動き出す 6
続きをどうぞ!
「本当にごめんなさい」
姫さんは膝を付いたまま私にもう一度頭を下げた。
けど、その事が気にくわないのか従者のお姉さんは私の方を睨みつけて来る。
別に私が頼んだわけじゃないのよ? と言おうかと思ったけど拗れそうだから言わない事にした。
「姫さんが謝っても私の心の傷は癒えないのよ? 分かってる?」
けど拗れそうだから言ってもやっぱり恐怖は感じたのだし気持ち悪い体験はさせられたので、ちょっと虐めたくなってつい言ってしまった。
まあ殺されるよりはマシでしょ?
「本当にごめんなさい!! 私の国のしかも民を守る兵がこんな子供を襲うなんてあるまじきこと。私の全てを掛けてでもあなたに謝罪したい!」
そして両手を地に付け頭を深々と下げられる姫さん。
その行動に従者のお姉さんも渋々だが追随するように頭を下げて来た。
これって土下座ってやつよね?
さすがに主人が頭を下げているのに従者がしない訳にもいかないのだろうけど・・・そんなに睨まないでよ。
「まあ、その事についてはまた話し合いましょう。でこの村に来た目的を教えて?」
そう私が切り出すと姫様は少し頭を持ち上げ私をジーっと見て来た。
「それは国家機密よ。簡単に教えられることじゃないわ」
「無礼な! 姫様が教えろと言っておられるのだ! さっさと答えんか!」
「姫様? あなたもどこかの王族なの? でもそんなあなたがどうしてこんな所に? それにその姿は・・あ、その、ごめんなさい!」
何か色々察したようだけど・・・
「その事はどうでも良いの。国家機密って何? まさかあの従属の印とか言う魔導具絡み?」
「何故それをお前が知っている!!!」
私の言葉に従者のお姉さんが体を起こし片膝の状態で剣の鞘に手を掛けた。
姫さんが手を横にして止めなかったら斬りかかってきてなかったこのお姉さん?
でもちょっと胆略思考ね。
「お姉さん、そんな単純に感情を表して良いの? その魔導具が国家機密だと認めている様なものよ?」
「あ! す、すみません!! 殿下!」
何度もブンブンと頭を下げ続ける従者のお姉さん。
それを困り顔で宥めている姫さん。
この姫さんも苦労しているのね。
「お姉さん方、私をほっといて遊んでないの。ケルベロス出して」
「はっ!」
ケルベロスの一つの首が何やらブツブツと言っていたかと思うと空間に人の頭大の魔法陣が浮かび上がりそこから例の魔導具が飛び出してきた。
それがお姉さん達の前に転がると、一瞬で身を固めてそれを見つめていた。
「あなたを襲った兵隊が持っていたという事ね」
「そう、でその兵隊がこの魔導具があればロドンの者は必要ないと言って殺したのよ」
「・・・・・そういう事だったのね。でもあなたは?」
「私はこのロドンの村の者が契約している従魔の生贄として買われた奴隷だったのよ」
「奴隷だと? そんなはずは無い! 奴隷には年齢制限が国際条約で守られているのだぞ! お前みたいな子供は保護されるはずだ!」
従者のお姉さんがそう言われるけどね・・・
「事実はこうよ。私は奴隷としてこの村に買われ、そのケルベロスの餌にされるところだったのよ。なんでも従魔の契約には人の血肉が必要なのだそうよ。つまりこれからもこの村の人間は私みたいに奴隷を買っては生贄にし続けると思ってね。そんなの許されない事を教える為にやってきたんだけど・・・」
「まさか、あなたがこの村の住人を・・・」
「私が来た時にはもうこんな感じだったわよ。一応調べたけどこの奥の村長宅かな? そこに数人の死体はあったわよ。もちろん私がやった訳じゃないわよ? で、それ以外で人は一人も見つけられなかったわ」
一応簡単に説明してあげた。
「今度はお姉さん達の事を教えて。内容によっては殺すからね?」
おお、なんだか私って悪役が似合ってきたかも。
まあ色んな経験をこの2日ほどでしたもの。
性格が歪んでもしかたないわよ。
「私達は・・・」
姫さんが口を開いて話し出した。
「私達はその兵達、いえ、私の父の所業を止めるべくこの地にやって来たの」
あ、なんだかもっとややこしくなるパターンじゃないでしょうね?
一抹の不安を抱えながらお姉さん達の話を一応聞き事にした。
また来てください。




