入学式前
いけない、いけないまた立ち尽くしてしまった。
しかし、どうしたものか寮がどこにあるのか以前にトイレの場所すらわからないぞ。とりあえず、そこら辺の人に聞いてみるか。周りにひとは...
いた。銀髪で背の低い女の子だ、服装からして俺と同じ新入生か、高そうな服を着ているし貴族なのかもしれない。まあいい、話しかけてみるか。
「おーい、そこの君。道を教えてくれないか?」
「....」女の子は、俺を一瞥し何も答えずに歩いていった。
「おーい、無視すんじゃねー!」
バシッ、突然頭をたたかれた。
「なにすんだおまえ!」
「あなたのほうこそ何をしているんですか!カリヤ・エルソートに話しかけるなんて」
「はぁ?話しかけただけだろうが」
「それがいけないんです。もし付き人がいれば、あなた死んでましたよ」
「なんだそりゃ」
話をきくと、さっきの子は大貴族エルソート家の子供なのだそうだ。本来アカデミー内では、全生徒身分に関係なく平等とされているが、ほとんどの貴族がそれを良しとしていないため、平民の出自の生徒とのトラブルが絶えないそうだ。大貴族ともなれば、前を横切っただけで無礼とし付き人に切られるのだとか。貴族と対等にしゃべるには、それ相応の実力が必要になるらしい。
「なんだよそれ、じゃあ俺は平民っていうだけで無視されたっていうのか」
「そうですよ、偶然周りにひとがいなかったからよかったもの。ましてや大貴族にこえをかけるなんて常識知らずもいいところですよ」
「そうか...いろいろ教えてくれてありがと。えーーと」
「ロン・ウェルパ、気軽にロンって呼んでください」
「ありがとう、ロン。俺はルシウスだ。好きなようによんでくれ。ところでロン、寮の場所を教えてくれないか?」
「いいですよ、ちょうど僕もむかっているところでしたし」
寮に着いた。寮は二つあるが明らかにランクの違う建物だ。どうやら、片方が貴族もう片方がその他の生徒らしい。ロンはアカデミー内の生徒の扱いは平等だと言っていたが、それは形式上の話らしい。まあ、そんなことを言っても仕方がない。俺はロンと別れて自分の部屋に入った。部屋には、ベットと机ぐらいしかなかった。けれど、俺にとっては天国だ。だって、孤児院にいたときは一人部屋なんてなかったんだから。と、喜んでいるのもつかの間、寮に怒鳴り声が響き渡る
「ガキども!入学式が始まるさっさと準備して闘技場に行け!」
俺は急いで寮を飛び出した。