episode 16
午前2時を回ろうとした頃、社員の女の子が目を覚ました。
「あれ?私もしかして寝てましたか?」
店長と2人で大笑いすると、目覚めたばかりの彼女は、
「みんなどこ行ったんですかね?」
と寝ぼけている。のんきなものだと店長と大笑いした。
「え?もうこんな時間ですか???」
帰らなきゃ、と慌てているので、
私たちは会計して店を出た。
社員の子をタクシーに乗せ、次のタクシーを待った。
週末と忘年会とで込み合っているらしく
20分くらい待って欲しいと言われていた。
車の流れも少なく、店の脇の街灯の下で
店長とタクシーを待った。
「あー今日は良く飲んだねぇ店長。
明日の朝、起きられるの?私休みだから関係ないし。」
人通りは少なくはなっているけれど
街灯や店のネオンで町は明るいなあとぼんやり思う。
家の中にいたら、つい子供と寝てしまって
こんなの見る事はないんだよね。
まだまだ起きていたい気持ちもあるけれど、店長は仕事だし、
そうわざと意地悪く言うと、店長は頭を傾げて
「俺、明日は、早出なんだよね。心配。」
そう言って店長はため息をついた。
わざとらしく大笑いしたら、足下がふらついた
「あっ・・・痛い~~~~~。」
転んで尻もちをついてしまった。
酔っているとはいえ、恥ずかしい。
店長は笑いながらも、手を差し出してくれた。
「実花さん、飲みすぎだし。ほら。」
差し出された右手に、反射的に手を出したのは
きっと酔っているからだ。
ぐっと手を引かれて立ち上がらせてくれた。
「ありがと・・・」
う、を言う前に、店長に抱きしめられた。
えっと、これはどうしたらよいのかしら。
回らない頭で考えてたが何も浮かばない。
「ごめん、実花さん。今だけ抱きしめさせて。」
その言葉に、どうしようと思った。
考えられない頭の中で、何もかもが飛んで
私たちは、抱き合っていた。
翌朝、巧が家に帰ってきた音で目覚めた。
とんでもなく頭が痛かった。
「ママ、寝てていいよ。朝ごはん食べたから。
美穂おばちゃんがね、ママは絶対二日酔いだって言ってたよ。」
美穂め・・・、そう思いながらも、
その巧の言葉に甘えて、布団にくるまった。
あのまま、タクシーが来るのがもう少し遅かったら
私たちはどうなってただろう。
タクシーの来た気配に我に返って、
言葉もそこそこに家に帰った。
私ってば、最低。
流されかねなかった。
ただ、自分自身で気付かないほどに
誰かに慰めて欲しかったんだなとは気付いた。
こんな事で気付くなんて、大人失格かもね。
しかし、どうしたものだろう。明日から。
答えは見つからない。
今日の夜は、今度は美穂の家の子供が泊りに来るので
昼過ぎに買い物に出た。
晩御飯の買い物をして、家に帰ると
メールが入ってたのに気づいた
携帯を開いたら、店長からだった。
俺は本気でした。
後悔してません、でも、
実花さんは忘れてくれても構いません。
切ない心に風が吹いてた。