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異世界転移が嫌いな理由

今回は軽く過去語り。ここら辺でぶち込んでおかないと説明するときが中々来ないなーと思ったのでついぶち込んでました。許してください何でも(ry

 ――では、そう答えるに至るまでに彼が歩んできた人生を少しばかり説くとする。

 如月建斗。歳は十八歳の高校二年生。つまりは一年ダブって高校二年生をしている青年だ。

 彼は十四歳まではどこにでも居るような、普通の中学生だった。だったのだ。

 そんな彼が異世界転移に巻き込まれたのは十四歳の誕生日。両親と共に外食に出かけた日の帰りだった。車に乗っていた建斗とその両親の三人は急に足元に現れた光に視界を奪われると共に異世界へと転移させられた。

 これが建斗のこの先四年の内で一番長く、そして一番辛く、そして一番純粋な気持ちのままで巻き込まれた異世界転移だ。

 そして転移の直後、建斗は隣にいた両親を衛兵らしき者達に捕らえられた後、こう告げられた。


「貴様の両親を返してほしければこの世界を混沌に陥れようとしている魔王を討伐する事だ。そうすれば貴様の両親は傷一つなく返してやろう」


 たった十四歳の少年に告げられたのはそんな無責任な言葉だった。

 無責任、無常、残酷、冷酷。そんな言葉に建斗は従うしかなかった。彼はそういう物語でテンプレとも言える特殊な力の一つも持たずに魔王討伐に出向き、様々なドラマと出会った。

 その中の一つが建斗の隣にいる俯いて呪詛を吐いていた少女、ヴィクトリア・ハインリッヒ……つまりはヴィーシャとの出会いだった。

 彼女との出会いが建斗の人生を変えた。

 その世界で聖女と呼ばれ、神のお告げを直接受け、聖女として利用されていた彼女は一人で魔王討伐の旅を歩む建斗の側に立ち、共に戦い、そして最後に彼が魔王を倒すその時まで彼を支え、彼に支えられ。二人はいつしか戦友を越えて愛情を育み恋人となり、最後には魔王を倒し世界を救った。

 その後、二人は約束を破り両親を人質に建斗を駒にしようとした王を脅し、建斗の両親を無事取り返すとヴィーシャの信仰する神の奇跡により建斗達は無事地球へと一年ぶりに帰還。ヴィーシャはそれにその身一つでついて行ったのだった。

 本来なら建斗の物語はそれで終わり……のハズだった。

 しかし、ヴィーシャが神を信仰していた。そしてその神が異世界転移を起こす事ができた。その事実が建斗とヴィーシャに更なる物語を生む事となった。

 二度目の異世界転移はそれから僅か一か月後の事だった。ヴィーシャを家族として迎え、学校は留年したが再び元の生活に戻った建斗だったが、そんな彼はヴィーシャとのデート中にまたもや光に包まれ、気が付いた時には見知らぬ森の中に居た。

 その理由は。


「ごっめーん! ちょっと手違いで異世界に送っちゃった! でもその世界もなんかピンチっぽいからちょっと世界救ってきて! まじめんご☆!」


 ぶっ殺してやろうか。建斗はその言葉をヴィーシャから聞いた瞬間そう叫びそうになったが、ぐっと堪えた。

 どっちにしろ自分達の帰路は神の機嫌一つでもある。仕方が無いと割り切った建斗はヴィーシャと共にもう一度世界を救うたびに出た。そしてその最中に建斗とヴィーシャは二人の側にいるもう一人の少女、ゼニア・カサヴェテス……つまりはゼナと出会った。

 魔物に育てられたという経歴を持つ彼女を仲間に加えた二人はそのまま僅か半年で魔王を撃破。そしてゼナを加えた三人は地球へと帰還し、今度こそ建斗の物語は終わりを迎える……ハズだった。

 三度目はそれから一年後。建斗が十六歳で中学三年生の頃だった。

 建斗はヴィーシャ、ゼナと共に登校している最中、またもや見慣れた光に包まれ、また見知らぬ森の中へと飛ばされていた。

 またあの神による異世界転移だ。それを理解しすぐさまヴィーシャは神からお告げを貰った。その時の言葉は。


「いやー、実はさ、別の神と賭け麻雀してたら見事に振り込んで負けちゃってさー。それで賭けの報酬として君たち三人をその神の世界に送って世界を救ってもらうって事にしちゃってたからもっかい世界救ってきて! いやー、ほんとごめんごめん☆!」


 その瞬間、ヴィーシャの信仰は最早ただの張りぼてとなり、建斗はいつか絶対斬り殺すと決めた。しかしまだ二度目であるゼナは二人を慰めながら引っ張って救世の旅へと赴いた。

 そして三か月程度の強行軍により何とか建斗達はその世界が破滅へと歩を進めていた理由を撃破し、無事三人は地球へと舞い戻り、元の生活に身を置く事になった。

 今度の今度こそ異世界転移は終わり。これでもう自由の身だと建斗とヴィーシャが涙目になって抱き合いながら平和を享受し……ていた時だった。

 それは高校一年生の春。三度目の異世界転移から一年経っていない時に起こった。


「あのね? 実は神界で車に乗ってたら他の神の車にぶつけちゃってね? しかもそれがかなりの高級車で弁償できそうになかったからその神の管轄してる世界に行ってちょっと救世してほしいんだよね。答えは聞いてないって事でよろしくぅ!」


 見知らぬ森の中で三人は叫んだ。

 いい加減にしろよあのクソ神と。かつて聖女と言われたヴィーシャも、世界を三度も救った救世主である建斗も、そんな二人についていって二度世界を救ったゼナも、我慢の限界だった。

 流石に高校を長い間欠席するのはマズい。また留年する。そんな建斗の想いから四度目の救世の旅は超速で行われた。三人は寄り道も道草も食わず自らに降り注ぐ災難と目についた災難だけを斬り裂き、世界を救ってみせた

 そう、たった一か月で。

 最早異世界救済RTAである。

 これには流石の神も苦笑いだった。そして建斗の両親も度重なる建斗の異世界転移による欠席の理由を考えるのもそろそろ限界だった。

 そうして高校二年生の秋である今。一年以上異世界転移の兆候もなく、やっと異世界転移からの救世から解放されたと思い込んでいた建斗、ヴィーシャ、ゼナの三人だったが、この度無事に五度目、四度目の異世界転移に今度はクラス丸ごと巻き込まれたのであった。


「――――」

「……あの神、奇跡を使わせてくれるから信仰してるのに……そろそろ信仰やめて別の神様に鞍替えして……」

「休ませて休ませて休ませて解放して解放して解放して休ませて休ませて休ませて解放して解放して解放して――」


 建斗、ヴィーシャ、ゼナの反応も三者三様だが、共通している部分がある。

 度重なる異世界転移とそこで発生する救世のための戦いに心も体も既にボロボロであり、とうとうクラス丸ごと転移させられたという現実を認めたくないがために現実逃避しているという部分だった。

 三人は戦う術をこの時点で既に持ち合わせている。故に今すぐ戦って来いと言われれば戦いに行けるのだが、流石にもう戦いたくない。こりごりだ。なので現実を認める事ができずにこんな事をしている。


「勇者様方。この場事の説明をするには少しばかりくたびれましょう。そこの大臣が案内します故、別室で話し合うとしましょう」


 建斗達の経験からするに王様らしき人物の言葉に従い大臣と呼ばれた妙齢の男がこちらへどうぞ、という言葉と共に転移させられたクラスメイト達を案内しようとする。

 最初はどうしたらいいのか分からなかったクラスメイト達だったが、それにすぐに従う者が数人。そして話を聞かない限り埒が明かないからという結論に至ったのかそれについて行く者が現れ、結局三十人近いクラスメイト達は大臣の案内に従って別室へと向かう事となった。

 しかし建斗達は未だに現実を見る事ができず白目を剥いたり呪詛を吐いたりしているまま。


「あ、あの、ヴィーシャちゃん? みんなあっち行くみたいだし私達も行った方が……」

「第一賭け事に負けたり事故ったからってその負債をわたし達に……あっ、ごめん何か言った?」

「い、いや、あの……みんなあっちに……」

「え? あぁ、そういう感じ? ほら、建斗くん、ゼナちゃん、とりあえず移動しよ?」

「――――あ、あぁ。わかったよ、ヴィーシャ。ゼナ、俺に頭突きするのはやめてくれ、痛いから」

「帰りたい帰りたい帰りた――ん? あ、うん」


 つまるところ。

 この三人は既に五度、四度も異世界に叩き込まれては修羅場を潜り抜けてきたため疲れ果てているのである。

 しかし周りはそんな三人の事情に気が付くわけもなく、斎藤と田淵の言葉にようやく現実を受け止め、肩を丸め溜め息を吐きながらクラスメイト達の最後尾を歩くのだった。

Q:つまりこいつらってどんな事したの?

A:転移した先で神様の都合により救世を強要されて働かされてきたブラック企業社員


ちなみに建斗は一回目の世界を救世した辺りで既にレベルカンスト手前状態なので二回目からは強くてニューゲームしてました。

それと建斗とヴィーシャは既に付き合って何年か経ってるカップルなので時折イチャイチャします。まぁこの人達既に五週目だし多少はね?

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