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もう何度目かの異世界転移

偶にはテンプレ物書いてみようかなーと思って書き上げたものを投稿。

タイトルの元ネタは見て分かる通り某どうでしょう。異世界転移はお好き? と聞かれてうっせぇばーか! と返す苦労人が書きたかった。

とりあえずキリのいい所までは書いてあるのでその書き溜めが投稿し終わるまでは毎日投稿します。

 ――異世界転移はお好き?

 そんな問いが飛ばされたとしよう。それに対する答えは、はいかいいえ。もしもそういう王道ファンタジーなどに興味を持ち、それに憧れを持つ者が居れば肯定のために首を縦に振るだろう。

 対して首を横に振る者は恐らく、そんなどことも知れない世界に飛ばされたくない。そもそも異世界転移が何なのか分からない。そんな意味を込めて首を横に振るだろう。

 そしてそんな両者が混じる集団が異世界転移を実際にその身で味わったのなら。その際の反応は三者三様としか言えない物となる。


「やっと放課後だぁ……」

「あー、授業マジで怠かったぁ……」


 そんな言葉が雑多の言葉の中に消えていくとある高校の教室。その教室は特に何かが変わっているという訳でもなく、ただただ普通の高校の教室内だ。少しばかり普通じゃない個所と言えば、海外からの留学生が二人ほど在学している事と、そんな二人のホームステイ先の息子である青年が一つの教室内に居る事だろうか。

 既にSHR前の授業が終わり後は十分程度のSHRを終えて放課後を待つのみとなった教室。あと数分もしたら担任である教師が教室の中に入ってきてSHR開始の宣言をする事だろう。


「ねぇねぇヴィーシャちゃん! 駅前に新しい喫茶店ができたんだけど、今日一緒に行かない?」

「ゼナちゃんもどう?」


 あと数分……いや、もしかしたら十数秒しかない限られた時間でも年頃の少女と言うのは喋りたがり故に僅かな時間でも会話をし始める。

 学校内でも二人しかいない珍しい存在であるヴィクトリア・ハインリッヒことヴィーシャとゼニア・カサヴェテスことゼナはクラスメイトであり友人である女子二人、斎藤と田淵に声をかけられた。

 金色の髪と幼さを残した可愛らしい少女、ヴィーシャはその言葉を聞いてから苦笑を浮かべて手を合わせた。


「ごめんね、今日はわたしが家事当番だから帰らなきゃいけないんだ~」


 そして次に言葉を口にしたのは小学生と錯覚する程度には小さく、黒い髪をかなり長く伸ばした少女、ゼナ。彼女は突っ伏していた顔を眠そうに持ち上げると、目を数度擦ってから小さな声でヴィーシャと同じように誘いへの断りを入れた。


「ゼナも……今日は、用事がある……」


 と言いつつゼナは携帯を取り出して画面をチラ見した。用事というのはソーシャルゲームの周回であり、丁度放課後が来るタイミングと同タイミングでスタミナが回復するようにスタミナを調整していたのだが、タイミングを誤って既にスタミナが全回復してないかを通知で確認したのだ。

 結果は、通知なし。ゼナは満足げに頷いてから欠伸を隠す事無くしつつ背中を伸ばした。小気味のいい音が背中から聞こえ若干の爽快感。


「えー、二人とも用事あるのぉ?」

「っていうか家事くらい如月君に頼んじゃえばいいじゃん。変わってあげなよ、如月君」


 そして二人の会話の引き合いに出されたのは彼女達がホームステイする家の長男であり一人息子、如月建斗。四人よりも少し前の席に座り、授業中もずっと机の下に本を隠して読んでいた彼は小さく声を出しながら振り返り、首を軽く回してからようやく言葉を口にした。


「いや、別に俺はいいんだけど……代わりに後でヴィーシャが母さんにド叱られるんだよ」

「おばさん、そういうのは厳しいもんね~。本当に止むを得ない用事があるんなら見逃してくれるけど……」

「……ぷるぷる」


 建斗は少しだけ気だるげに、だが若干申し訳なさそうな顔でそう言った。それに対して同調したのはヴィーシャとゼナだ。ゼナは何故か軽く震えながらぷるぷると口にしているので少し余裕そうではあるのだが。

 しかし、流石に斎藤と田淵もそう言われたらどうにも言い返せないようで、ケチー、とか女の敵―、とか言いながら引っ込んだ。

 それに対して建斗は小さく溜め息を吐き、ヴィーシャは小さく両手を合わせて変に巻き込んでしまった事を謝罪。建斗は手を振って気にするなとだけ態度で表すと再び本を読むために視線を机の下に落とした。

 それから大体十秒か数十秒か。未だに私語の絶えない教室のドアを開ける音が響き、担任の教師が入ってくる。


「ほらとっとと席に着けー。帰りのSHR始めるぞー」


 担任の教師が少し気だるげにそう言いながら教壇の前に立つ。

 すぐに生徒達も私語を止めて一旦席に着き、帰りのSHRが早く終わることを期待して先生の言葉を待つ。


「んじゃ、日直はSHRの挨拶を――」


 先生がそう口にした瞬間だった。

 ――教室の床から光が漏れ出した。

 決してそんな無駄すぎる機能がある訳ではない。木製の床が急に発光したわけでもない。


「は?」


 先生が間抜けな言葉を漏らす。それもそうだ。いきなり何の変哲もない教室の床が光り出したのだから。そして、それに対して生徒達が気づいた時ももう遅い。立ち上がり光から逃げようとする者。眩しくて目を覆う者。

 そして。


「ヴィーシャ、ゼナ!」

「建斗くん!」

「けんと!」

「多分これまた――」


 一部の者が名を呼び合い、そしてこの現象についての答えを口にしようとした瞬間だった。

 教室中が目を開けていられない程の光に包まれたのは。

 先生がその眩しすぎる光に目を焼かれ、光が止むまで顔を腕で覆った。そして光が止んだ頃にようやくその腕を退け、目の前の惨状を見て口を開いた。

 生徒達が、光に包まれた数秒程度の時間で、全員忽然と姿を消していたからだ。


「……お、おい? これはドッキリ、なのか? それともマジなやつか……? お、おい!? みんなどこ行ったんだ!?」


 教師として生徒を預かっていた身として先生は焦りながら声を出す。だが、それに答える生徒は居ない。

 こうしてこのクラスに属する約三十名ほどの生徒は、教室の床が発光してから僅か数秒という短い時間で全員が失踪してしまったのであった――



****



 改めて問うとしよう。

 異世界転移はお好き? と。

 それに対して大半の者はその身で味わったことのないそれに対しての感想を述べるだろう。

 だがしかし。


「よくぞ参られた勇者達よ。我等が呼びかけに答えてくれた事に礼を言う」


 そしてそんな言葉を口にした者の前には、質問に対して実体験を以って質問に回答できる者が三十人ほど居た。

 ある者は今この場で起きている現実を信じられないのかヤケに広いその空間を見渡している。ある者は隣に立っている友人と一体何が起こったのか相談している。ある者はこの状況を理解し自分が小説の主人公のようになれると思い込んでガッツポーズをしている。

 三者三様。正しくそうとしか言えない反応。

 その中で三人の男女が少し離れた場所で三者三様ではあるがかなり珍しい反応をしていた。

 三人の中で唯一の男である青年は白目を剥き、残り二人の少女の内一人は俯いて何やらブツブツと呪詛を吐き、最後の一人も呪詛を吐きながら隣に立っている青年に対して頭突きを何度も繰り返しハイライトの消えた目で地面を眺めている。

 異様。正しく異様としか言えない反応。

 しかしその反応をする理由が三人にはあった。三人にしかない理由があった。

 何故なら三人……つまり、建斗、ヴィーシャ、ゼナの三人は。


『また、異世界転移させられた……』


 そう、既に異世界転移を経験した者なのである。

 ――異世界転移はお好き?

 そんな言葉に三人は悩むことなく答える。例えどんな要因があろうと答える。


「大っ嫌いだ」


 そう、迷うことなく答える。

主人公が初っ端から俺TUEEEEEEEするのを期待していた者はすまない。こいつらはもう死ぬほど疲れているんだ。休ませてやってくれ。

まぁその内戦い始めます。

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