過去・呪われた血 3
よろしくお願いします。
「きゃあああああ!!」
「何事です!?」
突然の爆発音の後、城内を揺るがす振動。
城内に居る全ての者が経験したことがない事態に、皆が恐怖に怯えるのは当たり前の事だ。
「落ち着くのです! 誇り高き魔人族がこの程度の事で狼狽えるとは何事です!」
皆が震え恐怖する中、ただ一人毅然とした態度で指示する女性が居た。
「まず、怪我人が居ないか確認! あと爆発と思われる原因の確認! それと同時に国王陛下の安否の確認もお願い!」
女性は傍に仕える者に的確な指示を出す。
「「はっ! ファリア王妃様!」」
一斉にファリア王妃と呼ばれた女性の指示に従う事で一時的にパニックになりかけていた城内に居る人々が平静を取り戻し、各々が責務を果たそうと動き出した。
「母様、何かあったの?」
その王妃の直ぐ隣で、王妃のスカートをつかむ幼い女の子が居た。
「大丈夫よ、エリゼ。あなたは心配せずに私の所にいなさい」
「はい。母様」
エリゼと呼ばれたその女の子は母親である王妃ファリアに良く似ているとても愛らしい方。
白銀の髪に、陶器の様に白く美しい肌は母親譲りだと誰も疑う者はいなかった。
ただ、色鮮やかな深紅の赤い目だけは魔人族の王族の中で誰一人として持っている者はいない特徴はあった。
「ファリア様! ファリア様!!」
するとファリア王妃が先程指示を出した内の一人の男性が、息を切らして部屋に飛び込んできた。
「礼も無しに大声を上げながら部屋に入って来るのは無礼ですよ」
「も、申し訳ありません!! しかし一大事ゆえ」
従者のただならぬ雰囲気に、さすがの王妃も不安を感じた。
「・・一体、何があったと言うのです?」
「そ、それが謁見の間のある辺りから爆発があり、かなりの死傷者が出ているようです」
「なんですって?! 謁見の間では今陛下を含め国の重臣が揃っていたはずでは?」
「はい、帝国からの使者との謁見ために集まっておられました」
「それで、陛下はご無事なのですか?」
「それが、火災が続き現場に近寄れない状況で・・・・」
「そんな・・・・・」
「心配しなくても良いぞ魔人よ。お前達の王は我に協力を求め帝国の使者を葬ったのだが、使者もこうなる覚悟をしていたようで、自分が殺されると爆炎魔法が発動するようになっておったようだ。あの爆炎術式は人間にしては良く出来ておったな。我でもまともに食らえば死んでいたやもしれぬ。そして直撃を喰らった者は皆死んだよ」
淡々と話す影。
ベランダの先、宙に浮く大きな翼を広げる禍々しい影。
「あ、悪魔・・・」
「お初にお目にかかる。バートリー国の王妃よ。我は悪魔族の重臣の一人、イブル・アールと申します。会って早々で申し訳ないが死んでいただく」
一方的に挨拶をし一方的に死の宣告をされ、呆気にとられる王妃だったが、直ぐに冷静さを取り戻し悪魔と相対し始めた。
「悪魔はこの王都には結界で侵入出来ないはず。どうしてそこに存在する? それに陛下が悪魔に協力? おかしな事を言われるのですね」
「そうか? まあそうであろうな。しかし簡単な事だ。この結界を潜る手引きをしてくれた者が居ると言うことだ。そしてバートリー王が我ら悪魔族と結託した事実を公表したい者がいると言うことだ」
「誰がそのような嘘を! 我ら魔人族は悪魔と結託などしていません!」
「そうだな」
あっさりと認めた悪魔イブル。
「どう言うことです?」
「分かるだろ? 帝国の使者が来たのだぞ?」
「まさか・・・帝国が?」
「と、言うことでこの事実を知った者は全て殺す事になっている。悪く思わんでくれ。これも国家の駆け引きだ。そなた達魔人族は人族からはあまり良く思われていなかったのだろう」
悪魔の言葉に次の言葉が出ない王妃。
帝国に裏切られたと言うの?
悪魔避けの結界具も、対悪魔魔法術を完成させ人族に提供したのも我ら魔人族よ。
「その高い魔法技術と魔法特性が人族にとって恐怖であったのじゃないか? まあ我らもそうだがな」
「心を読むの?」
「いやいや、そんな事は出来んよ。ただ帝国の連中がそう言っていたからなそんな事を思っているんじゃないかと、ま話はこれくらいにしよう。今ごろは帝国軍が反旗を翻したバートリー王国に侵攻しているだろうからな。私も姿を消さねばならん。なのでこれで死ね!」
どうでしたでしょうか?