気づいたら生贄 1
投稿いたしましたので是非読んでください。
「星空がきれい・・・・・・・」
不意にそんな言葉が出た。
秋の夜空の星は夏に比べてやっぱり綺麗に見える・・・ちょっと待って。
「何故、空を見上げてった? 私いつから見上げてた?」
ふと、疑問が頭に浮かぶ。
「えっと・・・・あれ? よく思い出せない・・・」
さらに考える。
脳みそにある記憶を掘り出し、少し前の自分の行動を探り出す・・・・あ!
「そうだ! 確か・・・・・私が残業を終えて、家路についていたはず? で明日は休みだったから朝まで酒を飲もう! と思って途中のコンビニでお酒とおつまみと大量にゲットで買い込んだはず。
「ふふ、時間帯サービスで半額物が沢山買えたし、ふふ、今晩は夜通し飲み明かすわよ!」
そしてコンビニを出て・・・あ、あれ? そこからが思い出せない。
早く家に帰りたいと思って走っていたとは思うけど・・・・まさか転んだ?!
で、打ち所が悪くて今まで気絶していた・・・とか?
それなら説明が何となくつくけど・・・・そ、それが本当ならまずいわ!
会社ではクールで出来る女で通してるのに!
こんな公道のど真ん中でスッ転んで気絶していたなんて・・
こんなの知り合いの誰かに見られてたら私のイメージが崩壊しちゃうじゃない!!
あ、でもちょっとドジなところを見せた方が後輩の女の子は親しみやすいと思ってくれるかも・・・・
いや、いや、今はそんなことより早く起き上がらないと、これ以上人前で醜態をさらすわけには・・・ん?
そう言えば私、街中で転んで気絶したのに誰も助けてくれなかったの?
放置された?
「いや、いや、いや!! 法治国家で世界で一番安全な日本の街中で一人の美しい女性が倒れて何もせずに放置されたまま、なんて事ある?」
無いわよね? 普通・・・!? ま、まさかもう何かされて何処かに捨てられた?!
・・・自分で考えてちょっと怖くなってしまった。
「スー、ハアー、スー、ハアー・・・」
よし、とにかく私は生きている!
だったら最悪の事態じゃないと考えて次の行動に移るしかない!
こういう時、前向き思考の私自身に感謝だね。
「さて、まずは状況確認ね」
周囲を確認するためにもまずは体を起こそさないと。
そう思って体に力を入れた・・のに
「・・・・ん? ・・・・・・んっ! ?? んんっ!!! ゲホ! な、何!?」
手足、体も何かに引っ張られて動けない・・・・・・
これってもしかして金縛り?
もう一度挑戦する。
「ん! うううううううううん!! ハア、ハア、ハア!!」
駄目! 少しは動くけど、地面に張り付いたみたいに体が持ち上がらない!
これってまさか金縛り!?
初めてなった! ちょっと嬉しい!
子供の頃、テレビで心霊ものを良く見てて私も金縛りになってみたいと言って、夕方の6時くらいから布団に潜り込んだけど、一度も金縛りになった事なかったのよね。
これはちょっと堪能して・・・・・
って、私って案外アホな子だった?
金縛りくらいでテンション上がるなんて。
「今の状況を確認する方が大事でしょ!」
自分に駄目出しする私・・・・。
「コホン・・・・・えっと気を取り直して、状況整理よ!」
私はもう一度今度は各部位の可動範囲を確認しながら少しづつ動いた。
それで気付いたのだけど、両手両足を動かく度にガチャガチャと金属が擦れる様な音がする。
その音の原因を見ようと頭だけでも持ち上げてみる事にした。
「何、これ?」
一瞬思考が止まってしまった。
だって想像もしていない物が目に入ったから。
私の足首に黒い金属だと思うものが嵌められていたからだ。
これ、確か枷? そうだ、犯罪者とか監獄とかに入れられて鎖とかを繋げるための道具。
テレビで昔の囚人や奴隷制度お写真とか絵で見た事があるものだった。
「何でこんな物が私の足首に・・・え? まって足だけじゃない! 手首も?!」
少し頭を横に向けると手首にも足首を同じ枷が嵌められているのが見えた。
そしてその先にはさっきテレビで見たと言った同じ物が伸びていた。
「鎖・・・なんで?」
私の両足、両手は枷と繋がった鎖で引っ張られていた。
そして今の状況から想像すると、私の両手両足はその鎖で関節の可動域いっぱいに引っ張られ、大の字の状態で地面に張り付けられているのが分った。
「どう言う事!? 何かのドッキリ?」
あまりに現実と離れた自分の有り様に、受け入れられない自分がいる。
そう、これは友達の何かのサプライズで私を驚かせようと・・・・・ここまでする? しかも夜空が見えるからここ外よ?
血の気が一気に無くなるのが分かる。
何か分からないけど大きな不安が上から圧し寄せてくる。
もしかして本当に犯罪に巻き込まれてしまった?
どうする? どうすれば良い?
考える・・・考えなきゃ!
元々の前向きな性格のおかげか、寸でのところで理性を保ちどうすればこの状況を打開できるか直ぐに考えれた。
そ、そうだ。
助けを呼べば・・・
「誰か!! 誰か助けて!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
返事がない。
「誰か!! 誰かいないの?! 返事をしてよ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ホー、ホー」
鳥の鳴き声だけ?
人の声は聞こえない。
もう一度頭を持ち上げ左右に動かし辺りを見渡す。
家の灯りどころか街灯も無い。
人工的な明かりが全くなかった。
ただ真っ暗で、星空との境界には樹々の葉や枝が揺れているのが見えるだけ。
まるで森の中みたい。
こんな場所、家の近くになんて無かったはず。
さらに不安が大きく膨れ上がる。
私はどこか知らない場所にいる。
読んでいただきありがとうございました。