過去・呪われた血 2
よろしくお願いします。
「ま、待ってくだされ」
初めに声をあげたのは宰相だった。
「一体どこからそのような根も葉もない話しが出たのです? しかもこちらに確認するでもなく一方的に断定されるとは?」
あまりの話しの内容に半信半疑の宰相の言葉はどこか力なく聞こえた。
「そうですぞ!! どんな証拠が有っての我が国が悪魔側にねがえったと言われるのですか!」
「そうだ! 証拠を見せてみろ!!」
「戯れ言だったでは済まされませんぞ!」
臣下の中からも使者への厳しい声が上がり始める。
それはどんどん加速し収拾がつかないほどの騒ぎとなっていく。
「静まれ!!」
国王の声が室内に響く。
決して建物を揺るがす程の大声量ではなかったが魔法が得意とする魔人族のその王たる魔力を込めた言葉は一瞬で臣下を落ち着かせた。
「さすが魔人族の王であられる。その魔力は人類にとって危険ですな」
「使者殿、改めて言う。我がバートリー王国は人類に反旗を翻すつもりは微塵もない。どうかこの事を皇帝陛下に伝えてはもらえないだろうか?」
「・・・・・・・・」
「もし、双方が戦争となれば悪魔族に付け入るチャンスを与えてしまう。それどころか帝国側も我々と戦えば少なくない犠牲ては済まされませんぞ?」
「・・・・左様ですか」
「頼む、今一度皇帝陛下に我々の潔白をお伝えくだされ」
「そうですな。魔人族と戦えば帝国など直ぐに滅びるやましれませんな」
「い、いやその様な事は申して・・」
「ガチャーンンン!!!」
その時だった、謁見の間に採光を取り入れるためのガラス張りの天窓が突然砕けた。
「何事!?」
王や宰相、臣下達も直ぐに気付き上を向いた。
「あ、悪魔・・・・何故ここに?」
王がぼそりと呟いた。
それだけあり得ない事が起こったからだ。
バートリー王国の王都には悪魔に対する結界が施されていたからだ。
中級までの悪魔ならその地に踏み入る事もできない。
上級や貴族級でも無傷では入れないし、もし入れたとしても感知により王国の殆どの者が侵入を確認できるはずだった。
それが何の反応もなくこの城の最奥に姿を表すことなど出来ないはずなのだ。
「なんと! あれは悪魔ではありませんか! そうですか。やはりそうでしたか。これでハッキリといたしました。バートリー王国は悪魔と結託していた事が!!」
「違う! 使者殿! これは何かの間違いで・・・」
「・・・・・もう遅いですぞ。バートリー王よ。今この状況は私の目を通して帝国軍の前線司令部に念視で送られています。城に悪魔が存在する、その事実さえ確認できれば完了です」
「使者殿、何を言っておられる? ・・・・まさか?!」
バートリー王も宰相もここでようやく気付いた。
これが罠だと言うことに。
「帝国の使者を拘束しろ! 帝国の同盟条約違反の証人として・・」
「だからもう遅いと・・・・・・・嫌だ・・た、助けて・・・皇帝陛下! お止めください!!」
突然使者の様子がおかしくなった。
先ほどまで普通に喋っていた者が急に震えだし、涙を流しながら誰に向けているかも分からない言葉を喋りはじめた。
「陛下! この使者の首に巻き付けられた帯状の物から異常な悪意を感じます!」
王の庇うように前に立ち塞がりながら、宰相は使者の首に巻き付けられた首輪の様な物を指摘する。
「あれは・・・まさか! 従属印? 宰相! 魔物を使役するための摩道具が完成していたのか?」
「そんなはずは、あれは我々魔人族の魔法技術がなくては完成出来ないはずです。それに完成していたとしても人に使うなど・・」
「た、助けて・・・・死にたく・・ない!!」
使者の男は右手で首の輪を掴みはずそうとしながら左手をバートリー王に向けてきた。
まるで救いを求める様に。
しかしそこまでだった。
次にはその手をブランと下に下げゆっくりと立ち上がる使者。
「・・ふ、とんだお見苦しいところをお見せしました。それではバートリー王国の反旗の証拠も出来上がりましたので、そろそろ終わりにしましょう」
使者の男はゆっくりと、そして口端に薄笑いを浮かべる。
「バートリー王国と結託した悪魔が帝国の使者を殺すところを見ていてもらいましょうか。あ、でも無理ですか、この謁見の間は直ぐに地獄と化しますよ。私の身体中に張り付けてある強化爆炎術式の札が悪魔の攻撃と同時に起動しますから」
「?!」
「まずい!! この場から皆避難しろ!!」
国王の言葉が皆の耳に届くと同時に、天窓に上で状況を見守っていた悪魔から大きな火の玉が打ち出されてしまった。
「「ドウオオンンンンンンンンンン!!!!!!!」」
謁見の間がある城の一角全てが大きな炎の塊の中に包み込まれてしまった。
またお越しください。




