非日常
「ちょっと!大丈夫ですか!」
店員に揺さぶられて起きた、気絶していたようだ。
喉が痛い、足も痛い。
「申し訳ないです...」
枯れた声で謝りながらその場を離れた。
掲示板を見に行く、ん?
「ヴェルズニルス市周辺にゲドナ族の出没が確認されている為、周辺の警備を強化している。」
ゲドナ族ってこの間トーラ達が四賢者の一人を倒したあの集団か。
「人とほとんど同じ姿をしている為、潜入されている可能性がある。」
え、何それは。
「警備隊の検査の負担を軽減する為、不要な外出は控えるように。
一匹のゲドナ族を捕縛し、研究を重ねた結果、
現時点で判明しているゲドナ族の見分け方は暗所で光る目です。」
...。
帰ろう。
顔に大量の冷や汗をかいている、洗面所で顔を洗う。
震えた手で恐る恐る電気を消す。
わざわざ見ようとしなければ見えないこの目が、非日常を突き付ける様に見せてくる。
かつてトーラが褒めてくれたんだ。
「暗闇でも、君が居たら怖くないね。」
そう言ってくれたのに、とても申し訳なくなった。
涙が溢れ出す、運命はどこまでも残酷だな。
でも泣いている場合じゃないんだ、ここに居てはいけない。
荷物をまとめる、もう二度と戻って来られないだろう。
門の近くに住んでいたから、警備交代の時間は分かっている。
そのタイミングでこの場所から出よう。
コンコンコン。
玄関の扉をノックする音が聞こえた、顔が青ざめた。
家を巡回するなんて聞いてないぞ。
あぁどうすれば良い、窓からこっそり出ても状況は悪化するだけだ。
過呼吸になる、身体が重い。
コンコンコン。
「私だよ!私!」
ハッとして走って扉を開けた。
そこにはこの間の夜と同じ様にフードを被ったトーラが居た。
「お、荷物まとめてあるね!じゃあ私に着いてきて!」
トーラが記事を見て気付いてくれたのだろうか。
わざわざ帰ってきてくれたのか、もっと申し訳なくなった。
トーラは俺の知らない下水路を通って外に連れ出そうとしてくれている。
聞きたい事はたくさんある、トーラは何も話さずただひたすらに手を引いてくれた。
どこへ行くのだろうか、でもトーラと居るならどこへだって良いと思えた。
外に出てすぐ近くの洞窟に入り、魔法で灯りを確保した後に初めてトーラが口を開いた。
「君が私を騙したりなんてしない事、分かってるよ。ただ、整理しようよ。今までの事、これからの事。」




