ」
「ほんとだ。あ、あっちはドーナツみたい」
「おいしそう〜」
二人でいると、見えるものがもっとふえることに気づいた そら と はな は「楽しいね」と、わらい合って歩いていきます。
すると少し進んだところで、白い鳥が空を飛んでいるのに気づきました。
「きれいな鳥だね」
そらは言うと、はなといっしょに鳥を目で追いかけます。鳥は二人の上を通って、さっき歩いてきた方向へと飛んでいきます。けれど……
「あっ」
家の屋根で見えなくなってしまった鳥を、二人は少しざんねんに思いました。しかし、そのまま目線を屋根から下に下ろすと、行きとはちがうけしきが見えました。少し坂道になっていたようで、二人の立っているところからはきれいな町が見えました。赤や青の屋根に太陽が当たって、きらきらと光っています。
「わたしたちの町って、こんなふうなんだ」
「きれいだね」
「うん。なんだか、お魚のうろこみたい」
「たしかに!」
顔を見合わせた二人は、ふふふっと わらい合います。
「もっと高いところまで行ってみよう!」
はなとそらは手をつなぐと、坂道を楽しくかけ上がっていきます。
きっと、てっぺんから見えるけしきは、二人をもっと えがおにしてくれることでしょう。