新たな仲間 1
よろしくお願いします。
「バートリー・・様? もしや魔人族の王族であられる・・」
「ケルちゃんが言うには、そうらしいわ。私にはその辺りの記憶がハッキリ思い出せないんだけどね」
「間違いありません!! 姫様の血を与えられた我ら魔獣には分かります!」
ケルちゃんがここまでハッキリ言うのだからそうなんだろうけどね。
「ば、ばかな・・フェンリルが言葉を・・・・フェンリル! 私の言葉に従え!」
ロドンの者が声を荒げフェンリルに命令するけど完全にシカトしている。
「夢の様です・・・本当に・・本当に姫様なのですね」
「えっと・・・そうみたい」
「良かった・・・本当に・・・人族に裏切られ悪魔にその血を途絶えさせられたと思っていた魔人族の王家の血を持つ姫とこうしてお会いできるとは・・・人に操られ無意味に生きながらえたことは恥でしかありませんでしたが、最初で最後の人族への感謝を言いたいですぞ!」
感極まってボロボロと涙を流すフェンリル。
けど守護獣って言ってたよね?
「ケルちゃん、フェンリルも守護獣なの?」
「そうです。魔人族の王家を守護する四大守護獣の一尾ですね」
そうなんだ。
「フェンリル!! 私の言う事が分からないのか?!」
あ、ロドンの者がまだ叫んでる。
いい加減しつこいわね。
「ねぇ、フェンリルはもうロドンの者の言う事は聞かないって。諦めなさい」
「バカな・・・・そんな事が本当に・・・・お前は魔人族なのか?」
「そうらしいわ」
「間違いない! この見ただけで王族の気品が滲み出ているのが分からんか!」
「所詮、下賤な人族なのだな。この神々しいまでの輝きを放つお方が他におられるか!」
ケルちゃんとフェンリルが揃って私の事を持ち上げる。
けど、そこまで言われるとちょっと恥ずかしいよ。このままではケルちゃん達が何を言い出すか分からないので早くけりを付けてしまおう。
「じゃあ、死んでちょうだい。あなた達が生きていても毒にしかならないから」
「ま、待て! 私達は王国の兵士達に操られておっただけだ!」
「それは今の話でしょ? 私を生贄にしたのは関係ない話だわ」
「奴隷? お、お前はあの生贄奴隷なのか?!」
今頃分かったの?
ちょっとショックだわ。
「子供の血肉を捧げないと使役出来ない従魔の力なんて私が無くしてあげる」
「待て! 待ってくれ! 本当に申し訳なかった! でもこうしないと私共の者の誰かが生贄にならなければいけなかったのだ!」
バカだなこいつ。
「そんなの言い訳にもならないわよ。生贄が嫌なら従魔士を止めて他の職業に就けば良いじゃない。守る術のない子供を殺してまでしなくちゃいけない道理はないわ!」
私は右手を上げるとフェンリルに視線を送った。
するとフェンリルが小さく頷き返してくれた。
「もう分った。あなた達がろくでもない者だという事が・・・・フェンリル」
私は右手を振り下ろ・・・
「待って!!」
私は姫様の叫び声でその右手を止めた。
「何? 姫さん?」
「待って・・・そんな簡単に人を殺そうとしないで」
「人ねぇ・・・私には悪魔に見えるよ?」
「・・・そうかもしれない。でも魔人族とは言ってもまだ幼いあなたが人を簡単に殺してしまうのは間違っているわ」
幼くはないけどね。
「大人なら殺しても良いの?」
「?! そ、そういう訳じゃないけど・・・でも!」
「はっ! 私をみくびるな!!」
ロドンの者が私の背後から抱き着いて来ると喉元に短剣を突き付けてきた。
「エリゼちゃん!!」
姫様が叫ぶとその姿に気を良くしたのかロドンの者の顔に笑みが漏れた。
まるで勝ったみたいね。
「フェンリル!! このガキを殺されたくなければ、この王女殿下を殺せ!!」
ああ~あ、まったく反省する気も無い様ね。
「無理よ。ケルベロスもフェンリルも動かないわよ?」
「くそ!このガキが死んでも良いのか?!!」
「無理だって言ってるでしょ」
私はロドンの者にそう言ってから突き付けられた短剣を私の右手で掴んだやった。
「な、何を?!」
当然、掌から血が流れ出す・・・がそれは地に落ちずそのまま短剣を飲み込み真っ赤に染め上げた。
「ひっ?!」
ロドンの者が変な悲鳴をあげると持っていた短剣を放り出した。
短剣は地に落ちると直ぐに白い煙が立ち昇り始めた。
そしてシューッと言う音と共に短剣はボロボロに砕け散った。
「ケルちゃん、フェンリル、もう良いわよ。終わらせよう」
「はい!」
「分かり申した!!」
そしてものの十数秒で私は多くの血を浴び、真っ赤に体を染めていた。
ありがとうございました。