初めての仲間? 2
よろしくお願いします
茂みに入った私はほんの少し移動した後、身を低くしその力の塊を感じる方向に向けて視線を固定した。
当然それ以外の周囲にも気を向ける。
実際私にそんな感知能力が有るか分からないけど、後方から近づく力には気付いたんだもん。
案外そう言った能力も有るのかもしれない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・近づいている・・ん? もしかして向こうも感知能力があるのかも」
真っ直ぐこっちに向かって来ている。
完全に私をターゲットにしているのが分かる。
でも・・・
「えらく慎重に動いているみたい・・・あ、止まった? ん、あ、また動き出した」
こっちの出方を窺っているのかしら?
だからと言ってこっちから動くのは愚策よね?
ここは我慢比べするしかないか。
そう思った瞬間だった。
「ガサ! ガサ! ザッ、ヒュン!!」
突然慎重だった相手が、意を決したように茂みを抜け飛び出してきた!
「しまった!」
私は咄嗟に腰の指していたミドルソードを抜いて身構えた。
血を出す余裕がない!
仕方ない、このまま迎えてギリギリで避けてから体制を立て直して・・・
「姫様!!!」
え? 今の声誰?
「どうか命だけはお助け下さい!!」
私が感じていた力の塊は、茂みから出たあと私に向かって来たと思っていたのに、その数メートル手前で失速し地面にその体を埋める様にして座り込んでしまっている。
このグレーの毛並み・・・獣・・・どこかで見たことある様な・・・・あれ? 頭が三つ?
「あ! ま、まさかあの時のケルベロス?!!」
「はい! その節は大変ご無礼をいたしました!!」
前に出している前足に両脇の頭を押し込める様にして地面に付け、真ん中の頭が平伏しながら喋っているように見えるのだけど?
「喋っているのは、目の前のあんた、ケルベロスよね?」
「はっ!! そうでございます!!」
この世界、獣も喋るのね。
それより・・・
「一体どうい事なのか説明してちょうだい」
「え? あ、あのう説明と申しますと?」
「全てよ! あなたが喋るのも、こうやって私に頭を下げるのも、そして私を姫と呼ぶ事も全てよ!」
何よ、その不思議そうな顔は?
不思議に思っているのは私の方なんだからね!
「もしや、記憶を無くされておられるのですか?」
記憶・・・まあ、この世界で生きていたはずのたぶん6,7年の間の記憶は全くないわね。
日本でOLやってた頃の記憶はあるけど。
「ま、まあ、そういう事よ」
「なんと! これも全て人間族の非道なる仕業にございません!」
そうなの?
「分かりました! この魔人族の守護獣筆頭の我ケルベロスが姫様がお姿をお消しになられたこの60年間の事も含めてご説明させていただきます!」
これはラッキーだったかも。
私を生贄として差し出したロドンの村に行くよりも、獣とはいえ、こうして平伏してくれるケルベロスに話をまず聞けるのは良かったわ。
ロドンの村の奴らとどうやって相対すれば良いか悩んでいたもの。
「じゃあお願いするわね。但し嘘はつかないでよ?」
「滅相もございません!! 魔人族の王族に忠誠を誓っておりました我が、その姫君たるエリゼベリュト・バートリー様に虚言などこの命に代えまして嘘偽りない事を誓いまする!」
んんん、突っ込みたいところは山ほどあるけど、ここは順に話を聞く為に我慢しよう。
「分かった。一応信用しましょう。それでまずは60年前にあった出来事か・・・・・・ん?」
あれ? 60年前?
「ケルベロス、今あんた60年前って言わなかった?」
「はい。姫様もそう仰っておられますが?」
「それは、あんたが言ったからでしょ? ちょ、ちょっと待って! 私って今幾つなの?」
「お歳の事でございましょうか?」
「そうよ! お歳のことよ!!」
「たしか・・・姿を隠される前は6歳になられた頃だったと記憶いたしますので、今年で66歳でございます」
「66歳・・・・・・」
あ、また目眩がする・・・・・・
「ひ、姫様ぁあああ!!!」
ありがとうございました。




