表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

一時間企画

プリクラの話

作者: アオニシキ

某所の一時間企画で書いたものです。テーマは「時」「内側」



 あの幕の内側には何があるのか、子供の頃の僕にはわからなかった。隠された大人の空間のようで隣に見える禁止を示しているような看板も含めて、興味の塊だった。そんな純粋だったあのころ。



  ~~~~



 僕はなんだかんだ成長して高校生になった。あの幕の内側への興味は色あせ、なんだかんだと平凡な日を過ごしている。つまらないな、なんて思うこともあるけれど、それでも無情に時は過ぎていく。


「ゲーセン行こうぜ! 今日こそお前に勝つ!」

「部活だ部活」

「スーパーの安売りに行くんだ。付き合ってよ」

「いつものおひとり様限定商品ね、了解」


 ホームルームも終わり、ガヤガヤとやかましい教室にて。僕は今日も一日を無為に過ごしている。今日はどうしようか……


「まあ、僕には何もないからなぁ」


 さっさと帰るに限るか。部活に打ち込んでるわけでも、格闘ゲームでコミュニティがあるわけでもない。あと、そこのクラスの中で全力応援されている幼馴染カップルは爆発して、どうぞ。



 ぼーっと空を眺める帰り道。特に寄り道もしない真面目な悲しい徒歩通学だ。そんな中で平凡な日をぶち壊すような存在が現れた。


 その存在はフリルのスカートを翻し、強めな化粧をしたその表情はどこか硬く、上の服もフリフリが多い、いわゆるゴスロリというもの……なのだろうか? 服に興味がないからわからん。まあ、それだけならば夢見るような少女だなぁ、で済んだだろう。問題はその存在が近寄ってきたという事だ。そして低音・・の声でこう言った。


「お願いします。付き合ってください」


 そんなありがたくない告白は華麗なテノールボイスだった。


こ い つ 男 だ !



  ~~~~



 詳しく話を聞いたところ、そいつはどうやらプリクラに行ってみたいらしい。友達いないのか。そう聞くと男子校で女子の友達がおらず女子にどう話しかければいいのかもわからない。でも最近のプリクラは男子のみでは入れない。よし、女装しよう。といった流れでこうなったらしい。馬鹿か。馬鹿だ。


「それで行ってみようと意気揚々と家を飛び出したはいいけど、途中で不安になってしまったと」

「はい。だから俺と一緒にあの幕の裏側に挑んでみませんか? 女装して」

「罰ゲームかよ」

「俺が男だとばれてもあなたが女のままでいてくれたら挑戦は成功するんですよ」

「表現がおかしいよな」


 そんなことを言いつつも別にやる事がなかった僕は流されるようにその男に従って女装することになった。



  ~~~~



 ゲームセンター「クラトイ」にて。ここは僕の街にあるゲームセンターの一つである。僕も子供のころ、たまに来たことがある。クラスメイトも今はいないだろう。結構遅くなってしまっているから。変装がすぐ終わってたまるか。


「よよよし、いいきましょう。大丈夫、堂々としていればばばばれませんよ」

「落ち着け。どう見ても挙動不審だ」


 そんなやり取りをしながらも無事プリクラの中に僕たちは入り込んだのだった。


 知らない部屋の中で初めて会った女装男と写真を撮る。そんな謎空間も終わり無事写真が完成した。本当に何だったのだろうか。女装男はしきりにプリクラの中を観察していた。やはり珍しいのだろう。初めて入るらしいしな。


「ありがとうございます。無理を言ってすみませんでした」

「いいっつーの。そもそも、ばれはしなかっただろうしな」


 この男無駄に女顔なので化粧を一度落として薄くさせるだけで女装感はだいぶぬぐえたからなぁ。完全にこいつを女子にするまでだいぶ時間がかかった。


「それにしても、俺がここまで女の子みたいになれるとは。新しい発見です」

「そうかい、そりゃあよかったな」

「あなたも意外と乗り気で女装してくれましたし。女の子の服にも詳しかった。とても助かりました」


 律儀に頭を下げる男。世の中にはこんな馬鹿もいるのかと僕の口からはため息がこぼれる。


「もおいいって、さっさと帰んな」


 そう言っていろいろと我慢して女装男を帰した。


やれやれへんなことがあったもんだ。まさか男に間違えられるなんてなぁ。


僕の高校は私服通学が許されていて、スカートはルールが厳しいし動きにくい、服にも興味がないからパンツスタイルで登校していたし、一人称は僕で口はかなり悪い方。確かに女の子っぽくはないよなぁ。僕は。


 もうすでに何回か入っているプリクラの中なんて興味がみじんもなくなっていたわけだけど、知らない人から見るとあんなに新鮮に感じるものなのか、少し面白かった。


平凡な日を変えるために、何か新しいことでもチャレンジしてみるかな。そんな風に思うようになった一日だった。



  ~~~~



 その後、女装男が転校してきて女だと気づかせるために奮闘する羽目になるのだが、それはまた別のお話。





よく分からないまま書いて、よく分からない場所に着地した。続きはない。ジャンルに悩んでヒューマンドラマにしたのはあらすじが言いたかったことだから。これは恋愛ではないだろう。(悟り)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ