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いつかの先に逢えるまで ~神子様との同居は期間限定?もう会えなくなるなんてイヤなんですけど!?【完結済(全104話)】  作者: 静林


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思い出作り 7

          *          *          *


 葛西臨海公園に出掛けた次の日曜日、思いがけず碧衣たちに飛行機に乗る機会が訪れた。

 ERABLE HOTEL で碧衣たちが弾くグランドピアノの弦の調子が良くない、と天宮が言い出し、碧衣も同じ感想を伝えたために急遽、専門業者を呼んで整備、点検、調律をすることになったのだ。

 そのため、月曜日の仕事が休みになり、意図せず3日間フリーになった。

 3日もあるので、どこに行こうかとネットで調べていたら、天宮が「沖縄でピアノ弾きのバイトがあるけど」と声をかけてくれた。「交通費込み、仕事はリゾートホテルで宿泊費も食事も込み」という垂涎の条件に即飛びついたのは言うまでもない。


(早朝の便で沖縄、那覇に飛びますよ)


 急に決まった旅行なので、荷造りを直ぐに始めた。

 ホテルの中庭にある屋外プールも3月中旬から利用可能だと公式ホームページで案内されている。是非とも泳ぎたいので水着も用意した。2泊分の着替えとバイトで着るドレス、数冊の楽譜もスーツケースに詰めて、取り敢えず準備完了。


 飛行機からの眺めがいかに素晴らしいかを覡から聞いているので、2時間半のフライトが楽しみで仕方がない様子の巫。


(センゲツの神子様は、下界に降りてきたときに地上の景色を見ることはできなかったのですか?)


 繊月の番が「天界から下界に降りる」と表現するので、感覚的に遥か上空から降りてくると想像していたのだが、宇宙空間にそのような場所が存在するはずもなく、よくよく考えると「天界は何処に?」という疑問に行き着く。


『天界は下界とは異次元の空間にあるのです。「下界に降りる」とは文字通り、上から降りてくるのでそう言いますが、ある地点からこの世界に入ります。それがどの辺りかはワタシたちにも分かりません。なにしろ猛スピードで、しかも1直線に下降するので…』

(そうなのですね)


 繊月の巫の話を理解することは難しいが、異次元とはいえ天界が確かに存在するのは神秘的だと思った。

 そんな神秘的な空間に一瞬でも行ったのだと考えると、その時の記憶が全くないのがちょっぴり残念に思えた。


 持ち物を確認してから、直紀に「沖縄でピアノを弾くお仕事をしてきます」とガッツポーズのスタンプと共にメッセージを送る。


   ”気をつけて。そして楽しんできて。”



 当日は朝から快晴で予定通りの時刻に羽田空港を離陸した。

 眼下に広がる都心の景色が暫くすると海しか見えなくなった。たまに現れる雲が機体の下を流れて行く。どこまでも続く青い空と陸地のない濃い青の海。

 先日見た東京湾がほんの1部だと理解するのに十分な光景である。

 繊月の巫のために碧衣はどこまでも変わらない青一色の風景を見続けた。


『海の青は美しい色ですね。この広い海にあの魚たちが住んでいるのですよね』

(はい。沖縄に着いたらホテルから歩けるところに、有名な水族館があるので行こうと思っています。この前見たのとは違った魚もいるみたいですから楽しみにしていてください)


 やがて遠くに沖縄本島が見えてきた。一気に高度を下げ、轟音と衝撃と共に着陸したのだった。


 天宮から紹介されたホテルにはシャトルバスでの移動となる。

 3月の東京はまだ肌寒い気候だが、那覇は半袖でも汗ばむ気温である。1日目のバイトはディナータイムなので、ホテルに着いたらプールで泳ごうと決めていた。

 約2時間、バスの車窓から沖縄の景色を眺めてホテルに到着。

 長期滞在型のリゾートホテルらしく、室内には調理可能なシステムキッチンや食器に調理家電、乾燥機付き洗濯機まで完備されている。バルコニーに面した窓は全面ガラスでオーシャンビューだ。

 旅費支給の上、バイト代金まで貰ってこの待遇、今回の仕事を紹介してくれた天宮に心から感謝した。

 荷物の整理をしたら海をバックにスマホで撮影し、早速直紀に送信。


   ”沖縄に着きました。ホテルから見えるロイヤルブルーの海が美しいです。お仕事は夜なので、プールで泳いでから美ら海水族館に行ってきます。”


 水族館ではジンベエザメやマンタが泳ぐ大水槽やイルカショーを繊月の巫と楽しんで、数枚の写真を追加で直紀に送った。



(如月さんたち、楽しそうだな)


 まだ寒さが残る東京で直紀は繊月の覡と一緒に、送られてきた写真を見た。

 水族館の入り口のジンベエザメのモニュメント前で、またはカフェでジェラートを頬張りながら、そして「瀬底大橋をバックに」と一言添えて、それぞれ可愛い笑顔で自撮りしている。


ーこの笑顔のまま幸せな人生を送って欲しい。


 直紀は碧衣に対して、かつて環に抱いていた気持ちと同種類の想いを持っていることを認め、もうこの気持ちを否定することはできないと自覚した。


ー好きだ。


 気持ちを伝えたところで・・・両想いになったところでどうなる?と自問しながら、改めて写真の碧衣に目を細めたのだった。

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