阻止 4
投稿いたしました。
やっぱり真面に終わるわけないのよね。
「王宮より全貴族、前部隊に通達が出ております。フォルテ第一王女殿下は精神崩壊の病に侵され乱心状態でありとても危険な状態だと。現在王宮を飛び出し各地で被害報告が出されている上に殺傷された者も出ている為、見つけ次第拘束し王宮へ連れ戻す事。もし抵抗し危険と判断された場合は、生きているのであればどんな状態であっても構わないと」
「馬鹿な!!! 王女殿下が乱心など根も葉もない言いがかりだ!」
ロッティさんの怒りの言葉に兵隊達は誰一人として反応しない。
それどころかニヤニヤと嫌な笑みを私達三人に向けだしていた。
ここでも・・・・
この国の男共はそれしか頭にないの?
「王宮からの命という事は国王が出された命という事か?」
目に涙を溜めながらもそれを流すことは無く、気丈に隊長に対して聞き返す姫さん。
「王家の紋章印の付いた命令書でしたな」
その言葉を聞いた瞬間、止まっていた涙が一気にあふれ出したフォルテ王女。
でも相手を睨み続ける事は止めていない。
けど、国王って姫さんの実の父親なんだろうけど、その父親に生きていればどんな状態でもって、つまり、抵抗しない様に四肢を切り落としても、男共に好きにされようともと言う事よね?
そんな事言われる娘の気持ちなんて想像しがたい程ショックだろうに、この姫さん気丈に相手の目をそらさず睨み続けている。
私、この姫さん嫌いじゃないわ。
「さて、王女殿下、勝ち目はございませんので投降していただきましょうか?」
勝ち誇ったと思った隊長は貴族の真似事の様に優雅に手を胸に当てお辞儀をする。
う~んでも素人の私が見てもぎこちないし、綺麗じゃない。
「そこまでするのですか・・・お父様。娘である私を・・・・・気がふれた犯罪人だと言われるのですか・・・」
「お分かりになられましたかな? どうにもならない事を」
強者のつもりなのだろうか。
絶対的有利での余裕の言葉なのだろうけど・・・
「ロドンの者! フェンリルとケルベロスでこの者達の手足を捥ぎ取れ!」
隊長の言葉で後ろに控えていた魔法士の一人が何やらブツブツと呟くとロドンの村の一人が手を前に突き出し呪文を唱える。
「グァアアアオオオオオ!!」
それに合わせフェンリルの咆哮が空気を揺るがす。
「行け!!」
「ガァアア!!? ア!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・どうした? 何故行かない?!」
襲い掛かれと命令したが、一声鳴いた後いっこうに動かない事を不思議に思ったのだろう隊長。
「どうした! 行け!! 何故行か・・・い?!! な、何をしている!!」
驚くのも無理ないのか?
まあ、自分の指揮下にあると思っていたケルベロスがいきなりフェンリルの喉元に食らいついているのだから。
「ケルちゃん任せて大丈夫?」
『はい、大丈夫です! ちょっとこの聞き分けの無いフェンリルをボコボコにしてきますので』
『そう? 手加減してあげなさいね?』
『はっ! では姫様にはこちらの剣をお使いください』
そう言ってケルちゃんが何処からか取り出した大振りの剣を私へ渡してくれた。
『どこから出したのよ!?』
『はい、姫様の聖水を浴びてから色々なスキルが発現し始めておりまして、空間魔法の習得も出来ておりました。なので目ぼしい物は異次空間に放り込んでおいたのです♪』
褒めて褒めてと言わんばかりに尻尾を振るケルちゃん。
『分かった、分かったちゃんと偉いね』
『ウォン!!』
鳴き声まで念話で送るな!
で、その鳴き声と共にケルちゃんはフェンリルの首根っこに噛みついたままダッと駆け出して直ぐに見えなくなってしまった。
「どういう事だ!! 魔法士! なんだこれは!?」
「は、はい! しかし何も問題は・・・」
「ではロドンの従魔士の問題か?!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
答える訳がなかった。
自分達が従魔の印で完全支配をしているのだ。
自分達の考えを言える訳がない。
「勝ち誇ってたわりにはあっけなく瓦解したわね」
「はあ? なんだお前は? 王女の小間使いか何かか? そんな者が口を出すな!」
あ、いきなりこいつ失礼な言い方するじゃない。
今までは姫さん達の事があって口出ししなかっただけなのに、こいつに慈悲は必要ないわ。
読んでいただきありがとうございます。




