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長い長い夜

作者: 琥狐 燐

長い長い夜が明ければあいつは帰る、正確には消えるのか…?まぁ、どっちでも一緒か、俺も同じようなものだしな。ただ、いつも置いていかれる…



ー 第一夜

あいつはいつもの時間、いつもの場所に居る、正確にはその時間帯にしかいない。それは俺も同じ…俺はいつもと同じようにその場所に居るあいつに話しかける「おはよう」人間からすればこの時間帯は〝夜〟と呼ばれる時だ、だが俺たちはこの時間帯は朝みたいなものだった。

俺が「おはよう」と言えばあいつは同じように「おはよう」と言ってくる。そして、いつもと変わらない〝朝〟を迎える。



ー 第二夜

〝いつもの場所〟で腰掛けて話すこともなければ特にやることもない。ただ、その場所に腰掛けているだけ。たまに言葉を交わすだけ〝朝〟が深くなるにつれてあっちこっちからどんちゃん騒ぎが始まるそれを〝いつもの場所〟で俺とあいつは眺めている



ー 第三夜

〝いつもの場所〟で、2人で腰掛けていれば稀にどんちゃん騒ぎをしてるのが流れてこっちに来たりする。そんな時は向こうが「今日はいい天気ですな」なんて言ってきたりする俺とあいつは適当に返事をする。いつもと変わらない…何も…


……



ー 第四夜

「今日は、いつも以上に騒がしい」あいつがぼそっと呟いた、俺はそれを聞かない振りをした、確かに今日はいつも以上に騒がしい、逆にそれがかえって寂しいな…と思ってしまう。あのどんちゃん騒ぎは自分の気持ちが沈んでしまわないように、消えてしまう自分たちの存在が意味の無いものではない、そう言っているみたいだった…あいつにはそう見えていないかもしれない。けど、俺はそう思った。こう思うことだって何も変わらない、いつもと同じ…



ー 第五夜

……「いつもと同じっていうのは相変わらず寂しいよな…」「…ん?…嗚呼そうだな…寂しい。」「それに、変わらないっていうのはこうもつまらないものだなんてな…」

変わらない…〝いつもの場所〟〝いつもの時間〟〝いつもの風景〟何一つ変わらないっていうのはとてつもなくつまらなくて、寂しい、何処かへ沈んでしまいそうな気持ちになる。俺はそれがとてつもなく苦手だった…


『嗚呼…又…変わらない…何も変わらない…又…繰り返す…』



ー 朝日

『朝の陽の光が覗いたなら其れは…』

あいつがいなくなる。どんちゃん騒ぎも聞こえない…嗚呼寂しいな…

「又…置いていかれた…」俺はぼそっと呟いた



『〝夜〟はいつも繰り返す…同じ事を繰り返して、繰り返して…其れが〝夢〟なのか〝幻〟なのか…〝現実〟なのかも分からない程繰り返して…』



俺は、静かになった〝いつもの場所〟を見回した、そこには朝の陽の光がすぐそこまで来ていた。

「嗚呼…やっぱりいつもと変わらないのは、とてもつまらなくて、寂しくて…」

自分の存在は意味が無い…そう思い知らされる



『繰り返すうちに何も無くなって、自分の存在さえも分からなくなって、朝の陽の光の中に消えていく…』














『其れが…とても…』



END


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