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動き出す 1

よろしくお願いします!

「ん・・・んん・・母様・・・・・・・・・あれ?」


夢?

私・・・寝てた? それに今、私何か言わなかった?

・・・・・・良く思い出せないけど、でも物凄く大切な夢だった様な気がする。

たぶん私のこの世界での過去の夢だろうと思うのだけど・・・・


「・あ、涙・・・・・」


自分の頬に手をやると濡れていた。

泣いていたのかしら? 

そんなに悲しい夢だった?

ん~ん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうしても思い出せない。

でも、夢で見たという事は何時かは思いだすかもしれないわね。

だったら焦らないで思い出して行けば良いし、先ずはこれからの事を考えよう。

それにしてもいつの間に寝ていたのかしら?

ケルベロスのモフモフが睡魔を呼び寄せたのかな?

この世界での記憶が殆ど無いから、分からないけど分かっている状況から考えれば、相当苦しい生活をして来たはず。

だからこうして安心して横になったので、すぐ寝てしまったのかも。

もう一度ケルベロスの毛並みに顔を埋めて堪能する。


「気持ち良い~♪」


暫くモフモフを堪能したあと、辺りを見ると・・


「まだ暗いわね。ケルベロスもまだ寝ているみたい」


三つの頭が器用に重なり合ってぐっすりと寝ていた。

でもこんなにぐっすり寝ていたら、何かあった時に動けなくなるんじゃない?

ちょっとそんな心配をしてみたけど、この魔獣は居るだけで大抵の獣は近づかないのかもね。


「さて、どうしようか? もう一度寝る?」


自分に自問してみたけど、あまり眠くないのでケルベロスから聞いた話をもう一度確認してみる事にした。


私は今は滅んだ魔人族の国バートリー王国の王女だったみたい。

転生物の定番、姫様転生だったのになんで生贄から始まるのかしら?

それは取り敢えず置いといて、その魔人族の国バートリー王国は滅亡したらしい。

なんでも悪魔族と人類連合が戦争をしていて、その連合の一員だった魔人族が悪魔に寝返ってたらしい。

けれどその企みは失敗。

悪魔族からもその責任を追及され、人類側からも敵国として攻められ滅亡。

国王、私のこの世界でのお父さんは亡くなり、王妃、私のこの世界での母さんと姫、つまり私らしいけど行方不明になったという事。

そして悪魔族も次第にその勢力を弱め、50年前に停戦協定が締結されたらしい。

つまり、今は戦争の無い平和な時代というわけだけど・・・・そんな事はない。

私みたいな奴隷もいるし生贄なんて時代錯誤・・あくまで前世の日本でだけど、的な制度も残っている。

どう考えても平和じゃない。


「まあ、魔法もあればこのケルベロスみたいな魔獣もいるわけだもの。日本と同じに考えるのは無理でしょうね」


とにかく分かっている事は生きるのに、命のやり取りが身近だって事。

そして私の立場はあまり良い境遇ではない。

いえ、むしろ血祭りにあげられても仕方がない状況よね?


「人類連合の敵! だもの。それにこれはケルベロスが相当に怒っていたけど、私は実はバートリー王の娘ではなく王妃が悪魔に連れ去られ妾となって生まれた子供だという噂があるらしい」


ただ、これは守護獣であるケルベロスが完全否定していた。私が産まれる時、王城警備でケルベロスを始めとする守護獣達も集まっていてその出産を間近で感じていたということ。


「姫様が産まれた時に感じたあれは、間違いなく王族の覇気でした!」


と嬉しそうに言ってた。

その嬉しそうな姿を見ていたら嘘は言ってないと思えたもの。

それにその覇気が今の私からも感じられたのも私が姫だと確信する要因の一つだったみたい。

でも、ここまで聞いた限りでは私のこの世界の両親は人類側にはめられて殺されたらしい。

ケルベロスも言っていたけど、バートリー王も王妃も実直な方で人類連合を裏切って悪魔側に付くなど考えられないと言うことらしい。

私のこの世界での記憶は、生け贄から始まっていてそれ以前の事が思い出せない。

だからケルベロスの話が本当かどうかは判断できない。

けど、私にした仕打ちは確かに人族だったしそれならば人族の悪に対して反発するのは道理でしょう。

なので当面は今の人類連合の国々がどうなっているか。

あと、できれば母さんを生きているのなら探しだしたい。

記憶がありわけじゃあないけど、探してあげないと可哀想だしね。


あと聞いた事は・・・・


「ケルベロス! あんた私を食おうとしていたでしょ!?」

「それは本当に申し訳ございません!!」

「どう言う事か説明しなさい!」

「は! 実はバートリー王国が滅亡し国王が亡くなられた事で私共守護獣は、その主従契約が消えてしまい野生化してしまったのです」

「野生化?」

「はい、獣落ちと言いますが、ただの獣になったのです」

「・・・・・・・どう見ても今もただの猛獣だよね?」

「あ、言い方がおかしいでしょうか? え~と理性が無くなり秩序が保てなくなるという事でしょうか。つまり狂暴化するという事です」


そんな事あっさり言うな!


「狂暴化した私は冒険者や騎士達の駆除対象となり、幾度の戦いで繰り広げました。そしてかなりの手傷を負った時に従魔士の一族が私を捕らえそれ以来私は従魔として生かされ続けました。けれど従魔契約は維持するのに人の血が定期的に必要だったようで」

「それで、生贄を食べたと?」

「はい・・・・い、いえ! 私の意思では!」

「分っているわよ。でもそうしたら何故私を食わなかったの?」

「あ、はい! それは姫様に近づいた時、姫様が出しておられた魔聖水に触れ久方ぶりに王族の恐怖を感じたのです。それと共に従魔士共が掛けていた従魔の契約印が消滅した事で守護獣としての役目に再び目覚め今に至ります。あ、ただその恐怖には王族とそれ以外の禍々しい恐怖も感じましたが姫様の人族と悪魔族へのお怨みの力が強かったのでしょう」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ん? 姫様どうかされました? 急に黙ってしまわれて?」

「・・・・・・・・・・・魔聖水・・・・・・・・・」

「え? ああ! あれは素晴らしものでした。王族の匂いと力を感じるものでしたので、勝手に魔聖水と読ませていただいております」

「忘れろ・・・・」

「姫様今、なんと?」

「忘れてと言ってる」

「何をでございます?」

「だから! ま、ま、魔聖水の事よ!!」

「おお! あれはもの凄く良い香りが・・」

「だから忘れて!!!」

「は! はい?」


何故怒られるのかわからないケルベロスだった。

またお越しください。

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