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気づいたら生贄 5

読んでいただければ幸いです。

「ホー、ホー」

「ケケケケエケ!!」

「グゥオオオオオ!」


はあ~、相変わらず獣や鳥の鳴き声には事欠かない場所だわ。

私は、あれから・・・えっとそのわ、私のし、失禁で怪物が逃げだしたという屈辱を味わったあの晩から5回目の夜をむかえていた。

もちろん、あの状態のままよ。

手足は鎖で大地に張り付けされたまま。

大の字のまま森の何処かに放置されたままなの!

さすがにお腹が空いた。

一昨日、結構な雨が降ったおかげで水分補給はなんとかなったけど、食べ物はさすがに空から降っては来ないもの。

ただ、良かったのはあれ以来私に近づく獣や怪物は一切なかったこと。

動かない死にかけ人間を食べない肉食獣がいない訳がないのだろうけど、何故か一匹も一頭も現れなかった。

やっぱり私のあれが魔除けになってるのかしら?

・・・・・・・・・あ~! 思い出しただけで恥ずかし!!

あ、また怒りがこみ上げてきたわ!


「グゥゥウウウウ・・」


お腹の虫が・・・お腹、空いた・・・・・・・・

ダメ、怒ると余計に空腹感が増す。

それに何故か意識はハッキリしているので思考能力は低下していないのよね?

だからと言って体力や空腹感は襲ってくるから余計にたちが悪い。

まずいわ。

本当にまずいわ!

このままじゃ自分が日干し人間になるのを観察しなくちゃいけなくなるじゃない!

せっかく怪物の脅威から逃れたと言うのにこれじゃあ何の意味もないわ!

駄目もとよ! 

もう一度大声で助けを呼ぶ!


「・・だ・だれか・・・た・・すけ・て・・・よ」


声が出ない。

お腹に力が入らなくて大声を張り上げる事ができない・・・・・・

瞳から一滴の涙が零れ落ちる・・・これだけ?

号泣しているつもりなのに涙も出ない。

もう体の水分も殆ど底をついているんだわ。

体の中の血液がドロドロになっているのが感じる。

やっぱりもう駄目かな?


「ガサ、ガサ」


その時だった。

あの時と同じ様に草叢の方から音がした。

これ、風とかじゃない。

物体が動いた時に生じる草同士が擦れる音。

そして草や落ち葉を踏みしめる音。


ま、また怪物?

思考能力が低下した頭をフル回転させて数日前の出来事を思いだした。


でもこの音・・足音・・しかもそれほど重くなさそう・・・人間?!


「さて、生贄の奴隷嬢ちゃんはきれいに食べられただろうな」


声がした。

それは間違いなく人の男性の声だ。

た、助かる!!


「「おい! あれを見ろ! まだ食べられてないぞ!?」

「何だって!?」

「魔獣ケルベロスが食べなかったのか?」

「どうする!?」

「どうするも、こうするも早く村に帰って村長に報告しなければ!」

「そ、そうだな。ケルベロスが暴れ出したら俺達の村なんか直ぐに全滅しちまう」

「ああ、ケルベロスとの従魔契約を維持する為には人の血肉が必要なんだ。その為に毎年の生贄として奴隷を買ってるんだがこんなのは初めてだ」

「ああ、まさかケルベロスが食わない人間がいるとは」

「とにかく、別の奴隷を用意する必要がある。その為には村長と話す必要もあるしな」

「ああ、まったく高い金払って奴隷を買ったというのに、とんだ役立たずを買わされてしまった」


なに?

この男達。

私の事を見て奴隷だ生贄だとか言い合ってる。

やっぱり私は生贄にされたんだ。

しかも元々は奴隷?

なんとも、転生したら奴隷で生贄にされました、とか言うの?

冗談みたいな物語じゃない。


私はケルベロスが逃げてから一人っきりになって時間が腐る程できたので、色々と今現在自分の起こっている事を整理していた。

で、結論から言えば、前世の記憶を持ったままこの異世界に転生した女の子だった。

女の子というのは、この体が私の前世の記憶より相当小さかったから。

どう見ても6歳くらいの体だった。

まあ、成長過程での栄養不足が原因で実年齢より小さいのかもしれないけど、それでもこの体から推測できる年齢はやっぱり6歳くらいにしか思えなかった。

それにあのケルベロスみたいな獣。

あんなの日本に居る訳がない、それどころか世界中探したって居ないわよ。

そして今、二人の男性が話している内容から考えても、ここは異世界なのだと確信した。

読んでいただきありがとうございます。

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