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006 真壁透子は夢の中を彷徨う

 気付くと、砂の上に寝そべっていた。


「ここは……夢? わたし、急に眠くなって寝ちゃったような……。」


 体を起こし、手元にあった砂をさらさらとすくい上げてみる。

 どう見ても学校の教室ではなかった。

 起きなくちゃ、と思うが、この現実みたいな夢から起きる手立てはすぐに思い浮かばない。


「今朝見た夢と似てる……。最初、荒野っていうか何にもないところだったんだよね……」


 透子は立ち上がると、あたりを見回した。

 周囲はどこまでも砂で覆われ、ところどころコンクリートのような建材が足元から露出していた。砂丘の向こうには倒壊しかけたビル。また、そのあたりには幾本か木々もまばらに生えていた。


 透子は歩き出したが、すぐに立ち止まる。

 足がずぶずぶと砂に沈み込んでいた。

 面倒くさくなって、空を飛ぶことにする。これは夢だ。だったら思い通りにできるはず。


 瞳を赤く光らせ、背中から赤い帯のような羽を六つ生やす。


 ふわりと飛んで上空に行くと、砂漠が広がっているのはごく一部だというのがわかった。

 ビルがある辺りや、その向こうにはたくさんの廃墟が広がっている。壊れた屋根、崩れた壁、割れた窓、奥深くまで侵入した植物たち。それがどこまでも続いている。


「あっちに……行ってみよっかな」


 そんな街の方へと透子はふらふらと向かう。ラベンダー色の空に、ピンク色の雲がはるか高いところを流れていた。それらに透子は思わず苦笑する。


「ほんと、ファンシーすぎ! って、えっ? これってやっぱり……今朝見た夢、の続き?」


 ハッとなって空中で静止する。

 あまりにも似すぎている。この空。そして、風景……。

 ということは、この世界のどこかにまだあの「白髪の老人」がいるのかもしれない。


「まさか……ね? 同じ夢なわけ……」


 ごくりと喉を鳴らす。

 もう「二度と会えない」と言われた。その人に。名前さえ訊いていない。どこの誰かも、そもそもどういう存在なのかもよくわかっていなかった。だからもう……会えるわけがないのだ。


「って、わたし、やっぱりあのおじいさんに会いたいって思ってる? そういうわけじゃ、ないんだけどな……」


 ぽりぽりと頬を掻いて、遠くを見渡す。


「でも、どう考えても異変が起こってるよね。いつもの夢と違いすぎるし……ちょっとどういうことなのか、調べなきゃ」


 そう言って街の中に降り立ってみる。だが、やはりどこにも人の姿はなかった。

 大きな看板が大通り沿いに設置されており、透子はひとまずそれに近寄ってみる。


「地図……みたいね。ここ、東京の練馬区……なんだ? OIGE駅……HY駅? 何なのこの名前……」


 書かれていることは、それくらいしかわからなかった。

 どうやら練馬区らしいが、透子の知っている街と同じかどうかは確信が持てない。なぜなら、区境がかなり妙な形になっていたし、良くわからない記号や、見慣れない名称がいっぱいあったからだ。

 とくにこのアルファベットの表記……。


 透子は西東京市という街に住んでいたが、その名前もどこにも記されていなかった。


 西東京市というのは、東京の西部に位置する23区外の街だ。

 この地図はかなり広大な範囲の地図なのに「練馬区」とだけしか中央に書かれていない。


「この地図の範囲は全部……練馬区ってこと? 嘘でしょ……」


 あとは鉄道が三本描かれている。

 西武池袋線と西武新宿線、中央線の三つだ。それは地図の下に色別で路線の注釈が書かれていたので理解できた。だが、それぞれの駅名はそのアルファベットに置き変わっていたので、なんという駅の近くの地図なのかまではわからない。


「えー、ほんとなんなのよ、これ。なんかの略称……なの? 今朝のおじいさんは、ここは西暦2250年とかって言ってたよね。てことは……200年後の未来は、こうなってるってこと?」


 背筋をうすら寒くしながら、透子はまた空を見上げた。

 まずは全景を見たい。 


 この街の中で一番高い建物の上を目指し飛び立つ。

 上空まで行くと、そこからは360度の大パノラマが見渡せた。


 紫の空。ピンクの雲。そしてその下の廃墟の街。

 さっきまでいた砂漠や荒野。遠くの森。そして――一番近くには駅のようなものと、高架化された線路のようなものが見えた。


「あそこが駅、か。あれっ? あっちの……なんだろ。なんか嫌な感じだな」


 良く見ると街の中心に、妙なものが出現していた。

 巨大な黒い三角コーンのようなものが五つ、ふわふわと宙に浮かんでいる。

 透子はそれをじっと観察した。黒い影のような物体は、どこかで見た記憶がある。


「あっ、そうだ。あのタコの化け物……あれと似てるんだ! ってことは、あそこのやつも化け物ってこと?」


 しばらくすると、そこへ三両編成の電車のようなものが、空を飛んで(・・・・・)やってきた。

 それはいくつもの砲台がくっついていて、戦車のように武装化している。


「えっ、なにあれ。えっ? 銀河鉄道……」


 そう考えている間にも、いきなりそれは黒い三角コーンに向かって砲撃をしはじめた。


「うわわわっ! な、何っ? せ、戦争っ?!」


 透子は相次ぐ轟音に、思わず耳を塞ぐ。

 三角コーンが飛んでいた辺りには大きな煙と炎があがった。そして、次々に市街地へと落下していく。


「う、うわっ、なんなの? あの電車みたいなの……攻撃してた……怖っ!」


 透子はぶるぶる震えながら、墜落した三角コーンと武装電車の双方を眺めていた。武装電車の方は、良く見ればいくつも青白い歯車のようなものがくっついている。


「え? 歯車? あれって……」


 妙な既視感。そう、あれも確実にどこかで……見た。


「そうだ! あのおじいさんの持ってた銃、だ。もしかして……あのおじいさん、あそこにいるの?」


 同じような装飾からそう判断し、透子はその武装電車が降りていったあたりに急いで飛んでいく。

 もう一度あのおじいさんに会えば、何かわかるかもしれない。


 透子は地面に降り立つと物陰に隠れ、しばらく様子を伺った。


 おじいさんとよく似た服装の男たちが、着陸した電車から出てくる。あの空飛ぶ黒いボールも一緒だった。ここまで一緒だと、全く関連性がないとは思えなくなる。


 黒いボールは、墜落した三角コーンたちの体から湧き出る、ピンク色の発光体を回収していた。男たちはそれを側で見守りつつ、周囲にいる小さな化け物たちを銃で駆逐している。


「あれって……たしか今朝の大地君も壊された後、あのピンク色の光が出てきたわよね……。それに、あの黒いボール。あの人たち、いったい何をしてるの? どういうこと?」


 何をしているのかはよくわからなかったが、彼らの中にあのおじいさんはいなかった。

 しばらくすると、男たちは黒いボールをつれてまた電車内に戻っていく。そして、廃墟の街を飛び立っていった。


「ええっ? ちょ、ちょっと待って! どこに行くのよ!」


 ものすごいスピードで飛んで行く電車を、透子もあわてて追う。

 電車は、羽もジェットなどの噴射口もないのに、どういう原理で飛んでいるのかわからなかった。けれど、透子は必死で追跡していく。


 最寄りの高架化した線路に来ると、電車はそこへするりと降りていった。


「え? あれって……まだ使われてるんだ?」


 線路は、今にも崩れそうなくらい老朽化していた。だから、透子はてっきり使われていないものだと思ったのだ。けれど武装電車が載ってもびくともしないほど頑丈だった。やがて電車は、近くの駅に到着、ホームの中へと吸い込まれていった。


 それは決して開放的なつくりではなく、青白く輝くガラスの外壁に四方を囲まれていた。

 電車が入った直後に入り口の扉が閉まり、外界からは完全に遮断される。


「駅……ここって、何駅だろう。ちょっとわからないけど、どっからか入れないかなあ」


 透子は駅の周辺をぐるりと回ってみた。

 南側に行ってみると、そこには数名の人間が改札付近でたむろしていた。ロータリーの上に歩道橋が渡されており、そこを上がった二階部分が改札となっている。


 良く見ると、彼らはそれぞれバラバラの服を着ていた。

 おじいさんの着ていたような全身真っ黒の服、ではなく、どちらかといえば私服に近いものである。タンクトップや、作業ズボンのようなラフな格好だった。


「新しい銃をくれ!」

「こっちも頼む。あれがないと生きていかれねえんだ」

「早く! あいつらが来ちまう」

「交換してくれ!」


 どうやら駅に向かって、皆何かを訴えているようだった。改札口近くの扉を強く叩いている。

 透子はまた、少し離れたところからそれを眺めていた。


 窓口、と白抜きの文字で書かれた扉は、分厚そうな金属でできており、ノブなどはどこにも設置されていなかった。隣にある改札口は一つきりで、駅の外壁と同じく、うっすらとした青白い光で四角く切り取られている。


「各自の使用IDを確認中……。確認完了。交換する武器を窓口のボックスに入れてクダサイ」


 急に電子的な女性の声がして、「窓口」の文字の下に四角い穴が開いた。

 人々は手持ちの武器をそこに入れ、扉が閉じられるのを待つ。しばらくすると、再度開いた穴には整然と新しい銃が並べられていた。


「おう、やった! これでまた夢エネルギーを確保できるぞ!」

「ああ。もう武器なしであいつらに襲われるのはこりごりだからな……助かったよ」

「また一か月後か……あいつは今日来なくて本当に良かったのか?」


 などと、談笑しながら、それぞれが安心しきったような顔で武器を手にしている。そして、やがて壁の穴は音もなく閉じ、継ぎ目など最初からどこにもなかったかのように消え去った。

 透子は、そこへおそるおそる近づいていく。


「あ、あのう……」

「うわっ! な、なんだ?」

「ナイトメア?! ……じゃ、ないようだな。『夢見る人』か。珍しいこともあるもんだ」


 思い切って声をかけると、男どもは驚いて銃を向けてきた。

 一瞬焦ったが、すぐに「化け物」の類ではないと見破ってくれた者がいたので、透子はほっと胸を撫で下ろす。


「あ、すいません、驚かせてしまって。ちょっとお訊ねしたいことがあるんですが……」

「訊ねたい……こと? な、なんだ」

「わたし、今朝も似たような夢を見てまして……それで今また、同じような夢を見ているんですけど……。これって何なのか、ご存知ありませんか。うまく、説明しづらいんですけど。ここって、未来なんですか?」

「…………」


 男たちはそれぞれ顔を見合わせると、どっと笑った。


「ははははっ! 珍しいこともあるもんだ……とは思っていたが、さらに珍しいことが起きるとはな! 『夢見る人』が直接俺たちに話しかけてくるだなんてよ!」

「本当だ。こんなこと、俺たちゃ初めてだ」

「ほら、あれじゃないか? めったに見られない『明晰夢の天使』ってやつだよ、きっと。お前、知ってるか?」

「ああ……まあな。このお嬢ちゃんの言うことが本当なら、そうだろう」


 聞き慣れない単語の羅列に、透子は首をかしげる。


「えっ? 夢みる……人? 明晰夢の天使って……何なんですか? ここはいったい……」


 眉を寄せながらつぶやくと、男たちの一人が答えてくれた。


「まあ、わけがわからねえのも無理はねえな。なにせ召喚されたばっかりなんだろうからよ。ここは『夢エネルギー発電所』ってところだ。過去の人間の『夢』が召喚されるところ……夢が具現化される世界、だよ」

「夢が具現化……?」

「そうだ。お前さん、今も夢を見ているんだろう? この街ではな、過去の誰かが見た『悪夢(ナイトメア)』か、夢を見てる最中の『夢見る人』だけしか現れないんだよ。あとは現実に生きてる俺たち『滞留者』か、発電所のエネルギー回収班くらいだな。だからあんたは……その『夢見る人』ってわけだ」

「『夢見る人』……」

「ああ、そして『夢見る人』ってのはだいたい一度きりしか現れない。でもたまに何度も繰り返し現れるやつがいる。それを我々は特に、『明晰夢の天使』と呼んでる……お嬢ちゃんは二回目かい? じゃあまさにそいつだな。明晰夢の天使ってやつだ」

「明晰夢の天使……わたしが?」


 男たちの言葉に、透子は今朝のことを思い出す。


「そ、そういえば、たしかに今朝見た夢でも……ある人にそう言われたような。わたしは『明晰夢の天使』だって……」

「えっ? 別のやつにも、会ったのか? そいつは誰だ。単独だったとしたら……ハルかな?」


 誰かの名前が挙げられるが、透子にはわからない。


「えっと……今朝の夢ではわたし、ある人と一緒にタコの大きな化け物を倒したんです。ナイトメアっていう化け物でした。その人は……」

「えっ、ちょっと待ってくれ。倒した? ナイトメアを? あんたも一緒にそれを倒したって……そ、そいつは、そいつはいったいどんなやつだった!?」


 別の男が、急にまくしたてるように訊いてくる。

 男は40代くらいの、片目に眼帯をつけた大柄の男だった。見た感じ、他の男たちより頭一つ抜きん出ている。なんだか威圧的な男だった。


 乱暴に訊かれたので、透子は露骨に顔をしかめてみせる。


「えっと……どんなって、二階建ての建物くらいの大きさの『タコ』でしたよ。わたしたちがそれを倒した後、わたしはすぐに起きちゃったから、あとはどうなったか知らないですけど……」

「そうじゃねえ! 一緒に戦ったやつはどんなやつだったかって訊いてんだよ!!」

「へっ? それは……黒いボールを連れたおじいさん、でしたけど?」


 そう言うと、眼帯男は不気味な笑い声を上げ始めた。


「ふふ、ふふふふっ。じいさん……だと? そいつは……へえ、そうか。ふふふふっ。そいつは面白ぇ。そうか、てっきりどっかの滞留者だと思ってたが……そりゃあ『あいつ』かもしれねえな」


 ニヤニヤとしながら独り言をいう男に、透子は一気に気持ち悪くなる。


「あ、あの……よ、よくわかりませんけどこれって……いつも見ている夢、じゃないんですよね? 現実の世界、なんですよね? いまだに信じられないけど……」


 透子が頭をおさえながらうめくと、別の男が言った。


「ああ、そうだよ。ここは西暦2250年の、本当に現実にある世界(・・・・・・・)なんだ。あんたはいったいどこの時代から来た人間なんだい、お嬢ちゃん?」

「えっと、西暦……2042年です」

「ええ? ってことは、だいたい200年くらい昔から来たっつーことだな」

「そういうことに、なりますね……」

「はあー、まあたえらい過去だなァ。そんで? 発電所内で具現化させられた気分はどうよ? 思い通りになんでもできて楽しいだろ?」

「えっと、まあ……」


 陽気に訊いてくる男に、透子は苦笑いをしてみせる。

 普段から明晰夢を見ているなんてことは、彼らの前ではとても言いづらかった。またわざわざ説明してやってもあまり意味はなさそうに思える。なので、透子は適当にお茶をにごしておいた。


「あの……そ、そういえばその発電所ってやつは、いったい何なんですか? ど、どこにあるんですかね?」


 急に話を切り替えると、男たちはまた顔を見合わせて笑った。


「はははっ、そりゃああんた、この街のすべてがそうだよ」

「へ? この街って、街のすべてが……ですか?」

「そうさ。ええっと、トウキョウの三分の一くらいの広さだったか?」

「ええっ、そんなに!?」


 あまりの大きさに、透子は絶句した。

 この廃墟の街は、正確には「どこ」であるのかはわからない、だが、さすがに『東京』のどこかの街であるとは気付いておた。けれどもそれがこんなに広大なもので、そしてその全体が発電所として機能していたとは。透子には驚きしかなかった。


「あの、夢……エネルギー発電所って何ですか? どういうものなんでしょうか?」

「ああ、それはなぁ……詳しくは俺もうまく説明できないんだが、要は街に『過去の人間が見た夢』、ナイトメアが出てきて、そいつらをぶっ倒せば電気エネルギーに変換できる『粒子』が出てくるって寸法だ。俺たち『滞留者』はそれで日々の電力をまかなってる。まあ、『回収班』のやつらの回収量に比べたらごくわずかなんだけどな」


 化け物を倒してエネルギーを得る? 滞留者? 回収班……。なんなんだそれは。

 さまざまな疑問が浮かんだが、ひとつだけ、透子は気になっていたことを訊いてみた。


「……あ、あの、わたし! ある人を探しているんです。その人は、今朝の夢に出てきたおじいさんなんですけど。あの時、すごい怪我を負ってたから心配で……。似たような人たちがここに電車に乗って入っていくのを見たんです。だから、ここに来て……。あの、皆さん、そのおじいさんのこと知りませんか?」

「ああ、そりゃあたぶん『回収班』のやつだろうねえ」

「回収班……?」

「黒い空飛ぶボールを連れてたんだろう? だったら発電所のやつだよ」

 

 男たちの言葉を、透子は頭の中で整理した。

 発電所のやつ……ということあのおじいさんはそこの職員かなにかなのだろうか。

 どっちかというとあの姿は兵士に見えたが。銃も持っていたし。この駅にそれらしい人たちが入っていったところを見ると、ここがその発電所、なのだろうか。

 

 少し離れたところにいた眼帯男がいきなり近づいて、透子に手を伸ばしてくる。


「えっ、いきなり何……!」


 驚きながら、透子はとっさに避けようとする。けれど、その動きがあまりにもすばやかったので躱しきれなかった。

 透子はなぜかずっと、今朝のウエディングドレスのままである。そのむきだしの肩に、無骨な男の手が触れ……たかと思うと、するっとそれは透子の後ろまですり抜けていった。


「えっ?」

「やっぱか。肌は触れねえんだな。とすると、そいつはどうやって……」


 ぶつぶつとつぶやきながら、男はなにやら考え込んでいる。


「お、おい、妙なことはやめろ」

「そうだ、ここには監視カメラもついてるんだぞ? 夢見る人や、明晰夢の天使に触れようとするなんて。なにかあったら……」


 他の男たちが、次々と眼帯男に注意しはじめる。だが、当の本人はまったく悪いとは思っていないようだった。

 セクハラめいたことをされて、透子は一気に頭に血がのぼる。


「なにを……! もういいです! さよなら……!」


 これ以上ここにいないほうがいい。 

 そう思って後ずさるが、その前にまた男が手を伸ばしてきた。


「え?」

「待て」


 今度は胸だった。

 またあまりの速さに、透子は近づいてくる手をただただ見つめていることしかできない。手がまさに服に触れようとしたその瞬間、横から伸びてきた別の手がそれを阻んだ。


「えっ……?」


 そこには、今朝の夢で見たおじいさんが、血まみれの姿で立っていた。

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