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ミアラ王女は死にたくない  作者: 園原きょう
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プロローグ


 「なぜ、こうなってしまったのでしょう…?」


 ミアラ・フランツィカ・ユークレースは、大国、ユークレース王国の第一王女であり、国王の一人娘。

明日で十八歳になる。でも、明日はもうやってこない。

なぜなら、ミアラは今日、殺されてしまうのだから。


 きれいに光っていた黄金の髪の毛は、心なしかかすんでいて、見ただけでパサパサしているのがわかる。

陶器のようだった白い肌は、黒く汚れていた。

たったの一年前まで国の最先端のファッションで身を包んでいたはずのミアラが、平民ですら着ないような汚いドレス、いや、布をまとっている。

絶世の美女とまで言われたミアラの容姿は、今となってはその面影すらない。


 「こちらです、ミアラ様。」

そう言った兵士が、ミアラの腕につながれた縄を引っ張る。

かなり荒々しくはあったが、ミアラが抵抗することはない。

一言も声を漏らすこともない。引っ張られた腕が痛くないわけではない。いや、痛い。ものすごく。

いつ食べたかすらわからないが、最後にした食事、そのあとからずっと手を縄でつながれているのだ。もう腕には、縄の跡が痛々しくついていた。

…いや、だからこそミアラは、一言も声を漏らすことがなかったのかもしれない。もう、痛みに慣れてしまったのだ。


 だからミアラは今、死ぬ前に、あり得ないほど頭の中を回転させていた。

なぜユークレース王国の王女たる自分が、こんなにも惨めな姿を晒して、民衆、そしてギロチン(断頭台)の前に立っているのか。なぜ、首をはねられなければならないのか。


 はっきり言って、その問題の答えは、ミアラ以外なら誰にでもわかることなのだ。

それではなぜ、大陸最高峰のユークレース学園を首席で卒業したはずの、聡明なミアラに分からないのかといえば、その育ち方に問題があった。


ユークレース王国の国王、つまり、ミアラの父は、一人娘で第一王女のミアラを、猫かわいがりしていた。

ミアラが欲しいと言ったものは、なんでも制限なく買い与え、そのミアラの発言は、十歳頃にはついに、国政にまで影響するようになっていた。

ここまで言えば、わからない人はいないだろう。

そう、ミアラは、美しく聡明、それでいて…とてつもなくわがままに成長していた。


 そんなミアラの発言によってどんどん悪い方へ傾いていた国政は、あっという間に悪化していった。

国全体で飢饉がおこり、苦しみ、国に訴えていた国民に、「パンがないならケーキを食べればいいのです。」といい、さらに国民の不満を募らせた。

その結果、不満を持った国民が、王宮へと押し寄せてきた。


王族に仕えてくれていた従者たちにも。ミアラが嫌いな食材を食事に出してきた料理人を、ただそれだけの理由で首にした。髪を梳いてくれていた侍女に、痛かったからと首にした。

そうして、少しずつ、でも確実に、王宮内でさえミアラの味方は減っていった。


こうして、負による負の連鎖が連なり、ついに、ミアラや、王族は捕まった。

そのころになってミアラは、やっと気がついたのだ。

これが、王族たるもの、絶対に起こらないようにしなくてはならないと学んできた、『革命』だということに…。


 だから、ミアラは殺されるのだ。この国のために。

ああ、もう一度人生がやり直せるのなら。もう、こんなことにはさせないのに。


 いつか言っていた、従者の言葉。

「今すぐに対処しなければ、この国は終わってしまいます!」…この言葉を、もっと深く考えていれば。

「王女殿下。私に少しの御慈悲を…!」…もっと、信頼関係を築いていれば。


 でも、もうだめなのだ。

前を見れば、怒りを抑えきれない顔でミアラをじっと見つめ、大声を張り上げる大勢の民衆。そのどれもが、ミアラへの不満。

そして、その先頭には…。

『革命』を先頭となって引っ張った、大国、エレンティア王国の第二王子、ルカ・フローティス・エレンティアと、エレンティア王国出身の貴族、リアーナ・サーナイト。

ミアラの宿敵であり、今からこの二人は、民衆にとっての英雄になるのだ。…ミアラの死をもって。


 そんな大勢の人を前に、ミアラは、頭を断頭台に乗せ、そして、落ちてくる刃によって頭を切り離され、


死んだ。


 こういう物語を、他の物語を見ているうちに書きたくなって。

おバカだけど、愛されるヒロインが書きたくて。

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