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51甘:財閥の問題と新たな道

それから、数日後。王子の婚約成立の報せは国中に知れ渡った。あらゆるメディアがランディレイとミルーネを紹介する。それは、エリザータとアルヴェードの元にも届いた。


「王子、おめでとうございます」

「ミルーネ、おめでとう」


 夫婦の独り言のような祝福が同時に2人の邸宅の一室に響く。その視線の先には、新聞に載るランディレイとミルーネの幸せいっぱいのツーショット写真。エリザータは思わずため息をついた。


「美男美女で、写真映えするわね」

「そうだな。この世の美を凝縮したら『こうなる』と見せつけられているようだ」


 アルヴェードも感嘆の声を上げた。もうすぐ夫婦となる元愛人たち。単体ではよく見た顔だが、並ぶとより一層その造形美が際立った。しばらく大々的に載るその写真に2人は見惚れていたが、現実に頭を戻した。アルヴェードが重いため息をつく。


「王子とミルーネが幸せを掴んだきっかけではあったが、ベルカイザ号のレト寄港は、少しまずい方向に話が行っているんだ」

「え?嘘でしょ?」

「王宮では事細かく真実を話したし、乗客たちは事情をわかっていて本当の話はしてくれているとは思うが、関係がない人たちの間では拿捕の誤報がそのまま真実として信じられているらしく、ベルカイザ号は、風評被害を受け始めているんだ」

「まあ、なんて事」

「どうしたらいいか、わからない。情報公開もしているし、王宮からも発信してはもらったが、なかなか浸透していかなくてな」

「私も出来る事、探してみたいけど、アルヴェードが思いつかない事を思いつく自信はないわ」

「気持ちだけもらっておく」


 アルヴェードは、気が重くなりそうな所を別の考えでそれをかき消す。


「それにしても、今回の不倫は大きな話になったな」

「そうね」

「まあ、楽しかったのもあった。お前が第一条を破って王子に不倫してくれたおかげだ」

「あっ。許す許さないを棚上げしてもらってたわよね?ど、どっちになるの?」


 アルヴェードは、不敵な笑みを浮かべる。


「それは、まだ棚上げ状態だ」

「ええ?何でよ。王子と私、ミルーネと貴方、関係は終わったのに、何で棚上げ状態が続くのよ?」

「実は、この話は終わってないんだ」

「えっ、まだって、貴方まさかミルーネに未練でもあるの?」

「別れたばかりだからな、ないと言ったら嘘になるが、おおむね未練はないと言える。王子とミルーネが幸せになってよかったと思えているからな」


 エリザータは首を何度も傾げる。その様子をアルヴェードは笑いながら見て話を続ける。


「だが、その幸せの為に、犠牲になった男がいるんだ」

「犠牲?」

「ミルフォンソだ」

「ミルフォンソさん?」

「俺の推測が正しければ、ミルフォンソはミルーネに恋をしている」

「えっ!!」


 エリザータは、驚きの大声を上げた。アルヴェードは一転真剣な顔をして言った。


「残念ながら、ミルーネは王子に『取られた』。ミルフォンソは失恋だな。そこでだ、お節介とは思うが、お前にミルフォンソを慰めてもらいたい。ミルフォンソを『落として』ミルーネを忘れさせてやってくれないか?」

「私の次の愛人の指名?初めてね」

「イレギュラーだが、結果は不問として、やってくれたら第一条の違反を水に流す」

「わ、わかったわ。やってみるわ」


 エリザータは、惹かれた相手ではない男を落とす初めての試みに、不安を抱いた。しかし、一念発起してやる事を決心した。


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