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44甘:激励

思えば、エリザータは初めてミルーネを間近で見た。その感想を仕事から帰宅したアルヴェードがいる前で呟く。


「あまり顔を知らなかったけど、ミルーネ、凄く透明感のある女だったわね。私も負けないようにしなきゃ」


 アルヴェードは、微笑みこう返した。


「そうか。しかし、あれは病から来るものだ」

「ああ、貴方に言ったわけじゃなかったんだけど」

「聞こえた事に、言葉を返して悪いか?」

「そうね、ごめんなさい。で、でも、本当に綺麗だったわね、ミルーネ。病的な感じじゃなかったわ」


 アルヴェードは、頷きエリザータを見つめる。


「まあ、お前の健康的な美しさにも俺は心が縛られてるがな」

「まあ、ありがたい言葉ね」


 そんなエリザータの返答を聞きつつ、アルヴェードは天井を仰ぎながら心の中で言った。「お前も、ミルーネという俺の愛人に嫉妬か。俺も、ランディレイというお前の愛人に嫉妬してるぞ。なんなら最初から。王子なんて身分だけ見たら、俺は逆立ちしても勝てないからな」と。再びエリザータに視線を戻すと、エリザータは何やら物欲しそうな目でアルヴェードを見ていた。


「エリザータ」


 アルヴェードは、吐息混じりの声を漏らし、エリザータに近づく。そして、熱くキスをした。一旦離れると、エリザータは潤んだ目になっていた。


「アルヴェード」


 今度は、エリザータがアルヴェードの唇を貪る。そして、再び離れる2人の唇。エリザータは落涙した。アルヴェードは、その涙を自らの唇にて拭った。


「どうした?」

「貴方とキス出来るのがとても幸せで、幸せで」

「今まで、離れていたからな」

「そうよ!」


 アルヴェードは、エリザータを強く抱きしめてやった。


「だが、今はここにいる。感じるだろう?俺の体温を」


 エリザータは、伝わるアルヴェードの体温の中、別の感情も沸き立って来る。それを涙に乗せ言った。


「こういう事を、王子とミルーネは病気とか王族の問題とかで、出来ないのよね?」

「まあな」

「1か月にも満たなかったのに、私は耐えられなかった。けれど、あの2人は、それより長く、何度も何度も離れたのよね?そして、今は、永久に会っちゃ駄目って辛いわ」

「ミルーネの病気の件は、セブレーノに任せていれば、おそらくいい方向に行くだろう。期待も含めての話だがな。そして、王族の件は、材料は揃った。大博打になるとは思うが、レトで掴んでミルフォンソの話で確定した情報を王宮に突きつければ、何かが変わる筈」

「セブレーノとアルヴェード頼みね。私、私は、王子とミルーネの為に、何も出来ない。何もやる事が浮かばない。悔しいわ」


 アルヴェードは、一旦エリザータを自らの腕の中から解放した後、目を見つめ言った。


「お前はもう既に、セブレーノと接触をしてくれただろう?後は、俺の『作戦』がうまくいくように祈っててくれ」


 そのアルヴェードの言葉に、エリザータの顔から力みが抜ける。


「そうだったわ。ありがとう。そして、貴方を全力で支えるわ」

「頼むな。力をくれ、エリザータ」

「ええ」


 エリザータは、激励のキスをアルヴェードに贈った。


「エリザータ、ありがとう。だが、足りないな」

「え?」


 アルヴェードは、エリザータを再び抱きしめ、背中を撫でた。


「もっと、深い所で今夜は俺を励ましてくれないか?」

「いいわよ」


 その後、アルヴェードとエリザータは溶け合った。


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