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episode 17

いくつになっても恋愛上手になるわけでもない。

いろんな事にどうしていいのかわかんないのは

いくつになっても同じこと。

月曜日の出勤にはもうどうにでもなれって気分になってた

あんまり細かいこと考えるの得意じゃないのよね。


単身赴任中の聡からはこの週末は連絡がなかった。

携帯のボタンを押せば繋がるはずなのに、

繋げようともしなかった。

それはお互いにそうなんだろうけれど。

離れれば離れるほど、どうしていいのか分からなくなってきた。

素直に手を差し出す事も出来なくなってきた。

日曜日の夜に、メールの作成画面を何度も開いたけれど

打ちかけのメールはすべて削除した。

深いため息と、重い心だけが残った。

でも、その寂しさを店長に押し付けちゃ絶対だめなんだ。


絶対だめなんだから、そう自分に言い聞かせた。


月曜日の出勤は気が重かったけれど

ここで気にしたら、店長とのせっかく築いた友情までがダメになる。

バックルームに入る時、背筋を伸ばした。

ドアを開け

「おはようございまーす。」

そう、いつものように、いつものように入った。

今日のシフトの相手が出勤していた。

「実花さん、おはようございます。」

「おはよう、今日は朝は2人かな?」

周りをちらりと見ても他に人はいない。

「そうみたいです。」

なんだか気が抜けた、最初が肝心と思ってたのに。

気合が空回りしてしまった。


月曜日のショッピングモールは、客も少なめ

店内の服のたたみ直しをしていたら

店内のクリスマスのディスプレイがちょっと壊れているのに気付いた。

子供服店だし、お客の子供さんが壊すのは想定内のこと。

ちょっとゆがんだ飾りとトップスターのバランスを

じっくり見ながら直していく。

この際だからと店内の飾りも見てみると

端の方がいじられたりしている。

ちょっと後ろに下がって全体を見ようとすると

誰かにぶつかった。

「すみません。」

そう言って慌てて振り返ると。

「ダメですよ実花さん、ちゃんと確認してから下がって下さいよ。」

店長が立っていた。

いきなり

だからつい、いつも通りに、すっと言葉がでた。

「すみません、どこかケガしたなら救急車手配しますけど。」

ちょっと嫌みっぽく言うと、いつものように店長は笑う。


このまま何もなかった事にしちゃおう。

それが一番いいと思うんだけれど。

お客さんが入ってきて、私は店長のそばを離れた。


午後のシフトに、飲み会でつぶれた社員のアイちゃんが入ってきた。

「おはようございます~、実花さんこの間はすみませんでした。」

そう言いながらペコペコ頭を下げるアイちゃんに

「なかなか可愛い寝顔だったよ。」

わざとそう言って返した。

「も~恥ずかしいなあ、私寝てる間、店長とずっと飲んでたんでしょ?

 全然わかんなかった、爆睡ですよね私。」

アイちゃんはそう言いながら顔を隠す。

「せっかくの社内の独身男性の前で、私よだれとか垂らしてませんでしたか?

 ああ、恥ずかしいなあ。なんか言ってませんでしたか?店長。」

ずきっと心に何か刺さった。


そうなんだよね、こういう独身の若い子との

未来が店長にはあるんだからさ。


アイちゃんの肩に手を回して囁いた

「寝顔可愛いって言ってたよ。」

二人でそう話してたんだから嘘じゃないもん。


仕事を終えてスーパーに立ち寄った。

今日の晩御飯はなににしよう。

巧の好きなハンバーグにしようかな?

聡もハンバーグ好きなんだよね。

時々、ちゃんとご飯食べてるのかとか、掃除はしているのかとか

気になるけれど、聡は大学時代も一人暮らしをしていたし

きっと上手くやっているとは思うけれど。

ちゃんとやってる?とか、病気していない?とか

ただ、ちょっと電話して聞けばいいのに。

それも、なんだか気が重くて出来ないなんて、

私たちは本当にもうダメなのかも。


でも、私たちもうダメだよね、なんて確認するのも怖くて出来ない。

なんだかんんだ言いながら、聡と別れたくない自分に気づいているから。


気付いているのに何もできない。

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