解放 2
よろしくお願いいたします。
「おい!! そこの馬車! 止まれ!!」
何だろう?
外の方が騒がしくなってきたみたい。
馬の蹄の音が複数聞こえるし、人の声も聞こえるけど?
あ? 馬車が止まった?
「おい、国境警備の兵隊だ」
馭者台に座る男が極力小声で馬車の中にいる男に伝えて来た。
国境警備兵?
つまり国の兵隊ってことよね?
もしかして!!
私、助かるんじゃない?!
私みたいな女性を生贄にして怪物と契約している様なやつらだもの。
そんな悪党なら国の兵隊に捕まるはず。
そうしたら私は解放されるはずよ!
「そのガキを隠しとけ。従魔契約に人の血肉が必要なんてこいつらに言ってないからな」
馭者台の男が小声で指示すると、目の前の男は大きく頷くと、私を大きな布袋を被せ押し込もうとしてきた。
だけど、私を怖がっているのか手が震えて上手く体を持ち上げられないのでなかなか入らないのだけどそのせいで・・・
あ! こら! どこ触ってるのよ!! 変態!!
バカ! 胸をそんなの強く掴むな!
・・・・・あれ? 男の手の感触が変?
柔らかく大きな胸を掴まれているというより、胸のあばらを掴まれている気がする・・
私の胸、無くなった?
あ、私は今、子供だった・・・・うう、私の胸ぇええええ!!
「お待ちください! 兵隊様! 私どもはこの先のロドン村の者でございます。今日は街からの買い出しで買える途中でして早く帰らないと傷みやすい物もございますのでご勘弁を願いたいのですが・・」
馬車の中で悪戦苦闘する男をほっとき、馭者台に座る男は馬車から降りて兵隊の誰かに話しかけてるようだけど?
「そうか、お前はあのロドンの村の者か。あの危険魔獣を飼い馴らす者達だったな」
「は、はい。そうでございます」
「それは丁度良かった」
「? と申しますと?」
「俺達も王国の使者としてお前達の村に向かっていたところなんだ」
「そうでしたか? それでどのようなご用件で?」
「ん? ああ、良い知らせだ」
「はい?」
「お前達、従魔士の力が必要なくなったからだ」
「え? 今、なんと申されましたか?」
「良く聞け、この度我がルガニア王国の技術開発部が従属の印なる魔導具を開発したのだ。これがあれば従魔士の術は必要なくなり、人の血を定期的に注ぐ事で生きる物全てを服従させる事が出来るようになったのだ!」
「え? ちょ、ちょっとお待ちください!! それはどう言う事です?!」
「やはり下賤の者か。私の言っている事が分からないのか? ではもう一度言う。もうお前達は必要ない。死ね」
「? ぎゃあああああああああああ!!!」
な、何!?
男の悲鳴?
外で何が起こっているって言うの?
部分的にしか聞き取れなかったけど、王国・・ルガニア王国だっけ? その兵隊が従属の印? の魔導具の開発に成功だとか・・・従魔士が必要なくなったとか・・・それに男に向かって死ねって・・・
じゃあ今の悲鳴はあの御者台に居た男の悲鳴・・・・殺されたってこと?
「ゴト、ガタン!」
荷馬車が揺れた。
誰かが昇って来た・・・
「お、ここにも一人居やがる・・ん? ガキ? そうか奴隷か。こいつらの血肉で従魔の契約をしていたのか、報告どおりだな」
「な、何故その事を!!」
私を見て怖がっていた男が立ち上がり馬車の荷台に上がって来た兵士に向かって吠える。
「ん? もう震えてやがる。危険魔獣を従える従魔士と言っても魔獣が居なきゃダダの人という事だな。じゃあお前も死にな!」
そう言ったと思った瞬間、兵隊が手に持っていた長剣が男に向かって振り下ろすのが見えた。
「ザッシュ!!!」
「ぐぅ!? ぎゃああああああ!!」
悲鳴と共に男の体から大量の血が噴き出す。
それは大きく弧を描き、私の上に降り注いだ。
「?!! ひ、人の血・・・・・あれ?」
「ん? このガキ死んでたか思ったらまだ生きてやがったか・・・・女? ふふ丁度良い。おい! お前ら! まだガキだが奴隷の女が居るぞ!!」
そう兵隊の男が大声を上げた。
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