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教導は真面目に受けましょう

文字数は多くならなかったよ……

絶対に後半クッソ文字数多くなる。もう目に見えている。

 翌日から始まる訓練と言うのは、所詮運動と言っても部活動程度しかやってこなかった学生にとっては中々にハードな物だった。


「私がお前たちの訓練を見る事になったこの国、サンテライ王国騎士団団長、ディムロスだ。そしてこっちも同じくお前たちの訓練官となる宮廷魔導士、ザンクローネだ」

「ふん。俺に教えを乞える事を幸運に思うんだな」


 建斗、ヴィーシャ、ゼナのはいはいテンプレテンプレと言わんばかりの目線に気付く事無くクラスメイト達の訓練官となった二人は己の自己紹介をしていく。魔導士と言われた方、ザンクローネはテンプレもテンプレな高慢ちきなエリート魔法使いっぽい感じがするが、ディムロスと名乗った方は性格も普通に良い気のいいオッサン、という印象を三人は抱いた。

 三人はもうここで訓練をしても何も身に付かない程度には完成された技や体を持っているのだがそれに気づくわけもなく、話は進んでいく。


「細かい話は止すとして、私は短期間で貴様らを使い物にするように王から直々に命令を受けている。故に訓練に手加減は一切しないと思え」

「こんなひよっこ共の教導なんて、もっと下の人間を使えばいいモノの……まぁいい。俺も同じような命令を受けている以上、お前達を精々下働きはできるように仕上げてやる」


 その言葉にクラスメイト達は分かりやすく難色を示した。

 まさか昨日まで普通の学生だった自分達がこんな風に生粋の軍人らしき人物に訓練をされるなんて思ってもいなかっただろう。

 げー、とかめんどくさい、とかやらなきゃよかった、とか。そんな言葉が聞こえてくる。が、目の前の二人はその程度の言葉が出てくる事は織り込み済みなのか何も言わずに咳ばらいを一つだけしてクラスメイト達を黙らせた。


「では早速訓練を始める! まずは魔法が使える者、弓等の遠距離武器が使える者と近接武器が使える者に分かれろ!」


 ディムロスの言葉に渋々と従うクラスメイト達。ここで一旦建斗、ゼナはヴィーシャとはお別れだ。建斗は今も石化したヴァリアントソードを腰に吊るしているし、ゼナは昨日体が強くなったと言ったばかりだ。

 そして建斗と同じように剣を吊るしているクラスメイトも居れば無手のクラスメイトも居る。どうも剣を始めとする武器を出す異能に目覚めたクラスメイトが数人いるらしく、それ以外には例えば剣を強化したり身体能力を一時的に上げる能力を持っているクラスメイトが居るらしい。

 らしい、とはあくまでもゼナが昨日耳に挟んだ程度の情報なので定かではないという事だ。


「お前らが近接組か。男女の割合は大体半々……いや、男の割合が少し多いか」


 ディムロスが前に立ち、近接組の顔を一通り見ていく。チラッと遠距離組に視線を向けてみればザンクローネが何か喋くっているようだった。


「……まぁいいだろう。よし、お前ら、早速体力テストだ。今からこの王城の周囲を倒れるまで走って来い!」

「えぇ!!?」

「た、倒れるまでって!」

「つべこべ言うな! 走らなければ今日の飯は無いと思え!!」


 まぁ、最初はこうなるだろうと建斗とゼナは予想していたので驚いたふりをしているが内心は全く驚いていない。

 きっとディムロスも自分達が剣なんて握った事が無い人間だという事は聞いている。いや、きっと体や手を見ればすぐにそれは分かった筈だ。故に、まずはここに居る全員の体力の平均を知るために走らせる。それから剣等を使った実際の訓練をさせる。

 そもそも剣や槍を振るうための土台ができてないのだからまずは土台から作るのがセオリーという物だ。


「魔王は悠長に待ってくれんぞ! とっとと走れ!!」

「……はぁ、ゼナ、行くぞ」

「合点」


 中々走り出そうとしないクラスメイトを見た建斗は自分達が先導したらなし崩しに全員走るだろうと思い自分達から走ることにした。

 ゴールが見える持久走なら適当に走って中間くらいの記録を取れば何の問題もなかったが、今回はゴールの見えない持久走だ。別に走るだけならこの王城の周囲を何時間でも走っていられるのでキリのいい所で倒れるフリをしなければならない。

 一応王城周囲の地理は頭の中に入れてあるし、王城の外にいざ出てみればディムロスの部下らしき騎士がいるのでそれが道しるべになる。ついでに倒れたらすぐに王城に運び込んでくれるだろう。


「ほう、あの二人は聞き覚えがいいな。ほら、とっととお前らも走れ!」


 ディムロスの言葉に従い、二人が走り始めたんだからと嫌々走り始めるクラスメイト達。

 その気配を何となく後ろから察しながら建斗とゼナは自分達の体力からしたらかなり遅めの、しかしクラスメイト達からしたら速すぎず遅すぎずのペースで王城の周りを走り始める。


「なぁ、ゼナ。こうやって訓練に付き合うの怠くね?」

「怠い……ゲームしたい……」

「ここにゲームはねぇよ。どうする? ヴィーシャと一緒に抜けるか?」

「抜けたら面倒かも」

「だよなぁ」


 王城の周りを走るだけでも数キロでは済まない。城自体はかなり大きいのでもしかしたら一周もできずにダウンするクラスメイトが出るかもしれない。

 そんな事を思いながらせっせせっせと走って体力トレーニング。一応建斗とゼナは近接戦闘をしてきたが故に体はできているしあまりだらけない為に体力維持はしてきたのでペース配分をしっかり考えれば数時間は余裕で走れる。

 多分フルマラソンだって二人なら息を少し切らした程度で完走することが可能だろう。長距離を走るように体を作っていないのでタイムは酷い事になるのは目に見えているが。


「あ、後ろの方で歩くなって叱られてるぜ。おーこわ」

「ゼナ達、いつまで走るの?」

「んー、まぁ全員ダウンしたら適当に全力疾走して無理矢理息切らして倒れりゃいいだろ」


 なんてことを話しながら走り続けて一周走り終えた。どうやら半数近くは既に撃沈しているらしく、王城の出入り口付近でクラスメイト達が倒れ伏しているのが見えた。


「うわ、如月のやつ、全然余裕そうじゃん……」

「ってかカサヴェテスさんもなんか余裕そうだし……」

「そ、そういえば体が強くなったって……」


 死屍累々のクラスメイト達から声が飛んでくる。その声を聴いてしまったと建斗は顔を顰めた。

 どうせならここで息を切らして必死さアピールをしておかないとあと何周も走る羽目になる。まぁそれでもいいんだが走り続けるのはめんどくさい。あとゼナとの会話のネタも尽きてしまう。


「……とりあえずあと二、三週って所か?」

「ん。そうしよ」


 あんまり走りすぎてもアレだ。建斗とゼナは五週目クオリティーと四週目クオリティーを隠すために倒れる時期を考え走り始めた。

 そして二週目。


「それで、その隠しボスがクソで」

「あー、あれね。ってお前アレ倒せたのかよ」

「AIの超反応もゼナは余裕」


 三週目。


「けんとは何でいつも本読んでるの? 眠くならないの?」

「ん、まぁな。面白いし」

「でもけんとがラノベしか読まないのをわたしは知ってる」

「頼むからみんなの前で言うなよ? 折角表紙を変えてまで隠してんのに」


 四週目。


「……めりーごーらんど」

「ど、ど、ど……ドンジャラ」

「ラ……ランサー」

「さ、か……サン、ライト」

「ん、今の怪しい」

「いやいや」


 五週目。


「…………なぁ、ゼナ。俺達今何周目?」

「……わかんない」


 暇つぶしに会話をしていたら予想以上に走り込んでしまい、ついでにしりとりなんて始めてしまった物だから気が付けば何周目か分からない状態で王城の周りを走っていた。


「とりあえずこの辺で全力疾走、いっとくか?」

「それでわざと倒れる。完璧なさくせ」

「ほう? わざと倒れるのが完璧な作戦だと?」


 もうそろそろいいだろうとゼナと悪だくみを開始しようとした時だった。真後ろから声が聞こえ、建斗とゼナは同時に振り返った。そこにはニッコリと凄みのある笑顔を浮かべたディムロスが自分たちの後ろを走って着いてきていた。

 いつの間に。というかなんで。

 まさかつけられるとは思っていなかった二人は気配を読むのを止めていたのでかなりビックリしたが、それよりも今は真後ろで凄んでいるオッサンをどうにかしなければならない。

 どうする。どうやって言い訳する。


「他の奴らはとっくにリタイアしたがお前らは骨があるようだな? 体力づくりで走らせても無駄という事が分かったからお前らのランニングは明日から免除してやろう。だから今日は他の奴らの分も走れ。昼飯の時は止めてやるし晩飯の時間になったら終わりでいいぞ? どうだ、いい提案だろ?」

『…………うっす』


 こうして建斗とゼナの二人はこの日、延々と城の周りを走り続け、結果的に夕食の時間まで軽い息切れを起こす程度で難無く走り抜いたのだった。

 対してヴィーシャはと言うと。


「まず君たちが使う魔法についての原理を説明するとしよう。まず魔法と言うのはこの待機中に満ち溢れるオドと呼ばれる物質を体内に――」

(あー、すっごい暇……わたしのは実際には魔法じゃないし、教えてもらっても使えないし……異世界転移が無かったら今日は建斗くんとデートの予定だったんだけどなぁ……滅べ異世界)


 この日一日中外で魔法についての講義を受けていたため何度も寝そうになったのだった。

建斗、ヴィーシャ、ゼナの秘密

実は体力お化け。かつて一日中走って強行軍をやった事も。

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