表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/25

episode 5

「実花、その名前はどこから聞いてきたの?」

長い沈黙の後、聡から囁くように問いかけられた。

「今日、駅で。多分私を待ってたんだと思う。」

聡がはっと顔を上げ、私を見た。

「本人がか!」

「うん。」

聡は頭を抱えた。

「なんて言ってた。」

うつむいたままそう聞くので

「私は、それよりあなたから話が聞きたい。

 何がどうなっているのか説明して欲しい。」

私が話した後聞いても、それは取り繕った言い訳にしか聞こえないもの。


聡は深呼吸して話し始めた。

「相沢君は、同じ仕事場の人だ。

 前の彼氏との話を相談に乗ってたんだけれど

 いつの間にか彼氏と別れてしまってた。

 半年くらい前から、飲み会になると

 近くに寄ってきてて、メールも頻繁になって

 露骨なアプローチもあった、でもな

 俺も、お前と巧が大事だし、うまくはぐらかして

 来たつもりだったんだけれど。」

けど????

「けど、なに?」

「先月の飲み会で、俺ちょっと飲みすぎて、

 目が覚めたら彼女の部屋にいたんだよ。」

今度は思わず私が頭を抱えた。

「俺は、あれだけ酔ってたら何かあったとは思えない。

 でも、彼女は・・・」

そのまま聡は下を向いて黙った。

「やっちゃったって言うのね?」

「そう言うことだ。あくまで、俺は絶対ないと思う。」


そのまましばらく沈黙が続いた。

私も小娘じゃない。泥酔したら確かにそうだろう。

でも彼女が一方的に嘘をついてるって証拠はないのだ。


「相沢君はそこから、急に積極的になったって言うか。」

急になんだか、笑い出したくなった。

こんな事が私の身に起こるんだ。

起っちゃうんだ。嘘みたい。

夢ならいいのに。起きて笑い飛ばして。

こんな夢見たのよ聡って、笑いあえる。


「俺は、お前と巧との生活を壊そうなんて

 これっぽっちも思ってない。

 そこは・・・信じて欲しい。

 昨日、確かにメールが来て

 明日、つまり今日あって欲しいって

 でも、俺は、実花が仕事で子供と約束があるって

 そう返事して、一緒に子供と遊んでもいいかとか

 返事が来たけれど、きっぱり断ったんだ。」


「・・・だから私を待ち伏せしたのかもね。」

独り言のように呟いた。

聡はなんにも言わなかった。


コーヒーはすっかり冷めてしまった。

ちょっと冷静にならないと。

聡のカップと私のカップを持った。

「レンジで温めなおそうか、コーヒー。」


現実を見るのが辛い。

なかった事にしたい。

それだけがぐるぐる頭を回っていた。


いつの間にか2時間も経ってた。

電子レンジの中の2つのカップをぼんやり見詰めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ