阻止 1
よろしくお願いいたします!
「この先に国境警備隊が常駐している町があるわ。そこにロドンの村の人間も居るはずよ」
今、私は姫さん・・えっとフォルテ王女さんと国境の方に向かっていた。
もちろん従者のお姉さん、えっとロッティさんも一緒だ。
彼女達は馬を操り街へ続く小さな街道を全速力で駆け抜けている。
けどこれで全速力?
「姫様、この者達遅すぎます」
やっぱり?
最近ケルベロスに乗って移動していたから気付かなかったけど、馬のスピードってケルベロスに比べて遅すぎるみたい。
「ご、ごめんなさい。災害級魔獣のケルベロスさんに比べれば軍馬では太刀打ちできません」
だそうだ。
ケルちゃんやるじゃない。
「は、ありがとうございます」
嬉しそうにしちゃって。
でも、
『これって念話?』
『はい、姫様の血のせいでしょうか? いくら主従契約をしていても普通は念話なんてできませんから』
『そうなんだ。ま、便利だから良いんじゃない?』
『はい! わたしも姫様との繋がりを強く感じられて嬉しいです!」
可愛いこといいやがってこの~♪
「おい、エリゼ・・・さん。本当に協力してくれるのか?」
従者のお姉さんが私達に並走しながら聞いてきた。
でも、まだ私達の事を警戒しているみたいで、時々口調が怖いのよね。
実際、こんな見た目子供がケルベロスを従えている時点で怪しいだろうし、魔人族と言う事は隠しているからね。
不審者でしかないだろうけど、フォルテ王女さんが今のところは敵じゃないと私の事を信じてくれたのでロッティさんも渋々了解はしたようだ。
あ。こっちを睨んでる。
納得はしてないぞ! と目で訴えかけてる。
「一応ね。フォルテ王女さんの国の兵隊を使ってロドンの村の人間を従魔の印で支配させ、国境に接しているエルフの国への侵攻作戦の阻止には協力するわよ」
そう、従魔の印というのは魔獣に対して従魔士でなくても従える事ができる魔導具なのだけど、それを人間に使用すると言うのがフォルテ王女さんとこの王様が考えたらしい。
ただ私も今のところ奴隷のままの状態なので、奴隷印というものがお腹の所に刻まれている。
これは主人に逆らった時に体の動きを封じ、激痛を与えるだけのしろものらしいのだけど、従魔の印は完全掌握できるらしい。
つまり主人の命令は絶対で、息をするなと言えば本当にしなくなり殺す事も可能だという強い拘束印だという。
まあ、それくらい強くないと強力な魔獣を従える事は出来ないのだろうけどね。
で、それをロドンの村の人間に使えば従魔士を操れると言うことで、魔獣ももれなく付いて来るという事らしい。
何かのテレフォンショッピングかっての。
そんな無駄なと思ったけど、どうも魔獣を従魔の印で拘束はできるようだけど、細かい命令はやはり従魔士でないと出来ないという事が分ったのでロドンの村の人間を捕まえる事にしたらしい。
人間って悪魔より怖い一族なんじゃない?
まあ私も前世は人間だったけど・・ちょっと腹立つわ。
なので、そんなアホな国王の野望を阻止してやろうと姫さん達に協力する事にしたのだけど・・・
「協力はするわ。でもロドンの村の人間を生かしておくかどうかは保証しないわよ? 一応私は被害者であいつらは加害者なんだからね」
「ええ、分かっています。私も最初はロドンの人間は国を守る優秀な従魔士としての認識が無かったから。でもその従魔契約の為に人の血肉、しかも奴隷を買って与えていたなんて罪を犯しているとは知らなかったから・・・」
「王女殿下、こやつが本当の事を言っているとは限りません」
やっぱりロッティさんはまだ私を疑っているみたい。
それぐらい注意深い方が良いけどね。
フォルテ王女さんはちょっとお人好しっぽいから。
「姫様、向こうに大勢の人の気配を感じます」
ケルちゃんが教えてくれた。
「王女さん、あっちに人が集まっているみたい」
私が指さすと彼女達もその方向に目を向けた。
「確かに、人の魔力を複数感じます。これは従魔の者もいるようです」
ロッティさんが補足してくれた。
この人、結構探知能力高いわね。
でもどうして私達は分からなかったのかしら?
『それだけ姫様の能力が高いという事でしょう♪』
ケルちゃんが嬉しそうに答えるからそう言うことにしておきましょう。
「向かいましょう。侵攻準備をしているのかもしれませんから」
王女さんの言葉にロッティさんも頷く。
私も小さく頷いてケルちゃんにも伝える。
私達は、駆けるのを止めゆっくりとその方向へ忍び寄る事にした。
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