7甘:準備物
エリザータが帰宅すると、書斎からアルヴェードが出て来た。
「王宮に行っていたそうだな?」
「そうよ。王子の整った顔を堪能してきたわ」
「まるで、俺の顔が整っていないみたいな言い草だな」
「貴方も十分整ってるわよ。でも、今堪能したいのは、王子の方」
「そうか」
すると、アルヴェードはエリザータの唇をついばむようにキスをした。
「ミルーネにも、そんな軽いキスをしてきたのかしら?」
「そんな訳はないだろう?お前に改めて本気のキスを送らずとも俺の愛は伝わるだろうと思ってな」
「なら、いいわ」
アルヴェードは、エリザータを後ろから緩やかに抱きしめる。そして、空色のスーツを撫でた。
「抜かりないな。王宮への『営業活動』を表向き装うなど」
「王宮の一部の人には、魂胆バレバレよ。けど、ゴシップ誌とかは、誤魔化せる」
エリザータは、前に回されているアルヴェードの両手を自らの両手で包む。
「そうまでしたのに、王子の顔を見に行っただけになってしまったわ」
「何か目的があったのか?」
「聞きたい事、全然聞けなかった」
「そうか」
「それに引き換え、貴方はミルーネの所に一晩泊まって、『愉しい事』、出来たんでしょ?」
「まさか。第六条関連の事だろう?それは、追々するつもりだ。『落とした』とは言え、すぐに『第六条』まで発展させたら、俺は理性のない男に映るだろう。あえて『準備』はしていかなかったさ」
「そう」
「お前と王子こそ、一晩を共にすればよかったのに」
一旦、エリザータはアルヴェードの腕の中から出て、一袋の『準備物』を持ってくる。
「これ、持って行けばよかったって反省した所よ」
アルヴェードは、エリザータの手から「準備物」を取り、今度はエリザータを前から抱きしめる。その眼光には、欲求の熱が含まれていた。
「今夜、これを使うか」
宣言通り、その夜「準備物」は活躍した。