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30甘:それぞれの愛人への接触

翌日、エリザータは、仕事に向かうアルヴェードを見送った後、気合いを入れ王宮に向かって行った。


「エリザータ!まさか、来てくれるなんて!!」


 ランディレイは、笑顔でエリザータを迎えた。エリザータは、その顔に見惚れながらランディレイの続きの言葉を聞く。


「会いに来てくれるって言っていたけど、王宮に君を閉じ込めた僕に君が愛想を尽かしたと思っていたんだ」


 エリザータは、ランディレイの首に腕を回しつつこう返した。


「愛想を尽かすなんて、今の私にはあり得ない言葉ですわ」


 そして、早速唇を重ねる。ランディレイもエリザータを激しく求めた。熟れた唇は、やがて離れる。エリザータは、快感に濡れた目でランディレイの目を見つめる。ランディレイも熱に浮かされた目でエリザータを見つめ返す。エリザータは、そんな中微笑み、この日の本題を切り出した。


「その、私の勘違いだったら申し訳ないのですが、今の王宮に、閉じ込められている人がいるのでは?と思い、その件について王子の意見を聞きたくて来たのもありますけどね」


 ランディレイの顔が、ピクッとなった。そして、先ほどまでの欲望にまみれた表情から、迷いの表情へと変わる。


「エリザータ、どうしてその話を知ってるんだい?」


 絞り出すようなランディレイの声が響く。エリザータは答えた。


「さる筋から、聞き及びました。やっぱり、推測ではなくて、本当の話のようですわね?」

「国の為なんだ。危険を避ける為に必要な人質なんだ」

「国を思う王子の思い、立派ですわ」


 ランディレイの目は、苦しみの色をたたえ始める。


「でも、僕個人としては、その人質を解放してやりたいんだ」

「王子、お辛かったんですね?板挟みで」


 エリザータは、ランディレイの傍らに移動。横からその腕でランディレイを包んだ。


「その方を解放したいと思っているのは、王子1人ではありません。私も、その情報を聞きつけた時、王子と同じ思いを抱きました」

「エリザータ、そうなのかい」


 エリザータは、ランディレイの顔を改めて見つめ、こう言った。


「もし、人質解放に王子が動く、という事ならば、私は、私だけは王子の味方でいますわ」


 ランディレイの顔が、決意の色に変わっていく。


「ありがとう、エリザータ。僕、動いてみるよ」

「その心意気、素晴らしいですわ」

「その結果、僕は、王子の座を追われるかもしれないけどね?」


 エリザータは、はっとした。


「それは!そうかもしれませんね。王子が危険な道を歩んでしまいますわね。私、何という事を」

「いいや、かえって覚悟を決める事が出来たよ。『王子という枷』が無くなれば、僕は、恋人の所へ自由に行ける」

「それが、王子の幸せ?」

「そうだね」


 一方、アルヴェードはミルーネのアトリエに仕事帰りに寄った。


「ミルーネさん、貴女の新しい主治医が決まりましたよ」


 いつもの暗闇の中、アルヴェードはミルーネをその腕の中に収めていた。ミルーネは、身動ぎひとつせず、そんなアルヴェードに身を任せ、その胸に顔を埋める。


「ありがとうございました。本当は、私が考えてやらなきゃならない事なのに、アルヴェードさんに全てやらせてしまって。ごめんなさい」

「謝らないでください。私たちが勝手に考えて引っかき回しただけですから」


 アルヴェードは、ミルーネを背後から抱き直した。そして、言葉を続ける。


「そうだ。今日、貴女の絵を船に飾ったと報告がありました」

「そうですか!という事は、もうすぐ私の絵が旅に出るんですね?」

「ええ。沢山のお客様と共にね」

「楽しみです!」

「来月、その船、ベルカイザ号が処女航海を迎えます。それに私、参加予定なので、しばらくお会い出来ませんが、お待ちいただけないでしょうか?」

「わかりました。改めて、私の絵をよろしくお願いします」


 アルヴェードは、ミルーネを抱きしめる力を強めた。


「それは、お任せください。1か月程度の旅程になります。その間、このぬくもりを感じられないのは、少しさびしいです。しつこいかもしれませんが、しばらくこうさせてください。私の腕に、貴女の感覚を刻み込んでおきたい」

「心置きなく、どうぞ。そうおっしゃるのなら、私も貴方を刻み込みます」

「愛してますよ。ミルーネさん」

「アルヴェードさん、愛してます」


 しばらくして、ミルーネはアルヴェードの右手を取る。そして、愛おしそうに人差し指を唇で食む。


「ミルーネさんっ」


 アルヴェードにとって思いもよらないミルーネの愛情表現だった。それは、アルヴェードの全身に愛の痺れを及ぼした。


「駄目ですよ、ミルーネさん。貴女を丁重に扱いたいのに」

「もっと、私に貴方を刻み込みたいです」

「なら」


 アルヴェードは、それから激しい愛をミルーネの唇に刻み込んだ。ミルーネは、快感の渦に堕ちて行った。


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