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School of Days  作者: 橘樹儚椛
〜1学期編〜
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5月高校最後の体育祭(棒引き編1)

 さきちゃんが転校して来てから1週間ほどが過ぎ、俺たちの学校にはまた勝負の季節がやって来ていた。

 新学期最初の行事といえば……そう、それは体育祭!!

 けどそうは言っても……

「また2クラスかよ」「つまんねぇー」

 この学校の体育祭は学年対抗。

 よってこれも毎年ながら2クラスしかない俺たちの学年はほぼ紅組白組対決と何ら変わりはないのだ。

 そしてその勝負がつまらない理由。

 それはこれまでの2回とも俺たちのクラスが圧勝し、負けた特進クラスは甲子園並みに運動場の砂を袋に詰めては涙するというのがお決まりの流れだったからだ。

 この嫌なほど目にして来た光景以外見たことがない俺らからすれば、今年も全く同じ展開になるのだろうとしか思っていなかったのだ。

 でも相手は特進クラス。ガリ勉ばっかのクラスがテストだけでなく体育祭まで勝って威張られたなら、こっちだって立場がない。

 だから何ら悔しがる必要はないのだが、ただ今年も特進クラスは……

「今年こそ絶対に勝つぞー」「おー!!!」

 燃えていた。多分俺たちのクラス以上に。

 何故ならばこれも毎年のことながら特進クラスは皆何事にも負けず嫌いのクラスなのであった。






「おっここかな?3年2組っと……」

 体育祭当日、俺はクラステントが立てられていた場所に荷物を持って向かった。

「万尋くん、おはよう!」

 指定の場所に着くと、そこにはすでに準備万端でいるさきちゃんの姿があった。

「おぉさきちゃん、おはよ」

 俺は唯一いつもとは違うさきちゃんがいるという現状に一瞬の違和感を感じていた。

(何だかさきちゃんがいるだけで今年の体育祭はいつもより少しは華やかになってくれそうだ……)

「えっと……」

 俺は今年の種目が何だったか、配られたプログラムに目を通し確認した。

(今年の3年の種目はっと……)

「棒引き、借り物競争、クラス対抗全員リレー。

うわっまたあんのかよこれ……」

 口に出したその種目は、毎年恒例&今年も地獄絵図になる予感しかしなかった。

「また?」

 俺の言葉にまだ初めてで何も知らないさきちゃんは何のことだろうと俺の方を見ていた。

「あぁううん、何でもない」

 俺はさきちゃんに始まる前から嫌な想像を植え付けぬよう、何も言わないという選択を取ることにした。

 でも俺はたった1人この種目を目にした時、今年こそとあいつの無事を祈っていた……






<それでは1種目目、3年生による棒引き対決でーす>


「棒引きかぁ……」

 そんな放送の声と共に俺は怠さでいっぱいになっていた。

「棒引き?」

 少し首を傾げてそう聞いてきたさきちゃんは、今までに体育祭経験も少ないせいか棒引きという種目をあまり知らないようだった。

「棒引きっていうのは、綱引きの棒版って感じ。

実際去年までは綱引きとしてやっていたんだけど、多分去年の体育祭であれがあったから……」

「あれ?」


 そう、これは去年の体育祭でのこと……

 去年まではこの棒引きという競技はなく、俺たちは毎年の競技で使われていた伝統ある綱で勝負をしてきていた。

 でも遂に去年……

『思いっきり引っ張れー』

『『おー!』』

 その結果……

『『『あー!!!』』』

 この学校で長年にわたって受け継がれ、伝統となっていた種目。

 そしてその度に使われてきた綱がとうとう真っ二つにちぎれてしまったのだ。

 あの時の校長先生の顔ったら、ありゃ何ともいえない表情だったな……

 んなわけで、多分今年から棒引きに。


「なるほど。そんなことが」

 さきちゃんは俺の軽い説明だけで理解してくれていた。

「うん。でもまぁ綱が棒に変わっただけで内容はほぼ一緒だから。

綱引きも棒引きも、肝心なのは押して引くってことでしょ!」

「なるほど、押して引くっですね!」

「そうそう」

 相手に押され、それでも負けじと引っ張る。

 これこそが綱引きや棒引きの醍醐味っしょ!



<それでは3年生による棒引き対決、よーい(スタータピストルの音)>


 いよいよ始まった棒引き、俺たちの目の前に並べられた棒は5本。

 先に3本取った方のクラスが勝ちってことか……

 なら俺が最初に取りに行くべき場所。それは……ど真ん中ダァー!!

「走れー!」

「「おー!!」」

 俺の叫びに呼応するようにクラスの仲間も皆各々目の前の棒へと走り出していた。


(よし掴んだ!)

 そして俺は狙いを定めた真ん中の棒を掴み、

「これは俺のもんだー!!」

 そう一気に引っ張ったが、

「待てー!これは渡さん!」

 急に反対側へと引っ張られ、俺が顔を上げるとそこには睨みを利かせた4人もの相手が立っていた。

(さすがど真ん中、大将戦ってことか……)

 対する俺は1人。どうするべきか弱気になっていた時、

「久保、まさか弱気になってないでしょうね」

「夏美!」

「俺も加勢するわ」「俺も」

「お前ら!」

 遅れて夏美、桐嶋、麻倉が助っ人として来てくれた。

 よし、これでこっちも4人。

 4対4のハンデなし勝負ダァ!!

「この勝負、勝つぞー」

「「「おー!!」」」

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