Men in Black
タイトル詐欺
十数年前の夏…
私、足を骨折して入院したことがあります、
手術が必要で結構長期の入院になりました。
入院していた総合病院には、すぐ近くにコンビニがあり、
(いけないんだけども、良い子は真似したらダメなんだけれども、)
病院を抜け出した入院患者さんが、
こっそりお買い物に通っていました。
入院以前に、私も時々そのコンビニを利用していて、
点滴と共に来店しているパジャマ姿の紳士とか
ガウン姿の淑女とか、ちょくちょく見かけていたんです。
… で、ある夜、
ふと目が覚めて、どうにも寝付けない。
困ったなぁ…
と、考えていたら、無性にコンビニに行きたくなっちゃったんですね。
時間は深夜の2時、
どう考えても無理!
無理なんだけれども、ども、
急いで行って帰ってくればバレないんじゃない?
(ダメです!)
で、行っちゃったんですね 私、
でも、悪いことはできないもので、
病院裏口の段差に引っかかって、
仰向けに転倒しちゃったのでした。
建物内に転んだのと、ふわっと転んだので、
おしりも頭も大丈夫だったのですが、
松葉杖が思ったより遠くに吹っ飛び、
足はギブスでガチガチ、
起き上がれない、移動できない、
けもさんピーンチ!
どーしたものかと思案に暮れていると、
裏口の自動ドアが開きました。
ドアから入ってきたのは、ブラックスーツの紳士二人組、
驚いている私の両脇に手を入れて立ち上がらせると、
松葉杖を拾って手渡してくれました。
あっけにとられつつも、
「ありがとうございました」
と御礼を伝えると、
二人の男性は無言で会釈、院内の奥へと足早に消えていきました。
その後、コンビニに行くのは諦めて、
自販機で午後の紅茶を購入して、おとなしく寝ました。
次の朝、昨夜2時のブラックスーツの紳士は何者なんだろうと考えていて、
あ、
葬儀屋さんだ ! と ……
患者さんが旅立つの深夜が多いですもんね、
お仕事忙しいのに、手間とらせてすみません、
その節は大変お世話になりました、
ありがとうございました。
その後は病院脱走とか悪心は起こさずに
よいこでリハビリして無事に退院しました。
看護師さんに報告されてポコスカに叱られるかも、
と、しばらく怯えていたんですが、特に叱られることもなく、
見舞いに来た友人と家族には ……
めっちゃ怒られました。