序章 雨降る午後で
幼い少女は、その黒い小さな生き物をじっとみつめていた。その少女の瞳は、とても悲しそうにその生き物をみつめていた。
その生き物もまた、無表情で少女を見ていた。金色の目で・・・。
周りで降っている雨を気にせず少女と黒猫は、長い間ずっとみつめあっていた。
雨は、降り止む様子は無い。少女と少女のかるっていたランドセルも雨でずぶ濡れだった。だが、少女は全くそのことを気にしていなかた。少女は、黒猫をじっと見る。黒猫もまた少女をじっと見ていた。
そして・・・・・・・
「お母さん、飼っていいでしょ?」
連れてきた。
「責任もって飼えるの?」
娘の願いはきき受けるのが母親のつとめだと、その少女の母は考えていた。よって、犬や猫を飼う事ぐらいなら金銭的にも問題は無かった。
少女は、心配そうな表情からうれしそうな表情に変わって、
「うん。ありがとう」
とうれしそうに言った。そして、黒猫と向き合って言った。
「よろしくね。黒りん」
にゃーと、その黒い子猫は、少女に返した。ように、母親は聴こえた。
それから、まもなくして、母親はトラックにひかれて死亡してしまったのだった。