過去・呪われた血 4
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その瞬間、悪魔を中心に膨大な魔力が一瞬で集まり光の球体を作り出した。
それは一瞬だった。
その光は一気に膨張し王妃達全てを飲み込んだ。
「?!!! エリゼ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふむ、皆死にましたか・・・ん?」
悪魔は在る一点に注視しいた。
そこには横たわる王妃の姿があった。
「ほう、これで生きているとは・・・王妃の魔法力も凄まじいものだったようですね」
悪魔は微かに息のある王妃の前に立つとその下で蠢くものを見つけ拾い上げた。
「・・・これは、これは、王女様でしたか・・・・」
拾い上げられたのは王妃である母親の傍に居た王女エリゼだった。
「ほぼ無傷ですね。王妃に守られたとはいえ運がよろしいようですね」
「あ、ああ、悪魔・・・・」
片手で軽々と持ち上げられたエリゼはただ恐怖に呑み込まれない様にするのが精一杯だった。
それでも幼い彼女が泣かずに悪魔から目を逸らさないのは王族の血を引くからだろうか。
「エ・リ・ゼ・・だけ・・は・・・・・・」
「ほう、まだ喋れるのですね・・・・」
身動きできず息するのさえ難しい程の王妃であったが我が娘の危機に何んとか声を絞り出す。
その状況を楽しんでいるのか、口端に笑みが見える悪魔イブル・アール。
「王女よ、助かりたいですか?」
何を思ったか悪魔は震えながらも泣かずにいるエリゼに質問をしてきた。
だが、エリゼは首を縦に振らずにただじっと、悪魔を睨みつける。
「では、王妃を助けたいですか?」
その質問にエリゼは即答した。
「母様を助けて・・」
「はは、良い娘ですな王妃」
悪魔はエリゼを見る。
自分が映るその瞳の奥にある力強い意思を知ろうとするように見続ける。
「このまま殺してしまうのは勿体ないかもしれませんね・・・・・・ そうです! 面白い事を思い付きました。王女に私の血を差し上げましょう。実験です」
そう言って悪魔イブル・アールはエリゼを床に置くとその小さな胸の真ん中に自分に人差し指の先を付けた。
「悪魔族の血が他種族に入るとそれは見るに耐えない異物に代わり果ててしまうのです。ただ中には異形の物に変わっても意識を保つ者も居ます。その方が残酷かもしれませんがね」
王妃の方を向く悪魔。
その体が時々ビクビクと動く。
どうやら悪魔の言葉に反応している様だ。
「ただ魔人族にはまだ血をあげた事はないのですよ。さて王女、あなたはどうなるでしょうか?」
「や、やめ・・・・・・て」
王妃の言葉が聞こえる。
「王女、どうします? 私の血を受け入れれば王妃を助けても良いですよ?」
悪魔の申し出にエリゼは黙ったままだ。
「どうします? 止めますか?」
「本当に母様を助けてくれるの?」
「約束します。そしてもしあなたが私の血を克服し理性を保ち異形の者とならなかったなら、人族への復讐に力を貸しますよ。どうですか?」
「どうして?」
「それは、人族側に手を貸した私が、どうして人族への復讐を手伝うかということですか?」
エリゼは大きく頷く。
「悪魔は気まぐれですから、それに魔人族は魔法に長け脅威となると思ったので、今回人族の話に乗りましたが、どのみち人族も滅ぼそうと思っておりましたから」
悪魔らしい答えだったが幼いエリゼには良く理解できなかった。
でも、今、自分に選択できるものは他に無いという事だけは分かっていた。
「悪魔イブル・アール、あなたの血を私に」
「良いでしょう。契約は成立しました。悪魔の呪われた血を与えましょう。楽しみにしていますよ」
イブル・アールの言葉にはどこか期待に満ちている様だった。
ありがとうございましあす。