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悪巧みは夜中にこっそりと

前回からの続き。文字数は次辺りから増えていくと思う。

 部屋はどうも二人一組の相部屋が数個できれば問題ない程度にはあったらしく、建斗はヴィーシャ、ゼナとの相部屋となった。

 とは言ってもそこに至るまではそこそこ問題があった。

 何せ、建斗とヴィーシャの関係はゼナと建斗の両親以外には知られていない。一応ヴィーシャとゼナは建斗の家でホームステイをしているという事にしてあるのだが、それでも男女が一つ部屋の中で寝泊まりだ。色々とツッコまれた。

 が、しかし。


「わたしにとって建斗くんは何年も一緒に暮らしてる家族だから、建斗くんと一緒の方が安心するの」

「ゼナも。けんとと一緒が安心する」


 という言葉によって建斗、ヴィーシャ、ゼナの相部屋がまんまと決まったのであった。ちょろい、とヴィーシャとゼナがわっるい笑顔を浮かべたのは言うまでもない。先ほどまであざといとも言えるレベルで涙を浮かべながら困った顔で弱音を吐いた美少女の図はどこに行ったのだろうか。きっと彼女達の心の奥底だ。

 その日はその後、歓迎会やら何やらで立食会兼歓迎会が開かれ、それに参加したりと色々あり、着替えを貰って各々が部屋に戻る頃には慣れない事でクラスメイト達はかなり眠そうだった。

 が、建斗達はそこまでではなく、部屋に戻って着替えてから悪だくみの時間となった。


「さて。こうしてまた異世界転移となったわけだが……どうする? 俺達だけで抜け出してとっとと魔王を斬殺するか?」

「えー。やだよめんどくさーい」

「めんどくさーい」

「俺もめんどくさーい」


 一応、建斗の言った案はヴィーシャとゼナも考えていた事だ。

 だが、めんどくさい。この一言に尽きる。

 前回の異世界救済RTAだって一か月という時間がかかったし、その際に色々と降りかかってきた問題もめんどくさい物が多かった。なのでそれらを押し付けられるのであれば押し付けてしまいたいというのが建斗達の考えだった。

 ついでにもう戦いたくない。彼らはもう戦う事に疲れたのである。


「じゃあ魔王討伐はクラスメイト達に任せてピンチになったら出るって事で異議は?」

『なーし』

「よし決定」


 という事で建斗達は何かあれば出るが何も無ければ背景になることを決めたのだった。

 では次の問題。


「で、俺達の力だが……どうする? 俺達なんも力が付かなかったけど」


 それは建斗達には付かず他のクラスメイト達には一切の例外なく付いた特殊な力の事だ。食事の時はその話題で持ちきりとなり、建斗達は上手い事誤魔化し通したのだが、流石に例外となって目立つわけにもいかない。

 故にどうするか。


「適当に誤魔化そうよ。わたしは回復魔法って事にするから」

「ゼナは……なんかこう、すっごい体が強くなった」


 その答えは案外適当だった。

 だが、この二人は元々ファンタジー世界の出身だ。ヴィーシャは神の奇跡という名の回復魔法があり、ゼナも魔物に育てられたという経緯から人よりも身体能力がかなり高く、切り札もいくつか持っている。

 だが建斗は彼自身、今も昔も特殊な力なんて持っていない。なので魔法が使えるとか力が強くなったとかは言えないのだが。


「お前ら適当だなオイ……まぁ俺はこいつにすっか。来い、ヴァリアントソード」


 ヴァリアントソード。その名を告げると、建斗の目の前に波紋が生まれ、そこから剣の柄が姿を現した。

 それを掴み引き抜くと、刀身と柄の部分を一直線に繋ぐ鍔を持った、刀身が石化した剣がその姿を現した。

 この剣こそが建斗が魔王を斬り裂く事ができる程の力を与える彼の武器。彼だけの武器だ。一度目の救世を行ってから例え建斗がどの世界に行こうとその名を呼べばどこにだって現れた、どの世界を巡ろうと彼にしか使えない、彼のための武器。

 それがヴァリアントソードだ。


「あ、出た。建斗くんの本体」

「本体ちーっす」

「お前ら言うに事欠いて……まぁいいや。自覚あるし。今回もよろしくな、ヴァリアントソード」


 だが、ヴァリアントソードが無ければ彼自身はこの三人の中で一番劣るので、荒んだヴィーシャとゼナはヴァリアントソードの事を建斗の本体だとか好き勝手言ってくる。だが建斗もそれを自覚しているので特に何も言わない。

 建斗は戦いの経験やら何やらだったり剣を振るうために作った体があるので一般人よりはかなり強いが、ヴァリアントソードが無ければ飛びぬけて強いわけではないのである。


「んじゃ、ヴァリアントソードは適当に壁にかけておくとして……」


 と言いながらヴァリアントソードを適当にポイっと壁に立てかける建斗。

 もう数年来の相棒なのに扱いが雑である。


「今日はどうする? 寝るか?」

「うん、そうだね。じゃあ寝る前にあのバ神にお祈りだけしちゃうから」

「ヴィーシャも擦れたよな……昔はあの神の事をバ神なんて口が裂けても言わなかったのに」

「あれだけ面倒事をこっちに押し付けてきたら流石にね?」


 たった四年で変化しまくった恋人の内面を比べ、昔の聖女として外面も内面も遜色なかったころのヴィーシャをついつい思い出してしまった建斗。

 しかし惚れた弱みというのは案外恐ろしいものでこうして性格がかなり擦れてしまった彼女でも建斗は全然気にしていない……むしろこっちの方が親しみが持てるので万々歳、なんて思ってしまっている。

 建斗は部屋の中に放置されていた埃塗れの本を一冊手に取って埃を払ってからその中身を拝見し、ヴィーシャは部屋の窓に向かって片膝を付き両手を合わせて目を閉じるという形でお祈りを始め、ゼナはスマホを取り出しゲームを起動するが電波がある訳もなく、ゲームがプレイできないという現実に絶望して携帯を壁に向かってぶん投げてからベッドに一足早く潜り込んだ。

 折角の神がかったスタミナ調整もこうなってしまったら何の意味もない。


「……………………ふぅ。終わったよ」


 それから大体五分ほど経ってからヴィーシャが一息ついて立ち上がった。どうやらお祈りは終わったらしく、少し苛立った感じの表情をしている事から今回も何かしらの神託を得たらしい。


「おぉ、それで? あの神さんは何か言ってた?」

「……どうやらこっちの世界も魔王のせいでピンチだからついでに救ってきてって。なんかこの世界の管轄の神様に貸し一つ押し付ける形で納得してもらったって……」

「ふっざけんなよあの神……!! 世界一つ救うのをそんなおつかい感覚で頼むんじゃねぇよ……!!」


 ちなみに神託は神からの一方通行ではなく限られた時間ならヴィーシャ側の意見を通す事も可能なのだが、彼女の信仰している神はその限られた時間で自分の言葉だけを突きつけそのまま神託をカットしてしまうのでヴィーシャ側の意見は中々通せずにいる。


「建斗くん、そろそろ世界を斬って神界に乗り込んであのバ神斬ろう? あれの信者代表としてわたしが許すからさ、ね?」

「いや、いくら何でもそれは無理っすわヴィーシャさん……」

「えー。魔王斬るみたいにバッサリと世界斬っちゃおうよ」

「それで斬れたら俺はとっくにこの世界の魔王を斬撃だけ飛ばして斬り裂いてるっての……」


 いくら救世主でもそこまでの事はできない。ヴィーシャも冗談で口にしたはずなのだが、建斗目線で見ると彼女はその言葉を聞いて思いっきり舌打ちをしているので冗談に見えないし聞こえない。

 建斗は持っていた本……四度の異世界転移で経験した言葉は通じても文字は読めないといういつも通りの現象故に読めなかった謎の本を元あった場所に戻すと、既にゼナが入っているベッドに潜り込んだ。

 この部屋は元々少し広い一人部屋なのにそれを三人で使っているのだ。ベッドが一つしかないのも、故に三人で同じベッドに寝る事も致し方ない事だ。

 最も建斗とヴィーシャは既に恋仲で一つ屋根の下、何度も一緒のベッドで寝た事もあるし、ゼナもそんな二人のベッドに潜り込んで寝る事がそこそこあるので三人で一人用のベッドに寝る事はもう慣れている。最も枕だけは先に言って二つ余分に貰ってきたが。


「うわ、このベッド、王城の備品にしてはクッソ寝心地わりぃ」

「けんと、野宿よりマシ」

「そうそう。地面と草よりは寝れるから」

「そりゃそうだ。あと何も敷いてない馬車もそこに追加で」


 異世界に行って少し昔の時代の生活に似た生活を送った者にしか分からないような会話で笑いながらベッドに入り、それから五分後。建斗達はいつもよりも寝心地の悪いベッドでいつも通りに眠りに就くのであった。

 野宿をする事も多数あったこの三人はどこでどんな体勢だろうと、死ぬほど暑かったり死ぬほど寒くない限りは寝れるような体質になっているので当たり前とも言える現象なのであった。

ヴィーシャの秘密

実はクラスメイトの男子たちからはかなり人気が高い。


ゼナの秘密

実はかなりのゲーマーでインドア派。あと何故か建斗だけはちょっと舌足らずな感じで呼んでしまう

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